「辞書デビュー」で子どもの語彙力をぐんぐん高める方法とは? 辞書編集の“中の人”に聞きました!

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「辞書デビュー」で子どもの語彙力をぐんぐん高める方法とは? 辞書編集の“中の人”に聞きました!

子どもの語彙力・表現力を高めたいとお考えの保護者のかたは多いと思います。でも、具体的にどんなことをしたらいいのか悩んでしまいますよね。

そこで、「辞書」を活用して、語彙力・表現力を高める方法について、株式会社 学研プラス 小中学生事業部 学参・辞典編集室 辞典チーム 統括編集長の森川聡顕氏にここでしか聞けないお話をうかがいました。

「これからの世界は、言葉そのものの力が重要になってきます。顔を見て話すことは、言葉だけではなく、微妙な表情や身振りなどを読み取って相互理解をすると言われています。マスクをすることが当たり前になり、また、顔を見て話をする形もリアルだけではなく、オンラインなどに変わり、微妙な表情や身振りなどを読み取る機会が減りつつある今、言葉そのものの力が重要になるだろうと思います。

そのような来たるべき世界に、この先お子さんたちは対応していくことになります。学習という観点とともに、よりよい人生を送っていくためにも、子どもたちにぜひ本物の語彙力・読解力・表現力を身につけてほしいと常々思っています。」

お話:森川 聡顕氏(株)学研プラス 辞典編集チーム 統括編集長

目次

同じカテゴリのことばとしての「語彙」~今の子は語彙力がないって本当?~

突然ですが「語彙力」の【語彙】って何だと思いますか?
語彙と言葉って何が違うの? って、思いませんか?

「語彙」とは、「言葉のまとまり」ということです。
ただ「言葉のまとまり」といっても、いろいろなまとまりがあります。
今回は2つのまとまりについてお話します。

一つ目のまとまりは、「ある物事を言い表すために必要な言葉のセット」、というものです。
例えば、料理を言葉で言い表すために必要な言葉のまとまり、があります。材料をそろえる、包丁で切る、火を通す、調味料で味付けする、うつわに盛り付けする、などです。

包丁で切る、には、いちょう切り、薄切り、角切り、小口切り、さいの目切り、千切り、短冊切り、半月切り、細切り、みじん切り、乱切り、輪切り、などなど……。
火を通す、には、茹でる・煮る・蒸す・炊く、炒る・焼く・揚げる、炒める、などなど……。
他にも、素材を表す言葉は? 調味料を表す言葉は? 香辛料を表す言葉は? 器具・道具を表す言葉は? など、考えていけば料理の言葉はたくさんあります。

料理に関する言葉は、ある程度知っておいた方が料理の効率が上がります。料理の本や番組を見て作る際にも、料理の理解が早くなり、きっと上達もすることでしょう。
これら料理の例のように、ある物事を言い表すための言葉のまとまりを「語彙」と言います。

では、小学1年生や2年生ぐらいの子どもの語彙は、多いでしょうか少ないでしょうか。

多い、と思った方も、少ない、と思った方も、どちらも正解です。

まず、「多い」、と思った方。
実は、子どもも子どもなりの語彙はあるのです。むしろ十分に備わっていると思います。
例えば、料理に関わっている子は料理の言葉が豊かになっています。ゲームが好きな子ならゲームの言葉、野球やサッカーが好きならそれらの言葉、ほかにも動物や昆虫、鉄道やアニメ、などなど、心当たりがあるかと思います。それらは、興味あることを理解したり深めたりするために必要な【語彙】なのです。

そのときに、保護者のかたは、子どもが興味を持っていることについて、じっくりと話を聞いてあげてください。大人にも分からない言葉を知っていること、次々に関連する言葉が出てくることが理解できます。子どもの語彙力が認識できます。子どもにとっては、自分の知識を披露する機会ができますので、表現する力がつきます。また、そのようにして会話をすることで、聞く力や、聞いたことに対応して表現する力がついていきます。

子どもは興味のあることについては、とことん調べますし、覚えます。それをどんどん吸収して自分のものにしていきます。つまり【語彙を広げている】のと同時に【語彙の広げ方を学んでいる】のです。単に広げているのではなく、「広げ方を学んでいる」ことを理解してあげることが大事です。

子どもが興味を広げやすく、学習効果が高いものとしては、地図や地球儀、図鑑、百科事典、用語集などが適していると言われています。

一方、「少ない」と思った方、これも正解です。
子どもが持っている語彙や、子どもが持ちたい語彙、それと、大人が持ってほしいと【期待している語彙】とには、どうしてもズレが出てきます。
この期待とのズレが、大人から見た「語彙力の少なさ」になっています。

