【一人で短期海外留学する小学生が増加傾向⁉】グローバルに育てたい保護者向け『子どもの海外留学』最新事情 [専門家監修]

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【一人で短期海外留学する小学生が増加傾向⁉】グローバルに育てたい保護者向け『子どもの海外留学』最新事情 [専門家監修]

子どもの海外留学が低年齢化しています。小学生が単身で短期留学(サマースクールなど)に参加するケースもあります。子どもの海外留学事情についてエディクム(株式会社海外教育コンサルタンツ)の柏倉眞紀子氏にお話をうかがいました。

目次

海外留学の低年齢化は世界的な傾向

子どもの海外留学といえば、これまでは大学生や高校生が主流でしたが、最近は、小中学生でも単身で短期海外留学(サマースクール※など)に参加するケースが目立ってきました。

海外留学の低年齢化の理由としては、留学や仕事などで海外生活を体験している保護者がふえ、海外留学に対する抵抗感が少なくなったことが考えられます。また、日本での英語教育の見直し(2020年度に小3から英語が必修教科になった)が始まったことも一因かもしれません。しかし、海外留学の低年齢化は日本だけではなく、世界的な傾向となっています。実際、海外の教育機関が運営するサマースクールでは、低年齢の子ども向けのプログラムが増加しています。

こうした海外留学の低年齢化の背景には、教育のグローバル化も影響しています。たとえば、昨今、環境問題、国際紛争、感染症パンデミック等、私たちを取り巻く社会問題が地球規模化しています。そんななか子どもが将来幸せに生きていくためには国際的な視野とコミュニケーションスキルを身につけることが欠かせません。そう考える保護者にとって、海外留学が教育の選択肢のひとつとして注目されているのでしょう。

※サマースクール:この記事では、海外にある教育機関が夏休みを利用して実施する各種プログラムに世界中から子どもや学生たちが集まってくる短期留学のことを「サマースクール」としています。

海外留学には「長期」と「短期」がある

海外留学は、大きくこの2点に分けられます。

【長期】

長期留学の場合、1学年単位で海外の学校で学びます。スイスなどでは一部、小1から受け入れる学校もありますが、たいていは小学校高学年以上です。日本人の小学生の長期単身留学は数多くありません。

日本で公立小中学校に在籍している場合、帰国後、所定の手続きを完了すれば、年齢相当の学年に入学・編入することができます。しかし、私立の場合、単身留学を認めていない学校が多く、長期留学の時点で退学しなくてはならないケースもあります。

【短期】

低年齢化が進み、最近注目されているのは短期(夏休みを利用した2~4週間程度)のサマースクールです。人気がある留学先はイギリス、カナダ、スイス、アメリカです。

ボーディングスクール(寮制の寄宿学校)主催のサマープログラムの内容は、子どもたちが楽しめるよう「英語研修」「スポーツやアクティビティ」と「小旅行」の組み合わせで構成されています。机上の学習ではなく、世界中から集う同世代の子どもたちと寝食を共にし、コミュニケーションをとることを目的としています。参加者の多くは帰国後、「もっと英語力をつけたい」という意欲を持っています。

低年齢で留学を体験すると自立心が育つ

低年齢で海外留学を体験すると、「実践的な英語力が身につきやすい」という利点があります。しかし、最大のメリットは、親元を離れて海外という普段と違う環境で生活することで自立心が芽生えるという点です。さらに、他言語や異文化に触れることによって、世界には多様な価値観があることを認識し、強い興味を抱くことにつながります。

《サマースクール体験者の声》

実際に小・中学生でサマースクールを体験した子どもの感想を聞くと、短期間に思わぬ成長をとげて帰国するケースが多々あります。サマースクールに参加した小・中学生の体験談を紹介します。

●最初は、両親と別れ、知っている友だちもいなかったし、ことばも通じないのですごく不安でした。スイスのサマースクールは、いろいろな国から子どもが参加します。ぼくは英語がわからないので、ジェスチャーをしたり、知っている英語を使って話そうとしたりしたけど、なかなか通じませんでした。でも、ことばが通じなくても、いつの間にかいっしょに遊ぶことができるようになりました。(小4/スイス 滞在期間3週間)

●英語しか話せない環境の中で3週間過ごせてよかったです。私はこの3週間で、いろいろと考え方が変わりました。(中1/カナダ 滞在期間3週間)

●自分の英語力が思っていた以上に低かったのに驚いた。日本に帰ってからもっと真剣に英語を勉強して、まるで母国語のように話したい。(中2/カナダ 滞在期間4週間)

●他国の人と接してみると、国籍に関係なく、気の合う人はどこにでもいるんだとわかった。(中3/スイス 滞在期間3週間)

※エディクム(株式会社海外教育コンサルタンツ)のホームページより一部抜粋しています。

何年生くらいで体験するのがベスト?

