【医師監修】こんな症状が見られたら要注意! 子どものストレスサイン

更新日: 公開日:

【医師監修】こんな症状が見られたら要注意! 子どものストレスサイン

人によって受け止め方の異なる「ストレス」。
大人だけでなく、子どももいろいろなストレスから、睡眠の問題や食欲不振、さまざまな痛み、微熱などの身体の症状が現れることがあります。
また、遊びなど行動の変化や、イライラするなど心理的なサインが出ることも。

今回は、子どもによく見られるストレスサインと家庭での対応を、医学博士、小児科専門医であり、公認心理師・臨床発達心理士でもある、中井昭夫先生にお伺いしました。


お話/中井昭夫(武庫川女子大学 教育研究所/大学院 臨床教育学研究科/子ども発達科学研究センター・教授)

目次

1 ストレスサインは子どもからのSOS

ストレスサインは心身のSOS

ごく軽度のよいストレス(快ストレス:eustress)であれば、判断力・行動力や免疫を高めるため、生きていくうえで必要なのですが、悪いストレス(不快なストレス:distress)は、こころと身体に悪い影響を及ぼします。

大人ですと、自分なりのストレスの発散方法や対処方法を知っていたり、自分の状態を言語化して他の人に相談したりするなどの対応が可能な場合もありますが、そんな大人でもストレスにより、さまざまな心身の不調をきたすことは、決してまれではありません。

まして、自分に起こっていることを正しく認識したり、自分の気持ちを言語化したりする能力が発達の途中にある子どもたちは、意識しないうちにストレスを身体やこころが感じ取り、さまざまな「ストレスサイン」を示します。これらの「ストレスサイン」は、子どもたちから周りの大人たちへの「SOS」のサインなのです。

子どもの「ストレスサイン」は、睡眠、食欲、身体、行動、感情の5つの面に出てくることが多いです。

「SOSのサイン」を、5つのカテゴリーに分けてご紹介します。

睡眠にかかわるサイン

  • 寝つけない(入眠困難)
  • 途中で目が覚める(中途覚醒)
  • 早く起きてしまう(早朝覚醒)
  • 朝起きられない、寝過ぎる(覚醒困難、過眠)
  • 怖い夢を見る

食欲にかかわるサイン

  • 食欲がない(とくに朝食)
  • 食べ過ぎる(とくに甘いものや炭水化物)
  • 吐き気
  • 体重が増えない・減った
  • 体重が急激に増えた・太った

身体にかかわるサイン

  • 痛みを訴える(頭・おなかなど)
  • おなかの調子が悪い(便秘・下痢、またはこれらが交互に繰り返す)
  • おねしょ(夜尿)がぶり返す
  • 昼間のおもらし(遺尿・遺糞)、トイレが近い(頻尿)
  • めまい
  • だるそう、元気がない
  • 爪噛みをするようになった
  • チックが出る、悪化する
  • 姿勢が保てない、すぐ横になる、表情に力がない
  • アレルギー症状の悪化(アトピー性皮膚炎の悪化、喘息発作の頻度が増えるなど)
  • 風邪を引きやすい、微熱が続く

行動にかかわるサイン

  • 甘えてくる、すり寄ってくる、赤ちゃん返り
  • おしゃべりになる
  • 口数が減る
  • 同年齢の友だちを避けて、小さい子・大きい子と遊ぶ、大人といたがる
  • 一人でいることを怖がる
  • 一人で過ごすようになる
  • お絵かきのモチーフや、色づかいが変わる(陰鬱なモチーフをかく、暗い色づかいをする、など)
  • 好きなおもちゃで遊ばなくなる、好きな遊びをしなくなる
  • ストレスに関係するような遊びを繰り返す
  • 朝は元気がなく、夕方から元気になる

感情にかかわるサイン

  • イライラする
  • 怒りっぽい
  • 当たり散らす
  • 落ち着きがない
  • 焦った感じ
  • 忘れっぽい
  • すぐに泣く
  • 感情の起伏が激しい
  • ぼんやりしている

不思議な気がする方も多いと思いますが、食欲が出過ぎたり・なくなったり、眠れなくなったり・逆に寝過ぎたり、また、怒りっぽくなったり・すぐ泣いたりするなど、両極端の症状が出ることがあるのも「ストレスサイン」の特徴なのです。

周囲の大人は、これら子どもの「SOSのサイン」をいち早く見つけて、適切に対応することが大切です。

子どもの些細な変化は、お子さんの一番身近にいる保護者だからこそ気がつけることが多いです。

あるいは、保育士さんや幼稚園・こども園などの先生から、園での様子や変化を聞き、気がつくこともあるでしょう。

2 ストレスの原因となる出来事(ストレッサー)を知る

ストレッサーって何?