みなさんには、発想の転換をしてほしいと思っています。
子どもは、とっても大きな器なのです。そして興味津々に生きています。

大人の役割は、子どもの興味・関心と、大人の希望・期待をリンクさせることにあると思います。
適切な方法論や、研究成果のメソッドがあるわけではないのですが、「きっかけ」を作ってあげることはできると思います。話を聞いて、希望・期待する語彙を身につけ、学習に近づくよう、さりげなく誘導したり促したりできそうではないですか。
そうすることで【期待している語彙】も広げていくことができると思います。

大人が「語彙力がある」「頭がいい」と認定するような語彙は、新聞を読むとか名作を読むとか、あとは語彙本などでお勉強したりして身につくような言葉が多いですから、子どもが興味を持って、嫌がらずに面白がって観たり読んだりするようなものを見つけ誘導し、それらにそのような言葉が含まれていれば、自然と大人が求める語彙が身についていくと思います。

似た意味のことばとしての「語彙」~表現力を伸ばすには~

「語彙」の二つ目のまとまりは、「類語」「関連語」「連想語」「同音異義語」「反対語」などです。それぞれ違うものを指していますが、それぞれが関連を持っていたりします。
これらは表現を豊富にするための「まとまり」です。より学習に役立つ「まとまり」です。

小学校では、自分の感じたことや思ったことを作文にする機会があると思います。
その作文あるあるで、「海に行ってうれしかった。たくさん泳いで楽しかった。砂浜でみんなでご飯を食べてうれしかった。泳いでいる魚を見て楽しかった。」という「うれしかった楽しかった作文」……、聞いたことありませんか?もしご自身のお子さんが書いていたとしたら、なんとかならないものかな、ときっと思うことでしょう。

こんなときに役立つのが、「類語辞典」です。
学研では小学生向けの類語辞典も出していますが、もしお手元に『新レインボー小学国語辞典 改訂第6版』があれば、ピンクの縁取りがあるページを開いてみてください。
ピンクの縁取りがあるページは「ことば選びのまど」という特集ページになります。この見開き1ページは、ある言葉を別の表現にすることができる魔法のページです。

「ことば選びのまど」は、おもに感情に関わる言葉を見出しにしています。意味つまり説明文を読むことで、その時の自分はどのような「うれしい」だったのかを、見つめ直すことができるのです。
いくつかの表現の中から一つを選ぶ場合、見出しの言葉だけを見るのではなく、意味、説明文を読んで、自分の頭で思考して、最終的に判断して選ぶことになります。
「思考力」「判断力」も育みつつ、感情の分析もできるようになります。

感情に関する言葉や、その類語をたくさん知ることで、感情のひだが深くなるとおっしゃる先生もいます。
自分の感情を知ることだけではなく、それは相手や他人の感情を知ることにもつながります。感情や思考を言葉にすることを「言語化」とも言いますが、言語化できると、コミュニケーションの力もつき、コミュニケーションの質も高まります。素晴らしいことだと思いませんか。
『新レインボー小学国語辞典』の「ことば選びのまど」や、「類語辞典」を開いたときには、保護者のかたが寄り添って、どの説明文が自分の感情に近いのか、話し合ってみることが効果的です。

辞書の説明文に出てくる言葉や、反対語・同義語・類義語などの言葉、あるいは、関係がありそうな言葉を引いてみる、ということにも取り組めるとさらに「語彙」を増やせます。ネットサーフィンならぬ「辞典サーフィン」ですね。

その時に浮かんできた言葉をどんどん辞書で引いてみることで、言葉がつぎつぎとリンクしていきます。子どもの頭の中では、あの言葉を引いたときに、この言葉も引いたなぁ、と記憶のリンクもしていると思います。様々な形で言葉がつながっていき、頭の中に言葉のネットワークができていきます。つまり語彙が広がっていくことになります。

「うれしかった楽しかった作文」が、「きらきらと輝く海を見て思わず声が弾みました。いそいそと海に入って泳ぎ、魚を見つけたときは胸が躍りました。みんなでご飯を食べたのも楽しい思い出になりました。」なんて文章が書けるかもしれません。

「語彙力」と「読解力」と「表現力」

ここまで【語彙力】と【表現力】についてお話ししましたが、もう一つ加えたい力があります。それは【読解力】です。
読解力とは、話された言葉や、書かれた文章を読み解く力のことです。
この読み解く力も必要になってきます。
最近の学校や家庭での学習でも、「読解力」が注目されていますね。

