【字が書けない⁉】学習障害(LD)ってなんだろう[専門家監修]

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低学年とくらべ、学習の難度があがってくる中学年。3年生ぐらいになると、学習障害(LD)が疑われたり、症状が明らかになってくるお子さんがいます。ではいったい学習障害とはどのような障害なのでしょうか。また、我が子にその傾向があると感じたり、疑われる場合、どこに相談し、何をすればよいのでしょうか。

ここでは、学習障害専門の発達科学コミュニケーションマスタートレーナー・森あや先生に、主に小3頃から目立ち始める、学習障害の特徴とその対応についてお伺いしました。

取材・文/こそだてまっぷ編集部

目次

学習障害(LD)とは?

3年生になると、国語で学ぶ漢字の字数・画数が増えたり、算数も数桁の計算や数量問題などが頻出し、グッと学習面での難しさを実感する保護者の方も多いのではないでしょうか。学校生活にも慣れ、普段の生活には支障がないように感じていても、学習面で「何度教えても定着しない」「字を読んだり漢字を書くことが苦手」などという困りごとがお子さんにあらわれていたら、それは学習障害(LD※1)かもしれません

※1:LD/学習障害の英語の名称(Learning Disorder)を訳したもの。単語の頭文字をとってLDとも呼ばれている。以下、本記事では「学習障害」と表記。

学習障害とは、知的な発達に遅れがないにも関わらず、読み・書き・計算など、ある特定の領域において困難さがみられる発達障害のひとつです。グレーゾーンを含めると、“勉強の苦手が目立つタイプ”といえるでしょう。

学習障害の特徴は?

文部科学省※2が定めるところによると、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な6つの基礎的な能力のうち、ひとつないし複数の特定の能力を習得できなかったり、うまく発揮することができないことで、学習上さまざまな困難に直面している状態をいいます。

※2文部科学省公式サイトより/学習障害について

日常生活では特に困難を感じずに過ごせていても「なんだか勉強が苦手」と周囲から捉えられることが多く、「努力が足りない」「頑張ればなんとかなる」と、保護者でさえも見過ごしてしまうことが多いのです。

そのため、支援の必要性があるにもかかわらず「やればできる」と判断されてしまうことも多々あります。特性を理解されないままだと、結果的に子どもの自己肯定感を下げたり、自己否定してしまう状態に陥りやすいので注意が必要です。

また、学習障害は発達障害の他の症状、注意欠如多動症障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)と合併してみられるお子さんが多い傾向にあるといえます。特に注意欠如多動症障害(ADHD)との併発が多く、学習障害の症状が悪化している原因のひとつにその特性(例えば、集中できないことでそもそも学習が進まない、など)であったりすることも、多々見受けられます。

学習障害の症状は?

学習障害といっても、症状はさまざま。見分けるのがとても難しいと言われています。まずひとつ言えることは、定型発達の子どもとの違いは、“本人が頑張っているにもかかわらず、できない”ということ。保護者から見て、「頑張って書いてるよね?でも…」という感覚です。“やる気がない”わけではないのにという違和感をもったら、以下の項目を確認してみてください。

学習障害の主な症状は3点あります。ここであげたものは主に中学年のお子さんに多く見られ、気づくきっかけになりやすい症状です。

●読字障害
・読むこと全般に苦手を感じている
・音読をすると、たどたどしく時間がかかる
・文節の区切りが不自然で、逐次読み(一文字ずつ読む)をする
・早く読めるが理解していない
・指で押さえながら読むと、少し読みやすくなる
・「てにをは」の判断がつかず読めない

●書字障害
・書くこと全般に苦手を感じている
・ノートをとるのが極端に遅い
・書いた文字が読めないほどきたない
・書き順を間違える
・画数の多い漢字や似た文字を書き間違えたり、へん・つくりなどが逆、鏡文字になる
(ね:わ、ぬ:ね、など)(板・坂、息・想など)

●算数障害
・数(量)を把握するのが苦手
・いつまでも指を使って計算をしようとする
・計算をするとパニックになる
・繰り上がり・繰り下がりが何度やってもできない
・九九がなかなか覚えられない

このように症状もタイプが分かれます。原因には、視覚認知の弱さ、音韻能力の弱さ、強調運動の困難さ、ワーキングメモリーの低さなどが関係しているといわれています。

また年齢が上がると、この差がより大きく出てくるのが学習障害の特徴といえます。もし今の段階では気づかなくても、高学年・中高生になってから気づく場合もあります。

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保護者の心得と選択肢とは?

