【2023年度の中学受験を分析】首都圏中学受験者は6万人超えで過去最高に! 最新の入試動向を徹底解説[専門家監修]

更新日: 公開日:

【2023年度の中学受験を分析】首都圏中学受験者は6万人超えで過去最高に! 最新の入試動向を徹底解説[専門家監修]

首都圏では「中学受験が過熱」と話題になっています。なぜ中学受験者数が増加しているのでしょう。中学受験のエキスパート森上展安氏に、増加の理由と今注目されている学校など最新動向をうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

なぜ、中学受験がふえている?

2023年度の首都圏の中学受験者数は、過去最高の約6万3000人(私立・国公立含む)となりました。受験率は18%に迫り、首都圏の小学生の5.6人に1人が中学受験をしている計算になります。なかでも2月1日(午前)の私立中学受験者数は約4万3,000人で、受験率は15%、これも過去最高です(森上教育研究所調べ)。もはや、中学受験は首都圏の小学生に“定着”したといってもよいでしょう。平均受験校数は6~7校程度。多くの私立中学の入試倍率は3倍程度で、中学受験生の3人に2人は合格できないという厳しい入試であることは間違いありません。

少子化時代といわれていますが、東京の湾岸エリア(中央区、江東区、港区、品川区など)は、タワーマンションの建設などで子どもの人口がふえています。子育て世代が住むエリアとしては杉並区や中野区などが人気でしたが、この十数年間で保護者が職場に近い湾岸エリアを好んで徐々に南下してきた可能性もあるかもしれません。もともと湾岸エリアは教育熱が高く中学受験率が高かったので、その地域に住む子どもたちが中学受験層に組み込まれたことが、受験者数増加の理由のひとつと考えられます。

また、2020年、コロナ禍における一斉休校などの措置が行われた際、私立校に比べて公立校はその特性上、オンライン授業などの対応が遅れたことも一因とされています。公立校への不安感から、迅速に対応ができた私立校に対して保護者が期待感を持ったことも私立志向に拍車をかけた要因でしょう。

選ばれるのには理由がある! 人気校、4つのキーワード

2023年度は、男子校・女子校の難関校も人気を集めましたが、上位校だけでなく中位クラスの学校にも志願者が集まり、二極化の様相を見せていました。

ここでは、4つのキーワードをもとに2023年度の注目校を紹介します。

1.校名変更・共学化
2.高大接続
3.新校舎
4.午後入試

1.校名変更・共学化

2023年度の中学入試では、校名を変更して「国際」をつけ、共学化した学校の人気が特徴的でした。たとえば芝国際(東京女子学園が校名変更・共学化してリニューアルし、2023年度に開校。2022年11月に新校舎が完成)は、のべ受験者数でトップの広尾学園に次ぐ2位に躍り出ました。インターナショナルスクールを併設し、世界標準のグローバルな学びに特化した教育が保護者や受験生に支持されたことが人気の主な理由だと考えられます。

サレジアン国際学園世田谷(女子校だった目黒星美学園が2023年度に校名変更・共学化)の志願者数は前年の約6倍にアップ(2022年度の志願者数156人が963人に)。ほかにも千代田国際(千代田女学園が2022年度に校名変更・共学化)などがあり、校名を変更して「国際」と銘打ち、共学化を図った学校が続々と登場し、受験生の人気を集めたのは興味深い現象です。

校名に「国際」をつけた学校に限らず、広尾学園広尾学園小石川開智日本橋(いずれも近年、女子校から共学化)などの人気校の多くは、英語教育をはじめ、IB教育(※)や海外大学との提携などグローバルに活躍できる人材を育成する教育を掲げています。保護者や受験生がグローバル時代に対応した教育に期待を寄せていることがわかります。

※IB教育=国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)は国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラム。国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)の授与などが目的とされている。

2.高大接続(有名大学への進学に有利)

2026年度に「明治大学付属世田谷」に校名を変更して明治大学の系列校となる日本学園の人気が急激にアップ(現小4が受験する年度までは男子のみの募集予定)。入試日程などの事情もあるとはいえ、志願者数数が前年に比べ約5倍にふえました(2022年度の志願者数256人が1,322人に)。人気の要因は卒業生の70%が明治大学に進学できるとアピールしているところにあると考えられます。

