【子どもの自立心を育む】入学までにしておきたいこと、気をつけたいポイント

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小学校の入学準備というと、持ち物などの準備に意識が向きがちですが、学校生活のための準備はできていますか? 小学校では、保育園や幼稚園と違い、子どもが自分のことは自分でやらなくてはならない場面がたくさんあります。そこで、今からでも間に合う「小学校入学までに自立心を育む方法」を、元小学校教師で、現在は白梅大学子ども学部子ども学科教授の増田修治先生にうかがいました。

目次

小学校入学前に、気をつけたいポイントは?

小学校入学前には、生活習慣を小学校生活に合わせたものにしておくといいですね。保育園や幼稚園とは異なり、小学校では時間割に合わせた行動をする必要があり、生活リズムがとてもタイトになりますので、次の3つのポイントをチェックしてみてください。

①椅子に座って話を聞けるようにしよう

小学校では座学がメインになりますので、椅子に座り、先生の話を聞けることが大切です。座学は、保育園や幼稚園ではあまり体験しないことですので、おうちで少しずつ練習してみてください。15~20分程度でかまいませんので、絵本の読み聞かせを聞いたり、お絵かきなどをしたりしながら、「座って人の話を聞く」ための練習をしてみましょう。

②靴下をはく生活になじもう

「はだし保育(教育)」を行っている保育園や幼稚園で過ごしたお子さんは、小学校で靴下や上履きをはき続けることに抵抗を感じやすいものです。靴下は足先をあたため、ケガを防ぐ役割もあります。入学前には、おうちで靴下をはいて過ごす時間を増やすようにしましょう。

③「トイレに行きたい」と言う練習を

保育園・幼稚園では、トイレはお子さんが行きたいときに行けるものですが、小学校では休み時間に済ませておくのが基本です。それでも、授業中にトイレに行きたくなってしまうことがあるでしょう。そんなときは、勝手に教室を出ていったり、がまんしたりせずに、「先生、トイレに行きたいです」と申し出ができれば、先生も許可してくれます。

トイレだけでなく、勉強のわからない部分や、自力ではできないことへの手助けを得るには、「わたしは○○がわかりません」「××をしてほしいです」と、先生に言葉で明確に伝える必要があります。言葉で伝えられないと、わからないことをほったらかしにしたり、したいことをがまんしてしまったりすることもありますので、お子さんが自分から「○○がしたい!」「××してほしい!」と言う練習をしておきましょう。

保護者が手助けしながら「自立」を促す

小学校に入学したからといって、お子さんがいきなり自立したり、すべてをできるようになったりするわけではありません。最初のうちは保護者が手助けしながら、一人でできることを増やしていきましょう。

保護者はどうやって手助けをすればいいの?

【一人でできる!】を育むステップアップ

①保護者が子どもといっしょに行う。

②保護者が見守りながら、子どもにやらせる。

③子どもに一人でやらせて、やったものを保護者が点検する。

④子どもにすべて任せる。

時間割に合わせた持ち物の準備や給食袋の準備など、それぞれをお子さんが自分一人でできるようになるには、このようなステップを踏む必要があります。①から④へと、保護者の手伝いを徐々に減らしていくイメージです。お子さんが一人でできるようになったら、保護者は手を出さず、点検したり、見守ったりする程度にとどめましょう。

半年は手伝うものと考えて

このステップを進めていくうえで大切なのは、焦らないことです。③まで進むには、最低でも半年はかかると考え、ゆっくりと進めましょう。また、夏休みに入ると、準備のしかたを忘れてしまう子が多いので、夏休み明けにはまた①から始めてみましょう。

保護者の手助けで注意したいことは?

最初は保護者主体で

最初から、すべてができるお子さんはいません。自立とは、保護者への依存をすべてなくすことではなく、依存の割合が徐々に減っていくことです。最初は保護者が8、お子さんが2ぐらいの割合で始め、だんだんとお子さんが担う割合を増やすようにしてみましょう。

細かい部分のアドバイスを忘れずに

さまざまな準備の方法についても、最初は一から教えましょう。細かい部分へのアドバイスも欠かさないことで、お子さんは手順をスムーズに覚えることができます。とくに時間割の準備や、プリントのしまい方などは、以下の方法で細かく教えてあげてください。

【翌日の時間割の準備】

①一度ランドセルを空にする。

②教科書とノート、ワーク類を教科ごとにまとめる。

③時間割を見ながら、まとめたものをランドセルに入れる。ランドセルを背負ったときに安定するように、大きく重いものを背中側に入れるようにする。

【プリントをファイルにしまう】

①プリントの角を合わせ、二つ折りにする練習を行う。折り紙を使って練習してもOK。

②折って輪になったほうから、ファイルに入れるように教える。「こうすると、プリントがくしゃくしゃにならないよ」などと言葉かけする。

「きれい」を体感させよう

学校の机の引き出しやランドセルの中が、プリントや紙くずでグチャグチャ…。そんなお子さんは少なくありません。これは「片づいている状況は、とても気持ちがいいもの」という感覚を身につけていないことが、原因のひとつといえます。そこで、おうちでも片づけを1週間に1回程度行い、「きれいになる=心地よい」ことを、お子さんに体感させてあげてください。

自立心を育む言葉かけの方法は?

