【話題のボーディングスクールって?】各国から集まる子どもたちとの交流で育む、教育現場の実情[専門家監修]

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【話題のボーディングスクールって?】各国から集まる子どもたちとの交流で育む、教育現場の実情[専門家監修]

国内でボーディングスクールの開校が続いています。ボーディングスクールとは、どんな所なのでしょう。エディクム(株式会社海外教育コンサルタンツ)の柏倉眞紀子氏にお話をうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

ボーディングスクール(Boarding School)とは?

ボーディングスクールとはRoom(部屋)とBoard(食事)を提供する寮制の寄宿学校を意味します。子どもだけでなく、教員や職員の一部もキャンパス内に住み、24時間体制で寮生をサポートします。

ボーディングスクールは15世紀ごろ、ヨーロッパで発祥という説があります。現在は、世界中にボーディングスクールが存在し、子どもたちの学びの場となっています。学力だけでなく、次世代社会のリーダーとなる人物の育成を目指しています。

イギリスのイートン校や、アメリカのテンスクールズはエリート志向の名門校として有名ですが、ほかにも個性豊かなボーディングスクールが世界各地にあります。

日本国内でもインターナショナル・ボーディングスクールの開校が相次いでいます。たとえば、2022年には「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」(岩手県)、2023年には「ラグビースクールジャパン」(千葉県)が開校予定。いずれも英国名門パブリックスクール※の日本校です。

※パブリックスクール:英国の私立学校のなかでも、伝統・歴史・格式ある寄宿制の私立学校のこと

ボーディングスクールの選び方と種類

ボーディングスクールの種類について紹介します。学校を選択する際は、いつ(when)、どこで(where)、何を得たいか(what)をチェックしましょう。

●いつ(学年)

アメリカにはジュニアボーディングスクールがあり、日本の小学校高学年から中3までをカバーします。スイスには、小学生または中1~高3までの一貫教育の学校が多々あります。カナダやニュージーランドにも小学生を受け入れる学校はあるものの、多くは中学生以上、高校卒業までの一貫校です。入学後の在学期間は、1学年ごとに学校と保護者との相談で見直されます。

●どこで(留学先)

国によってカリキュラム、卒業資格や留学費用が異なります。カリキュラムは基本的に留学先の国が定める卒業資格を授与するコースです。また、国際バカロレア※コースを提供している学校もあります。その国が定めるカリキュラムと本人の学力を考慮して留学する国を決めましょう。

※国際バカロレア:国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)の授与などを目的とした教育プログラムのこと

●何を得たいか(勉強や課外活動など)

ボーディングスクールに出願する際は、成績や英語力をもとに学校を選びます。そのほかにもスポーツ、芸術、リーダーシップ等の課外活動にも着目しましょう。

学校の種類としては、学習面でサポートが手厚いスモールボーディングスクール(学生数が200名以下の学校)、学力レベルが高い進学校、芸術に力を入れるアートスクールや、ミリタリートレーニングを一部取り入れたミリタリースクールなどがあります。各校の伝統や特徴を知り、自分に合ったボーディングスクールを見つけましょう。

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寮生活を通して異文化や多様な価値観に触れる

ボーディングスクールでは、各国から集まった子どもたちが2~8人程度(上級生になると1人部屋もある)のルームメイトとなり、共同生活を送ります。起床時間、授業開始・終了時間、食事の時間、放課後のスポーツ、アクティビティへの参加、夜の勉強時間、消灯時間にいたるまで、毎日のスケジュールは時間単位で決められており、規則正しい生活習慣を身につけることができます。

寮生活においては、異なった文化や価値観を持った子どもたちといっしょに暮らすため多様性を受け入れる心が育ちます。学業とは別の「学びの場」「人間関係を構築する場」としての役割も担っています。

広大な敷地を持つ学校も

多くのボーディングスクールは、生活、勉強、スポーツ、芸術活動、課外活動に必要な設備や施設をほぼキャンパス内に備えています。たとえば、広大な敷地にスキー場、ゴルフ場、セイリングスポーツ用の湖、農園などを備えたボーディングスクールもあり、自分が興味を持っていることをさらに探究したり、新しい才能や能力を発見したりするチャンスにも恵まれます。

学習面においては、教員の大半も寮で暮らしているため、放課後も学習のサポートを受けられます。また高校や大学進学のための勉強にとどまらず、リーダーシップ活動、社会奉仕活動、芸術・文化活動、企業のインターンシップなど多岐にわたる活動に参加する機会が提供されています。

なぜ、ボーディングスクールが選ばれる?