なによりもお子さんにとって信頼できる人と安心できる環境がいちばん大切です。まずは、保護者の方がお子さんの特性を理解すること。そのうえで、お子さんがいちばん長くいる場所=学校の先生との連携をとれるよう、まずは相談しましょう。

そのうえで以下をお子さんの状態にあわせて検討してみましょう。

●知能検査「WISC※3」を受ける
学校の先生に“子どもの状態を説明する材料”として、受けておくことも手段のひとつといえるでしょう。学校・療育・病院など、受けられる方法・ルートはさまざまです。

●学校内「通級指導教室」に通う
学習や生活の困難を解消するため、子どもの特性に合わせた授業が、個別または少人数で行われている学びの場。〈通常の学級〉に在籍する子どもが対象。個々に対応してもらえ、また担任との連携の際、先生同士での情報共有もされている場合も多く、子どものペースを尊重してもらえます。

●学校内「特別支援学級」に転籍する
学校によって学級の運営状況や個別対応の方法はさまざまなので、より多くの支援が必要と判断される場合は、相談してみましょう。

●発達専門医のいる医療・療育・福祉施設等を利用
就学児が療育を受けられる主な場としては、「放課後等デイサービス」があります。放課後の時間を使って定期的に子どもに合った支援を受けることができます。また、問診・相談などで専門医(指導員)から、アドバイスをもらうことも可能。

※3:WISC/ウェクスラー式知能検査のひとつ。最新版はWISC-Ⅴ(ウィスク5)だが、現在日本では、WISC-Ⅳ(ウィスク4)が多く活用されている。5歳0か月~16歳11か月の児童の知能を測定する臨床検査。この検査では知的能力や記憶・処理能力をはかることができるため、発達障害の診断やサポートに活用されている。

学習障害の子の保護者にありがちなNG行動って?

「書くことが苦手」「計算が難しい」と我が子の苦手がわかった瞬間、保護者の方がよく選択される方法としては、塾に通う、家庭教師をつける、そして勉強量を増やす、ではないでしょうか。しかし、この対応には大きな注意点があります

●塾や家庭教師⇒講師が子どもの特性を理解していない場合、指導は不十分に。
●勉強量を増やす⇒やみくもに増やすだけでは効果は出ない。

学習障害は脳の機能の問題です。ただ、塾や家庭教師をつけて勉強量を増やしても、できるようになるわけではありません。むしろ症状を悪化させてしまったり、子ども本人の自己肯定感を下げたりとデメリットが強くでる場合もあります。

だからこそ専用のトレーニングが必要。認知力、集中力、注意力を根本的に上げることが大切です。

学習障害に対して家庭でできることは?

ここまでは、学習障害とわかってからの周囲との連携についてお伝えしましたが、それと並んで大切なことは、日常生活で日々、適切な対応とトレーニングを重ねることです。方法はさまざまですが、いくつかポイントをお伝えします。

●親子間のコミュニケーションを良好に
適切な対応やトレーニングをするうえでとても重要なことは、お互いに信頼し合える関係であること。もしもお子さんが保護者に対して反発心があるようなら、トレーニングだけを無理強いしても逆効果です。まずはお子さんのいちばんの理解者として、コミュニケーションをとれる良い状態が理想的です。

●学習環境を調整する
“注意散漫にならない=集中できる”ということです。その子に合った学習環境を整えてあげることが大切。例えば「机の上に物を置かない」「視線があちこちへいかないよう机を壁側に向けて着席」「文具はシンプルに(キャラや柄に注目してしまうため)」など。学習障害に限らず、発達障害のお子さん全般にいえることですが、いずれも気が散りやすい特性があるので、集中できるような学習環境を整えてあげてください。

●生活の中で楽しくビジョントレーニングを取り入れる
見たものを正しく認識したり、体をイメージ通りに動かす機能を向上させるための“ビジョントレーニング”。これを家庭で楽しく継続的にできることが理想です。
例えば“たくさんの情報の中から大事な情報を選ぶ”という探索問題を、おやつの時間に取り入れます。マーブルカラーのチョコで「ピンクを選んで食べよう!」、動物型のビスケットで「うさぎを探してね」とすれば、子どもも楽しみながらトレーニングできます。また、絵本『ミッケ!』も探索問題として活用することができます。親子で読めば、コミュニケーションの時間としても一石二鳥です。
“認知力・集中力・注意力”を高めてあげることで、人の話を落ち着いて聞けるようになっていきます。

● “ストレスのかからない勉強法”をいっしょに探す
学習障害の子どもにとって“学習面で普通に求められることが、自分にはできない”ということが大きなストレス。そこでお子さんの特性に配慮した学習スタイルをとることも考えましょう。

(例)
・書くことが苦手な場合、タブレットやアプリなどを使用しタイピングでアウトプット
・宿題に音読がある場合、いっしょに交互に読み、親子で取り組む
・途中式を書くのが嫌な場合、途中まで式を書いてあげる    など。

3年生になると、ますます「ひとりでできるように」と、学校や家庭など多くの場所で“ひとりで”を求められがちですが、あえて手助けしてあげることは有効な手段です。ひとりで無理に取り組んで失敗が続くよりも、小さな成功を重ねることが大切なのです。そうして“その子に合った学習方法”をいっしょに見つけていくことができるとよいでしょう。

 


ここまで、学習障害について、お伝えしてきました。学習になにか違和感があるようなら、お子さんと向き合い、安心して学べる環境を整えてあげられるよう、学校や専門機関に相談しながらできることを探してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修・執筆者

「セルフラーニング・アカデミー」主宰 森 あや

学習障害(LD)専門の発達科学コミュニケーションマスタートレーナー。200組以上の親子の事例と自身の子育て経験を生かし、オンラインスクール『セルフラーニング・アカデミー』を主宰。学校教育が合わない子に自学力を育てるための発達支援を行っている。https://desc-lab.com/moriaya/
『パステル総研』トレーナー講師。https://desc-lab.com/trainer/

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