高大接続の先駆けともいえる学校に青山学院横浜英和があります。横浜英和女学院が青山学院大学と系属校関係を結び、2016年に青山学院横浜英和と改称しました。校名を変更して7年目の中学入試ですが、第1期卒業生の約6割が青山学院大学に進学した実績があり、人気を集めました。

これらは、将来的に大学進学が有利になる中学への入学を希望する層のニーズに応えた結果といえそうです。

3.新校舎

教育環境の向上や生徒の安全確保などの観点から、校舎の建て替え・改修などを図る学校がふえています。2023年度は校舎のリニューアルを図った学校が人気でした。たとえば桜蔭、開成、海城、品川女子学院、芝国際、早稲田などがそれに当たります(改修中も含む)。その背景には保護者も受験生も学校環境のクリーンネスに敏感になっているという現状があるのでしょう。保護者にしてみれば、校舎のリニューアルは、その学校の資力の証でもあり、学校を選ぶ際の安心材料にもなります。

4.午後入試

東京や神奈川の中学入試は、だいたい2月1日~3日を中心に、それぞれ午前と午後に行われています(埼玉や千葉は1月中)。なかでも2月1日に第1回目(入試は複数回行う)の入試を行う学校が多くなっています。

そんななか、2023年度は「午後入試」「1教科入試」を行った山脇学園湘南白百合学園などが人気を集めました。

上位校の多くは、2月1日の「午前」に入試が集中しますが、午後入試は、国語や算数の1教科または2教科で受験できたり、特別入試があったりして多様です。

最近の中学受験は、2月2日までには合格校を確保しておきたいという受験生の心理が働いていることもあり、日程が前倒しになっている傾向があります。受験生にとっては、午後入試や1教科入試をどう活用するかが重要なポイントです。1日の午前・午後で2校を受けるといっても、午後入試が1教科受験であれば、受験生の負担も少なくてすみます。

今読まれている記事≫【1年で約30人の子どもが犠牲に】水難事故の半数は「川」で起きている![専門家監修]

御三家の人気復活、国公立は? 

前年度は、コロナ禍の影響で、難関校の志願者が減少傾向にありましたが、コロナの影響が収まったせいか2023年度は、いわゆる“御三家”と呼ばれる男子校の麻布、開成、武蔵、女子校の桜蔭、女子学院、雙葉の人気が復活しました。一方、2019~2020年度に起きた大学付属校ブームは沈静化し、早稲田、慶應義塾、明治、日本大学などの付属校は倍率が下がりました。とはいっても、早慶には根強いファンがいますので、入試の難度が下がったというわけではありません。

ここまでは、私立を中心にお伝えしてきましたが、国立や公立中高一貫校はどうだったのでしょう。

国立に関しては大きな動きはなく、筑波大学附属駒場、筑波大学附属、東京学芸大学附属国際などは引き続き安定した人気でした。

都立中高一貫校については、10年ほど前は競争率が7~8倍など高く、注目を浴びましたが、最近は5倍程度で推移しています。都立中高一貫校は、私立の入試とはまったく異なる適性検査を受ける必要があります。そのハードルの高さが受験生に知れ渡り、倍率が落ち着いていると考えられます。

少子化時代といわれるなか、首都圏の中学受験熱は続きそうです。2023年度は、上位校だけでなく中位クラスの学校にも志願者が集まりました。人気が集まった学校の背景を分析すると保護者や小6生が中学に何を期待しているのかがわかります。今後、中学受験を検討しているかたは、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の監修・執筆者

森上教育研究所 代表取締役社長 森上 展安

早稲田大学法学部卒業。学習塾を経営後、1988年に森上教育研究所を設立。中学受験や中高一貫教育などの調査・研究、教育コンサルティングなどを手がける。

プロフィール写真撮影/平野晋子

こそだてまっぷ

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

あわせて読みたい

おすすめ情報

こそだてまっぷ

こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪

関連記事

この記事の監修・執筆者の記事