教育評論家の親野智可等先生による親力診断テストの問題を2つ出します。
それぞれ、3つの選択肢のうち、実際の自分の行動に近いのはどれか考えてください。
また、理想的なのはどれかについても考えてみましょう。
問題1
子どもが外から帰宅して「あ~、喉が渇いた」と言ったとします。
あなたはどうしますか?
A:子どもが「○○が飲みたい」と言わなくても飲み物を用意してあげる
B:子どもが「○○が飲みたい」としっかり言えたら、その飲み物を用意してあげる
C:自立させるために、「自分のことは自分でしようね」と言う
問題2
子どもが勉強中に「暑い、暑い」と言ったとします。
あなたはどうしますか?
A:子どもが「○○して」と言わなくても、扇風機をつけたり冷房の設定温度を下げたりする
B:子どもが「○○して」としっかり言えたら、それに応える
C:自立させるために、「人に頼らないで自分でしようね」と言う
診断
私の診断ですとAは○、Bは△、Cは×です。
中には、「理想はBだと思うけど実際の自分はAだな」と考えた人もいると思います。
ご安心ください。
それは人間としてまともな人である証拠です。
相手の気持ちをよく思いやれる愛情深い人である証拠です。
大人同士だったら、それはただの気が利かない人
「理想はBだ」と考えている人もいると思いますが、実はBはあまり良い対応ではありません。
考えてもみてください。
大人同士の間でこれをやったらどうなるでしょう?
職場、友だち同士、あるいは夫婦の間でこういう行動をしていたら、間違いなく気が利かない人と思われてしまいます。
大人の間でやってはいけないことは、親子の間でもやってはいけないのです。
「自分の気持ちを言葉で表現する力をつけさせたい」という思いが空回り
なぜ、私がこういう話をするかというと、子育て中の親の中にはBやCを優先している人がけっこういるからです。
Bを優先している人は、よく子どもに次のように言います。
「『喉が渇いた』だけじゃわからないでしょ。ちゃんと『○○が欲しい』って言いなさい」
「『暑い、暑い』だけじゃわからないでしょ。どうして欲しいかちゃんと言葉で言いなさい」
「自分の気持ちを言葉で表現する力をつけさせたい」という思いから、そういうことを言うのでしょう。
でも、私はあまりやりすぎない方がいいと思います。
なぜなら、こういうやり方で表現力を伸ばすことはできないからです。
それに、こういうことを言われた方は不愉快に感じるからです。
積もり積もれば、愛情不足感が出てきて、「自分はあまり大切にされていない。わたしのことなんかどうでもいいんだ」という気持ちになってしまいます。
Cは論外ですね。
大人同士の間でこれをやったら、ただの冷たい人ということになってしまいます。
大人同士でやってはいけないことは、親子の間でもやってはいけない
大人同士の間では、BやCではいけないことは明らかなのに、親子の間だとやってしまう人が多いです。
それはなぜかというと、「教育のため。しつけのため」という気持ちがあるからです。
でも、それによって人間同士として基本的に大切なことが後回しになってしまうと、子どもは愛情不足を感じるようになってしまいます。
小学校低学年くらいまでの時期は、まずは親の愛情を十分に感じさせることの方が大切です。自分の気持ちを的確に表現する力は、もう少し大きくなってから少しずつ身についていけば大丈夫です。
大人同士でやってはいけないことは、親子の間でもやってはいけないのです。
そして、大人同士で良いことは親子の間でも良いのです。
親がAのような行動をしていれば、それが子どものモデルになります。
親を真似することで、子どもも相手の気持ちをよく思いやって行動できる人になれるのです。
この記事の監修・執筆者
長年の教師経験をもとに、子育て、親子関係、しつけ、勉強法、家庭教育について具体的に提案。著書多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。X、Instagram、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
音声配信サービスVoicyの配信番組「コソダテ・ラジオ」の2022年12月の金曜マンスリーゲストとして出演。「家庭での学習習慣」について熱いトークを配信しています。
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