語彙力と、読解力と、表現力とは、それぞれがばらばらなものではなく、強く関係を持った力です。子どもには得意不得意がありますから、どれか一つが目立つこともあるでしょうが、語彙力と、読解力と、表現力とは、急に、そして一つだけを高めることはできません。
強く関係しているので、段階を経て高めることになります。

まず、子どもが何かを覚えるためには、「読解」する必要があります。学習の基礎と言ってもよいです。音声化された言葉でも、文字化された言葉でも、それを聞き取ったり、読み取ったりして、言葉を覚えていきます。ですので、まずは、基本的な「聞くこと」「読むこと」を身につけ、聞く力と読む力を育みたいですね。

子どもは、大人の話す言葉を聞き、大人の書く文章を見て、理解を深めようとします。「あれってどういう意味」と聞いてくるのは、わからないことを理解しようとしているのです。言い換えれば、日常の中で学習をしているのです。

読解力を付けるには、外部からの情報である大人の話す言葉、大人の書く文章について、分からないことを分からないままにしない、辞書を引いて確認する、という作業が最適です。
これは国語に限ったことではなく、まなび全般に共通して言えることですので、国語辞典や漢字辞典、図鑑など調べ物に役立つ本を用意しておきたいです。
繰り返しますが、分からないことは分からないままにしない、ということです。

そして、子どもは分からない言葉を理解したら、それを自分の中で蓄積していき、あるときそれを自分で話したり、書いたりして、表現することになります。
つまり、外からの情報について読解をして、それを蓄積つまり語彙を増やして、自分の中で整理して表現する、ということになります。その蓄積した語彙を使って、外からの情報を読解して、また自分の中で整理して表現する、ということを繰り返していきます。

そう考えると、語彙力・読解力・表現力の基礎作りは、子ども自身の興味・関心に加えて、それを保護者のかたが適切にサポートすることと、興味・関心に応えられるような国語辞典や図鑑などの本を身近に置いておくことではないかと思います。

教育関連のレポートで、東大に入学した子どもの家には、60%の家に地図・地球儀が、45%の家に国語辞典が、25%の家に百科事典があったと書かれていました(※)。

※出典:デジタルじゃダメ…「8割超の東大生の家にあった」意外なアナログ製品 なぜ必ず「壁を背後にして座る」のか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

辞書デビューに最適な時期はいつ?

「国語辞典」を引かせるのに最適な年代について、迷う保護者のかたも多いと思います。
小学校では「国語辞典」の引き方は3年生で、「漢字辞典」の引き方は4年生で習います。
そのため、以前は、「国語辞典」は小学3年生になった4,5月に、「漢字辞典」は小学4年生になった4,5月に買う人が多くいましたが、それもここ7,8年で変化が起きています。
小学校の入学記念に「国語辞典」と「漢字辞典」をセットで買う人や、セットではなくても「国語辞典」を買う人が増えています。小学校1年生で「国語辞典」を使い始めるのですね。
このような状況を踏まえ、学研で作る国語辞典もオールカラーにしたり、小学1年生も読めるように全ての漢字に振り仮名をつけたり、と対応しています。

今、お手元に国語辞典がない方は、どこの会社のものでもよいので、とにかく、子どもが「これを使いたい」「これが欲しい」と指さしたものを買うとよいと思います。
相当数の読者葉書に、保護者のかたの希望とは違ったが、子どもが欲しがったものを買ったら、喜んで毎日辞書を引いている、と書かれていました。
ぜひ「お子さんの宝物」にしてほしいと思います。

「語彙」を増やすことの効用を金田一秀穂先生は分かりやすくたとえています。
1万画素のデジカメと100万画素のデジカメでは、画像の解像度がちがってくる。100万画素の方が細かくはっきりと見える。
言葉も同じで、語彙力があるほうが、より明快に伝えることができる。と。
豊かな言葉を持つことは、豊かな人生につながる、とも金田一先生は常々おっしゃっています。皆様にはぜひ「国語辞典」をそばに置いて活用し、お子さんの未来を広げていただくことを心から願っています。

森川 聡顕

この記事の監修・執筆者

(株)学研プラス 辞典編集チーム 統括編集長 森川 聡顕

もりかわ としあき/一九六九年生まれ。学習院大学大学院博士課程単位取得。日本語学校非常勤講師、高校非常勤講師などを経て、現在、株式会社学研プラス 辞典編集チーム統括編集長。『新レインボー小学国語辞典』『上級漢和辞典 漢字源』などを手がける。

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