ストレスの原因となる刺激や出来事を「ストレッサー」といいます。

ストレッサーには、次のようなものがあります。

  • 入園・入学
  • 月曜日、長期休暇や連休明け、新年度・新学期の開始
  • 転園・転校、引っ越し
  • 習い事
  • 友だちとの関係
  • きょうだいの誕生
  • 自身の体調不良(病気やケガ、医療機関の受診や入院など)
  • 家族の体調不良や病気・ケガ
  • 家族の不仲(DVなど含む)
  • 親しい人の不幸・死別
  • 新しいペットとの暮らし、ペットとの死別
  • 地震・洪水などの天災
  • メディアで繰り返されるシーン(戦争、暴力、火災、天災など)

ストレッサーは、一度だけにもかかわらず非常に強いものから、小さくても長く続く慢性的なもの、あるいは、一つひとつは小さいけれど、複数のストレッサーが複雑に関係するなど、さまざまです。

また、大人ならとくにストレスと感じないような些細なことでも、幼い子どもには十分大きなストレッサーになることがあります。

そのような小さなストレッサーが長く慢性的に続く状態は見逃されやすく、いっそうの注意や想像力が必要です。

「いつもと様子が違う」「最近なんとなく変…」「今まではこんなことなかった」という、わずかな変化に気がつくことが、まず大切です。

ポイント

さらに、この数年は、新型コロナウィルス感染症により、感染への不安、マスクの着用、休園・休校、外出制限、濃厚接触者の隔離といったさまざまな行動制限や、リモートワークの増加による家族関係・家庭環境の変化などにより、大人だけでなく、子どもたちも日々ストレスを感じる機会が増えています。

3 ストレスを放置すると、子どもでもうつ病になることも

SOSのサインである「ストレスサイン」には、「幸せホルモン」とも呼ばれる、神経伝達物質である脳内のセロトニンが低下することで現れる症状が多く含まれています。

ポイント

セロトニンは気分の調整、意欲、学習、消化管など自律神経の調整、食欲、吐き気、睡眠、痛みなどに関係し、また抗重力筋に分布しており、表情や姿勢の制御も行います。
さらに、睡眠に重要なメラトニンというホルモンは、日中に合成された脳内のセロトニンを原材料に、松果体というところで合成されるなど、セロトニンが低下すると、心身に広く不調が起こってしまうのです。

大きく強いストレスは、子どもでも「急性ストレス障害」や「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」を引き起こすことがありますが、これらにもセロトニンが関係しており、また、セロトニン・ドパミン・ノルアドレナリンという神経伝達物質の減少やバランスの乱れが、うつ病の発症や病気の進行に関係していると考えられています。

つまり、慢性的なストレスによって、子どもでもうつ病を引き起こすことがあるのです。

日本では、子どもは元気で、大人と同じようなうつ病になるわけがないと、専門家の中でも長く思われてきましたが、欧米の調査では児童の0.5〜2.5%にうつ病があるとされ、日本での調査でも小学生の1.6%、中学生の4.6%と、欧米の調査と同じくらい、子どものうつ病があったと報告されています。

子どものうつ病は、痛みや睡眠を含めた身体の症状が前面に出やすかったり、イライラしたり乱暴な行動をとったりするのも特徴です。

4 子どものストレスに、家庭でできる対処法・予防法

子どものストレスサインに家庭で対応する

ストレス状態への適切な対応は、ストレスの予防にもつながります。

一番大切なことは、「いつもどおり」を確保する、すなわち、いつもの生活リズムを崩さず、ゆったり、好きなことをして過ごすことです。

日々安全に過ごすことによって、安心できる、安定した暮らしが確保され、それが続くことで、こころの安寧が得られることは、子どもだけでなく大人でも同じです。また、天災や紛争などにおけるこころのケアでも最も大切なこととされています。

お子さんのストレスサインに気がついたときだけでなく、予防の意味でも、日ごろから下記の2つのことを心がけるようにしましょう。

いつもどおりの生活を大切に、そして、セロトニンの分泌を促す

セロトニンが心身の安定に重要な役割を担っていることはお話ししました。

ストレスへの対応・予防には、規則正しい生活リズムを確保し、「いつもどおり」過ごすことが、一番大切です。

とくに脳内のセロトニンの分泌がもっとも高くなる幼児期においては、日々の暮らしが安定して繰り返されることが重要です。

セロトニンの分泌を促す具体的な行動としては

  • 朝、明るい光を浴びる、日中は明るいところで過ごす
  • 朝食に、セロトニンの材料となる必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンを多く含む食品(ヨーグルトなどの乳製品、大豆やナッツ類、時間がないときにはバナナだけでも)、脳のエネルギー源となるとともに、脳にトリプトファンを効率よく運ぶために、適度の炭水化物(ご飯やパンなど)を意識して摂る
  • 少し身体を動かす(散歩、三輪車・自転車、水泳など)

