【1年で約30人の子どもが犠牲に】水難事故の半数は「川」で起きている![専門家監修]

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【1年で約30人の子どもが犠牲に】水難事故の半数は「川」で起きている![専門家監修]

子どもの水難事故の多くは「川」で起きています。なぜ川が危険なのでしょうか。川で遊ぶときに保護者が注意するべきことを水難学会理事の斎藤秀俊先生にうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

2022年は、5~6歳児の水難事故が多く発生

2022年8月に富山県で2歳男児が、9月に千葉県の小1女児が行方不明となり、後日、それぞれ海・川で遺体となって発見されました。いずれも子どもの単独行動がきっかけで悲しい結末となったと考えられています。ほかにも福岡県(6歳女児)、広島県(5歳男児)など自宅近くで行方不明になった子どもが川や水路などに沈んでいるのを発見されています。2022年は、とくに5~6歳児の単独行動による水難事故が多く報告されています。

子どもの水難事故は「川」がトップ

近年の水難事故を「場所別」に見てみましょう。令和4年に発表された「令和3年における水難の概況」(警察庁生活安全局生活安全企画課)によると、子ども(※中学生以下)の死者・行方不明者の場所別数は下記のとおりです。

●河川……18人
●湖沼池…6人
●海………5人
●用水路…2人

合計31人

トップは「河川」で、この傾向は2014年から続いています。水辺の事故というと、旅行先やレジャーをイメージするかもしれませんが、実際は遊び慣れている川で多く起きています。近所の川は、子どもにとって身近な遊び場です。とくに暑い季節は、冷たい水が流れる川に手足を入れたくなり、子どもたちが近づきたくなる場所ともいえます。

これから様々な場面で川遊びをする機会がふえる時期だからこそ、川での水難事故の注意点を知っておきましょう。

穏やかな川、きれいな川が危ない!

水難事故の多くは、見た目が穏やかな川で起きていることをご存じですか。「ゆるやかな流れだから、この川は大丈夫だろう」と油断して事故を招くことが多いのです。穏やかな川では、子どもが遊んでいても、大人がつい目を離してしまうことが考えられます。

川は構造上、流れがゆるやかな場所ほど深くなっていることが多く、また、川底が急に深くなっている場所もあります。さらに地形や川底の状態によって、川面に比べて流れが不安定になっている場合もあるため、一見穏やかな川こそ危険なのです。

水の透明度が高く、川底が見えるようなきれいな川も要注意です。水の中にある物は大きく見えるため、透明度が高い川ほど川底が実際より近く見え「ここは浅い」と錯覚してしまいます。しかも、目線が低くなればなるほど、底が浮いて見えてくるので、子どもにはより浅く見えます。

≪関連記事≫【園バス置き去り事故を防ぐために】2023年4月から内閣府の通達で何が変わる? 保護者にできることは?[専門家監修]

川に到着した直後が危ない!

水難学会の事故調査によると、川での事故の多くが「入水直後」、つまり川に到着してすぐに起きることがわかっています。

子どもの水難事故を防ぐには「保護者が子どもから目を離さないこと」が重要だとされています。ですがたとえば、家族で川辺に到着後、保護者が川遊びの準備をしているとき(シートを敷いたり、着替えをしたりしているときなど)のようなちょっと目を離したすきに、小さな子どもが先に川に入ってしまう。こんなときに事故が起きやすいので十分注意してください。

さらに、川に到着後すぐ、深さを確かめずに走り飛び込みをする子どもがいますが、このケースがもっとも危険です。足の届かない深さの川に走り飛び込みをすると、自力で浮くことが難しいので、「絶対に飛び込んではいけない」と事前に伝えておきましょう。川での水難事故の9割以上が、深さを確かめずに飛び込んでしまった事例です。

川遊びは、水深がひざより浅い場所で

水辺の生き物などに触れる体験ができる川遊びは、貴重な学びの場としても活用したいものです。水難学会では、川遊びを安全に楽しむためにも「ひざまでの水深の場所で遊ぶ」ことをオススメしています。

最近、水難事故防止のために川遊びの際も救命胴衣(一般的にアウトドアショップ等で販売されているライフジャケットのこと。水難学会ではライフジャケットという呼称を使用していません)の着用を推進する声が高まっています。ですが、救命胴衣を着用しても、それを過信せずに「ひざまでの水深の場所で遊ぶ」ようにしましょう。

救命胴衣を着けて、ひざより深い水深の場所へ行くと、かえって流されてしまう危険があります。川での事故を未然に防ぐためには、そもそも「川で泳ぐ」という行為自体が危険であることを忘れないようにしましょう。

川遊びの際は、足をけがなどから保護するためにもシューズを着用しましょう。浮力がある素材なら、万が一流されたときにも浮いていることができるので安心です。サンダルなら、水中でも脱げにくいベルトがついているものがよいです。

川で子どもが流されたら、どうする?

万が一、川で子どもが流されてしまったときは、どうしたらよいのでしょうか。

これまでにも、流された子どもを救助しようとして飛び込んだ大人が遭難してしまう痛ましいケースが多く報告されています。流された子どもを助けようとして水中に飛び込むのは、水難救助法としてやってはいけないことです。なぜなら、結果的に遭難者の数が増え、本来の救助作業が困難になり、最初の遭難者である子どもの救命ができなくなるリスクが高まってしまうからです。

子どもが流されたら、保護者が最優先で行うべきは、119番(消防)に通報することです。通報して、事故が起きた正確な場所、事故者の人数、どのような事故かなどを伝えます。

子どもに教えておきたい「浮いて待て」

水難学会では、水の事故に遭った際に命を守る考え方として「浮いて待て」を推奨しています。たとえば、川で流されたとしても、背浮きをして呼吸さえできていれば救助される可能性は高く、そのうちに浅瀬に流れ着いて助かることもあります。ですから、この「浮いて待て」、つまり「流されても顔を上にして呼吸さえしていれば助かる」ということを子どもに伝えておきましょう。小さなお子さんだったら「空を見て、息をするんだよ」などと教えておくとよいでしょう。

水辺のレジャーが楽しい季節。夏休みにキャンプやバーベキューなど川遊びを計画している人は、以上の点に注意して安全に楽しみましょう。キャンプ地などは、急な天候の変化で増水することもあるので、自分のいる場所に加えて川の上流の気象も確認しておきましょう。レジャーに限らず、子どもの水難事故は「近所の川」でも起きています。子どもの行動範囲に川があるかた、あるいは夏休みに帰省を予定しているかたは、滞在先の近くの川などにも注意をしてください。

この記事の監修・執筆者

一般社団法人水難学会理事 斎藤秀俊

長岡技術科学大学大学院教授、工学博士。水域での事件・事故について、工学、医学、教育学、気象学などのさまざまな観点から検証及び研究を行う。各メディアで風呂から海、水や雪氷まで実験・現場第一主義に徹した記事やコメントを公開。全国各地で発生する水難事故・事件の科学捜査においても多数の実績を誇る。

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