相手は子どもであったとしても、一人の人間です。「親だから」「年上だから」という気持ちで上から目線で話すのではなく、「一人の人間同士」として対等な目線で話すことが、言葉かけにおける基本といえます。

「ほめる」より「認める」

「えらいね」「すごいね」と、お子さんをほめることは大切ですが、ほめてばかりいると、ほめられるかどうかが価値や行動の基準になり、「ほめられないとやらない子」「ほめられることしかしない子」になってしまう可能性もあります。そこで、「ほめる」よりも、「認める」ことを大切にしましょう。

たとえば、自分からお手伝いをしてくれたお子さんには「ありがとう」と感謝を伝えたうえで、「どうして手伝ってくれたの?」と訊ねてみましょう。すると、「お母さんが疲れていると思ったから」などと答えてくれるはずです。その気持ちや、そこから行動を起こしたことが、お子さんにとっては価値があるものです。「そういうことに気づいてくれたんだ! うれしいなぁ」と、行動の価値を認める言葉かけをすれば、お子さんが自分から行動することを促し、自立心を育むきっかけにもなります。

他者と比較せず「変化」をほめる

ほめるときには、決してほかの子とは比較せず、お子さんが以前よりもどのように変わったかをほめるようにしましょう。もし、お子さんがなわとびを跳べるようになったら、「ほかの子は二重跳びもできるのに…」とは思わず、「この前は跳べなかったのに、すごいね!」と、お子さん自身の過去の状態・状況と比較してほめるようにします。その子の成長を心から喜ぶことが、子どもにとっての大きな励みになります。

注意するときは「デメリット」の説明を

お子さんに注意するとき、頭ごなしに「○○はダメ!」と言っても、お子さんの心には残りにくいものです。そこで、「それをすることで、どんなデメリットがあるのか」を伝えるようにしましょう。

【例】忘れ物について注意をするとき

×「忘れ物をしないで!」

○「忘れ物をしたら、ほかの人に借りなくちゃならないよね。そうすると自分の勉強の時間が少なくなって、わからないことが増えてしまうかもしれないよね」

上の例にあるように、「忘れ物はしないで!」と注意しても、ただ怒られているように感じ、子どもには「怖い」「つらい」という記憶しか残りません。しかし、忘れ物が引き起こすデメリットを説明すれば、「忘れ物をすると面倒だから、ちゃんと準備しよう」と、自主的に思えるようになるはずです。

宿題は前もって「約束」を

「宿題はやったの?」と言われると、「今やろうと思ったのに!」「勝手に都合を押しつけられている!」と反発心を抱くお子さんが多いものです。そこでおすすめなのは、あらかじめ宿題のやり方について、お子さんと約束することです。

「きょうは宿題を何時までに終わらせる?」「習い事の日は、宿題は何時にやろうか?」とお子さんと話し合って約束しておけば、お子さんも「きょうは○時までに宿題をする日だ!」と自主的に宿題をしやすくなります。また、お子さんが約束を守らずに宿題をしていない場合にも、「決めたことは守ろうよ」と、的確に注意することができます。

子どもの自立心を傷つける! 5つのNGワード

①「なんでそんなことのもできないの?」

②「もう1年生でしょう?」

③「何回言ったらわかるの!」

④「あなたのだらしないのは、だれに似たのかしら?」

⑤子どもに注意しながら、「フー」と深いため息をつく。

これらのNGワードを、「ついつい口にしてしまう…」という保護者さんも少なくないでしょう。もし、うっかりお子さんに言ってしまったときには、素直に「言いすぎちゃった。ごめんね」などと謝りましょう。そんな保護者の姿を見て、お子さんも謝ることの大切さを学べるはずです。

まとめ

小学校入学は、親子ともども、生活が一変するような転換点です。だからといって、「1年生になったら、なんでも自分でやるのよ」「1年生になったら自立してね」などと言ってしまうと、お子さんにとってはプレッシャーとなり、入学が楽しみではなくなってしまうこともあるのです。小学校入学は、いろんなことができるようになるきっかけのひとつ。「小学校に入ったら、できることがたくさん増えるよ」と、入学が楽しみになるような言葉かけをして、お子さんの自立心を育むきっかけにしてください。

この記事の監修・執筆者

白梅学園大学子ども学部子ども学科 教授 増田 修治

小学校教諭、埼玉大学非常勤講師を経て、現在白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。2001年「児童詩教育賞」受賞。 こどもたちに「ユーモア詩」を書かせるなど、子育てに関 しての講演、著書多数。NHK「にんげん ドキュメント」、テレビ朝日「徹子の部屋」にも出演。保育園・小学校等で研修講師多数。

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