子どもの海外留学を検討する際、ホームステイよりもボーディングスクールを選ぶご家庭がふえています。ボーディングスクールでは、どんな力を身につけることができるのでしょうか。

●自分の意見を明確に英語で発言できる実践的な英語力を身につけることができる
●規則正しい寮生活を通して、自己管理能力や人間関係を築く力を身につけることができる
●多様な背景、文化、考え方を持つ子どもたちとの交流で、異文化に対する興味や理解が深まる一方で、世界的な視点から日本について考えることができる
●他国の同世代の子どもたちとの交流を通して、自分の将来設計に新たなビジョンを描くことができる

などがあげられます。

入学審査に必要なものは?

ボーディングスクールへ出願する際、求められるものの例を紹介します。

●過去2~3年間の成績証明書
●在籍中の日本の学校の教員からの推薦状(2~3名)
●英語力を示すテストスコア(TOEFL、TOEFL Jr.、IELTS※など)、または出願先のボーディングスクールが指定する英語・数学のオンラインテスト受験
●英文エッセイ(志望理由や自己紹介を書いた作文)
●スポーツ、芸術活動、奉仕活動、リーダーシップ履歴、趣味や特技などをアピールする写真や作品
●面接(現地に限らず、日本でオンラインを利用して受けられる学校もある)

大切なのは「なぜその学校に行きたいか?」を伝えることです。学校側は「この子どもがこの学校に入学して幸せになれるか」「学校に貢献してくれるか」などを審査して合否を出します。

北半球の学校は8月下旬~9月初旬に新年度がスタートします。その1年前から出願受け付けが始まり、年内に受け付けが終了する学校や、年明けに募集を締め切る学校もあります。早めに情報収集をし、準備を進めましょう。

※IELTS ™(International English Language Testing System アイエルツ):英語熟練度を測る英語検定のひとつ

ボーディングスクールって、費用はどのくらいかかる?

私立のボーディングスクールに中学1年生として留学した場合の費用の一例を紹介します。費用は1学年間の授業料、寮費、食費の合計です。

アメリカ:US$84,300 (為替レートUS$1=¥148の場合、¥12,476,400)
カナダ:C$69,000(為替レートCS$1=¥110の場合、¥7,590,000)
スイス:CHF95,000(為替レートCHF1=¥166の場合、¥15,770,000)
イギリス:GBP435,300(為替レートGBP1=¥187の場合、¥8.471,100)
ニュージーランド:NZ$67,500(為替レートNZ$1=¥88の場合、¥5,940,000)

卒業後の大学進学はどうなる?

海外のボーディングスクールを卒業後、その留学先の国にある大学、あるいは日本の大学を含む他国の大学に進学する人もいます。

ボーディングスクールには、進路の相談を受ける専門家がいます。高校2年生になると、それまでの成績や英語力、学習以外の活動履歴などをもとに進学のサポートを受けられます。

日本の大学への出願は、一般入試よりも総合型選抜入試※を選ぶ人が多いです。出願条件は毎年変更される可能性がありますので、よく確認をしましょう。

※総合型選抜入試:受験生の学ぶ力を総合的に評価・判断する選抜方式。かつての「AO入試」のこと

保護者が気をつけることは?

ボーディングスクールへの入学を検討する際は、まず留学が子どもの性格に合っているかを考えましょう。集団生活が苦手、あるいは周囲の目が気になる繊細な子どもにとっては、寮生活が負担になるかもしれません。

たとえば、ルームメイトに対して「夜寝るときは部屋を暗くしたいのに照明を消してくれない」などのちょっとした不満がストレスになります。できれば、留学前のトライアルとして、国内外のサマースクールを体験するとよいでしょう。「うちの子は、寮生活になじめるかな」という不安があるご家庭は、子どもが保護者から離れて生活する機会を作って様子を見るとよいでしょう。

ボーディングスクールでは、価値観が異なる各国の子どもといっしょに生活します。とくに、お金の使い方や管理のしかたなどで違和感を感じる子どももいるため、ご家庭の価値観を事前に伝えておくとよいでしょう。

子どもが長期間、親元を離れ、ボーディングスクールで過ごすことは、自立心や自信を育む機会となります。入学を考える際は、家庭内でよく話し合いましょう。

この記事の監修・執筆者

エディクム(株式会社海外教育コンサルタンツ)代表取締役 柏倉眞紀子

商社勤務を経て1985年、アメリカに留学。ミルズ・カレッジ大学院にて英文学および英語教授法で修士号取得。帰国後、エディクムに入社し、留学の相談、手続きを通して教育問題や親子関係のカウンセリングを行っている。

エディクム(株式会社海外教育コンサルタンツ)ホームページ:https://www.edicm.jp/

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