海外留学の体験は、早ければ早いほどよい、というわけではありません。個人差はありますが、あまり幼いときにサマースクールに行っても、感想は「楽しかった」だけで終わってしまうケースも少なくありません。母国語(日本語)でしっかりと考え、自分の意見を表現できる力を身につけてからのほうが、自国の文化や価値観の違いなどに気づくことができます。ご家族の考え方にもよりますが、早くても小学校高学年以上がよいでしょう。

海外留学の費用は、どのくらい?

留学先での子どもの安全や生活管理の利点を考え、ホームステイより私立のボーディングスクールを選ぶ保護者がふえています。

そこで、私立のボーディングスクールに中学1年生として留学した場合の費用の一例をご紹介します。費用は一学年間の授業料、寮費、食費の合計です。

【私立のボーディングスクールに中学1年生として留学した場合の費用の一例】
アメリカ:US$84,300 (為替レートUS$1=¥148の場合、¥12,476,400)
カナダ:C$69,000(為替レートCS$1=¥110の場合、¥7,590,000)
スイス:CHF95,000(為替レートCHF1=¥166の場合、¥15,770,000)
ニュージーランド:NZ$67,500(為替レートNZ$1=¥88の場合、¥5,940,000)

一方、滞在方法をホームステイとし、現地の公立学校に通学する場合、費用はボーディングスクールより安価となります。

また、実際の海外留学には、基本費用(授業料、寮費、食費)に加え、航空券料金、医療保険代、IT 関連費用、課外活動費や小遣いなどが別途かかります。

ボーディングスクールが運営するサマープログラムの費用例をご紹介します。

【ボーディングスクールが運営するサマープログラムの費用例】
カナダ(2週間):C$3,950(為替レートCS$1=¥110の場合、¥434,500)
イギリス(2週間):GBP2,790(為替レートGBP1=¥187の場合、¥521,730)
スイス(2週間):CHF6,300(為替レートCHF1=¥166の場合、¥1,045,800)

上記以外に航空券料金、医療保険代や小遣いなどが別途かかります。

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長期留学を目指すなら英語力をつけ、自己アピールの材料を増やす

サマースクールのような短期留学の場合、高い英語力は求められません。英語が話せない小学生でも、他言語を話す外国の子どもたちと楽しく過ごすことができるでしょう。しかし、長期留学を目指す場合、英語力が高いほど出願する学校の選択肢が広がります。海外の学校では英語力を示すため、TOEFL、 IELTS※、 TOEFL Junior等、英語テストのスコアを要求する学校があります。または各学校が独自に用意する英語や数学のテストを受ける場合もあります。

※IELTS ™(International English Language Testing System,アイエルツ)は、英語熟練度を測る英語検定のひとつ。

しかし、英語力や成績がすべてではありません。より大切なものは、本人の性格、留学の目的、将来の夢、さらに情熱を持って取り組んできたスポーツや音楽、芸術や課外活動、リーダーシップ等のプロフィールです。学校側は、出願者が自校に入学した場合に幸せな学校生活を送れるか、また、学生が学校に貢献できるかなどをエッセイや面接を通して審査します。

北半球の学校は8月~9月に新年度が開始されます。一方南半球は1月末~2月です。留学の出願受け付けは約1年前から始まります。留学先のリサーチや学校選定も含め、海外留学の準備には時間がかかりますので、早めの準備をオススメします。

子どもが留学した際に保護者が気をつけることは?

テクノロジーが進み、オンラインを使って海外にいる子どもと容易に話せる時代となり、ホームシックになる子どもは減少しています。一方、保護者が子どもを心配するあまり、必要以上に連絡を取る事例が見られます。子どもの精神的な自立のためには、過度な口出しをしないようにしましょう。入学当初、成績がよくなくても子どもを責めるのは厳禁です。単身で飛行機に乗り、慣れない環境でがんばっているのですから「えらいね、一人でよくがんばっているね」「言葉が通じない環境で、私があなたの年齢だったら、そこまでできないと思う。毎日楽しく過ごすだけでもすごいことだね」などとほめることで、離れた場所にいても子どもが安心感を持ち、さらにやる気が出るような会話をするとよいでしょう。

海外で子どもが一人で生活できるかどうかという不安や、金銭面のハードルはありますが、海外留学は、グローバル時代を生きる子どもの教育の選択肢のひとつとして注目されています。まずは、サマースクールへの参加などから考えてみてはいかがでしょう。

この記事の監修・執筆者

エディクム(株式会社海外教育コンサルタンツ)代表取締役 柏倉眞紀子

商社勤務を経て1985年、アメリカに留学。ミルズ・カレッジ大学院にて英文学および英語教授法で修士号取得。帰国後、エディクムに入社し、留学の相談、手続きを通して教育問題や親子関係のカウンセリングを行っている。

エディクム(株式会社海外教育コンサルタンツ)ホームページ:https://www.edicm.jp/

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