【専門家監修】家庭でできる子どもの語い力を伸ばす方法

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【専門家監修】家庭でできる子どもの語い力を伸ばす方法

近年、子どもの語い力が低下していることは知っていますか? これに伴い、小学校の授業についていけない、授業がつまらないから教室を脱出してしまう子が増えてきているのだそうです。語い力の低下は、これからの子どもの学びに大きな影響を及ぼすと、白梅学園大学子ども学部子ども学科教授の増田修治先生は警鐘を鳴らしていらっしゃいます。そこで、子どもの語い力を伸ばすにはどうしたらよいのかを教えていただきました。

目次

語い力は図形認知力と大きな関わりがある

語い力の低下にはいろいろな理由がありますが、その大きな要因のひとつとして図形認知力の低下が挙げられます。一見、文章力や語い力と図形認知力は関係がないように感じますが、実はとても関わりがあります。

語い力を伸ばすには、まずは文字がわからないといけません。ひらがながわかる=ひらがなの形がわかる→図形認知力が必要というわけです。

ひらがなが書けて初めて語い力につながるのです。大人だって、何かを覚えるときには書いて覚えますよね。文字がわからないのに、語いが増えるわけがないのです。

子どもの図形認知力は、ここ数年低下してきていることがわかってきました。原因はさまざまですが、ひとつには世の中のものが複雑になってきたことが挙げられると思います。電話や掃除機、時計など、身の回りのものがブラックボックス化してきていますよね。しくみがさっぱりわからない。複雑すぎて中身に興味がわかない。昔の子は、勝手に家の時計を分解して怒られていませんでしたか?(笑) また、プラモデルを組み立てる経験も図形認知力には有効でした。「こういう形がここにおさまると、こうなるんだ…」という経験が自然とできていたのです。

ある小学校で、1年生の図形認知力をテストしたことがありました。そこでは、以下のような点つなぎの問題を出しました。

増田修治先生提供

すると、半数近くの子がうまくかけないという結果がでました。そして、このテストと同日に実施した増田先生の授業についての感想を書いてもらったところ、さらにその半数の子がまったく書けませんでした。

図形認知力が乏しい=ひらがなを書くことが苦手=語い力が育たない=思いを文章にできない、という現象です。

家庭でできる語い力の伸ばし方

「ねぇ、そこのアレとって」「ママ、お茶」などなど、家庭のなかで曖昧な言葉を使っていませんか? まずは、大人がこの習慣を変えましょう。

たとえば、「ねえ、そこのアレとって」ではなく「食器棚の上から2番目の一番右にあるお皿を2枚とってもらえる?」と、具体的なことばにして話すように心がけます。すると、子どもは頭のなかで座標のようにお皿の場所をイメージすることができるわけです。

たくさんのことばにふれるだけでなく、かんたんな算数にもふれることができ、さらに図形認知力にもつながります。

夫婦間で交わされがちな曖昧言葉も、気をつけたいところ。「ママ、お茶」では、「ママがお茶だ」という解釈になってしまいますよね。「ママ、お茶をもう一杯ください」と文章にして話すのを心がけることが大切です。

文字を習得するときのコツ

最初にお話ししましたが、ひらがなの習得は語い力を伸ばすことにつながります。だからといって、ただただ、ひらがなの書き取りをし続ければよいということではありません。

ひらがなの組み合わせによって作り出されることばを理解することが大切です。

この力を伸ばすのに効果的なのが音読です。音読のしかたにもコツがあります。

よくある宿題だと、「教科書の○○という教材を3回音読する」ですが、私はあまり効果がないと思っています。なぜなら、単に音読の回数を増やしても、ひらがなを一字一字追って読んでいるだけの場合には対処できないからです。

人は、文字を読むときに“先読み”といって、今読んでいる文字の先の文字を目で追いながら文章として理解しています。この先読みの練習をするのに、音読はうってつけなのです。

たとえば「あるところにおじいさんとおばあさんがいました」という一文を音読するとします。文字だけを読んでいると「あ」「る」「と」「こ」「ろ」「に」と一字一字追っていくことになり、この読み方ではつまずいたり、遅くなったりします。

ところが文字をことばとして理解しながら音読をすると、徐々にスラスラと読めるようになっていきます。「あるところに」「あるところにおじいさんと」「あるところにおじいさんとおばあさんが」「あるところにおじいさんとおばあさんがいました」という具合です。

1つのお話を何回音読すればよい、のではなくて、一行のことばを分解して、「短く、短く、長く」というように読み進め、文章をていねいに理解しながら進めるのです。

このように音読の練習をすると、文字を組み合わせることでことばができる→いろいろなことばがあることを知る→語い力が伸びるというわけです。

語い力を豊かにするチャンスを生かそう

子どもに語い力がついてきたら、発揮できるチャンスをどんどん生かしましょう。親心としては、子どもが困らないようについつい先回りしてしまうものですが、ぜひ、時間をかけて子どもが自分で意見を言うのを待ってみましょう。

「○○はどう思う?」「△△はどうしたい?」など、子どもとの話し合いの時間を大切にしてください。自分の意見をことばにして、聞いてもらうことで、子ども自身が語い力の大切さに気づくでしょう。

人がコミュニケーションをとる上で、ことばはとても重要です。子どもたちがことばを自由自在に使えるように、今からサポートしていきましょう。

この記事の監修・執筆者

白梅学園大学子ども学部子ども学科 教授 増田 修治

小学校教諭、埼玉大学非常勤講師を経て、現在白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。2001年「児童詩教育賞」受賞。 こどもたちに「ユーモア詩」を書かせるなど、子育てに関 しての講演、著書多数。NHK「にんげん ドキュメント」、テレビ朝日「徹子の部屋」にも出演。保育園・小学校等で研修講師多数。

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