などです。

また、質のよい、十分な睡眠も重要です。

3節のポイントで紹介したように、質のよい睡眠に必要なメラトニンは、セロトニンから合成されますが、夜に光、特に液晶画面などのブルーライト成分の多い光を浴びるとメラトニンの分泌が低下してしまうのです。

なかなか難しいことではありますが、理想的には、まず就寝時間を決め、その2時間前までに、夕食、入浴、スマートフォンやタブレット、PCなどICTの使用を終了し、暖色系の間接照明をつけて、まったりと過ごせるとベストです。

休日も、できるだけ平日と同じ生活リズムを保ちましょう。

そのほかに、お家で、大切な家族と大好きな遊びをする、好きなものづくり(いわゆる工作や料理・お菓子作り、お花や野菜を育てるなど)などもオススメです。

スキンシップで精神的な安定を

スキンシップにより、オキシトシンというホルモンが分泌されます。

オキシトシンは、セロトニンとともに「幸せホルモン」とも、また「愛情ホルモン」とも呼ばれ、精神的な安定が得られることがわかっています。

ストレスサインとして、甘えてくる、すり寄ってくる、抱っこして欲しいなど、いわゆる赤ちゃん返りや、大人に話しかけてくる、また、夜なかなか寝つけない、いっしょに寝て欲しいなどと言うときは、余裕があればできるだけ付き合ってあげてほしいと思います。

スキンシップは、する側・される側の双方に効果があるため、ストレスサインへの対応としてだけでなく、普段から積極的に取り入れると心の安定につながります。

5 隠れた身体の病気を見逃さない! 「ストレスのせい」と決めつけず、早めの受診も選択肢に

受診のめやす

1節で紹介したようなストレスサインに当てはまる症状があり、ストレッサー(ストレスの原因となる出来事)に心当たりがある場合でも、「これはきっとストレスからくる症状だろう」と、決めつけてしまうのは要注意です。

身体の病気がたまたまストレッサーと重なった場合に、見逃されてしまうことがあるためです。

例えば、腹痛や下痢は胃腸炎かもしれませんし、夜尿や頻尿には、子どもの糖尿病や尿崩症などが隠れていることもあります。

イライラや乱暴さの原因が、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)だった、痛みや微熱が続いていたのは、実は悪性疾患や自己免疫疾患であった、頭痛や吐き気・嘔吐が続いていたのは、実は脳腫瘍だったという事例も、私たち小児科医は多く経験しています。

また、子どもの場合、体重が増えないというのは重大な症状である場合も。

このような症状が続くときには、早めに一度小児科を受診して、身体の病気ではないかを確認しておく必要があります。

また、動きだけでなく、声や言葉が出るなど、さまざまな形のチックが出現するような場合には、トゥレット障害も含め、早期に適切に介入していく必要があるため、神経発達障害や小児神経の専門医にご相談することをお勧めします。

そのほか、しばらく休養をとっても、睡眠の問題や、行動・感情の「ストレスサイン」や「SOSのサイン」などが回復しない場合は、一度、小児科や児童精神科などに相談するとよいでしょう。

6 中井先生からのメッセージ

子どもにストレスサインが見られると、ついつい周りの大人は気分転換させようと、遊びや外食、ときには旅行に連れ出したりしがちです。ただ、子どものエネルギーが落ちているときは、かえってこころも身体も疲れてしまいます。

ご紹介したとおり、「いつもどおりの生活」を続けることが、もっとも効果の高い対処方法です。

現代社会のなかでは、これが難しいことも理解していますが、子どもだけでなく、保護者自身のメンタルヘルスや身体の健康を保つためにも、とても大切なことです。

家族みんなで協力し合い、続けていけるとよいですね。

この記事の監修・執筆者

武庫川女子大学 教育研究所/大学院 臨床教育学研究科/子ども発達科学研究センター 教授 中井昭夫

医学博士、日本小児科学会専門医、公認心理師、臨床発達心理士、子どものこころ専門医・指導医、日本小児精神神経学会認定医、日本小児科医会「子どもの心相談医」。専門は発達行動小児科学、子どもの睡眠障害、小児精神神経学など。
1998年より2年間McGill大学モントリオール神経研究所ブレインイメージングセンターに留学。過敏性腸症候群、うつ病、強迫性障害、てんかんなどにおける脳内セロトニンの画像化に関する研究を行う。現在は、神経発達障害における協調運動や睡眠など身体性からのアプローチによる臨床、研究、教育を行っている。

 

 

 

こそだてまっぷ

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

こそだてまっぷ

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

関連記事