【脳科学者&小児科医監修】もしかして、発達障害? と思ったら~前編<保護者はどうしたらいいの?>

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【脳科学者&小児科医監修】もしかして、発達障害? と思ったら~前編<保護者はどうしたらいいの?>

じっとしていられない、特定の物事に対するこだわりが強すぎる、ほかの子に比べて学習が遅れている……といった子どもの様子を見て「うちの子、もしかしたら発達障害!?」と疑ったことはありませんか? ひと言で発達障害といっても、その特性はいろいろです。子どものそんな様子が気になったら、保護者はどうしたらいいのでしょうか。
発達障害グレーゾーン専門の脳科学者で「発達科学コミュニケーション」代表の吉野加容子先生と、小児科医で親子の未来を創る発達診断「ママカルテ」主宰でもある森中博子先生にお話をうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

発達障害とはどんなもので、何が原因なの?

発達障害とは、脳のある部分が未発達だったり、うまく働かなかったりすることで起こるさまざまな状態のことをいいます。

原因は、染色体異常や幼少期の脳疾患などのケースもありますが、ほとんどははっきりわかっていません。保護者のしつけが原因なのではなく、脳機能の発達の特性や偏りだと考えたほうがよいでしょう。保護者が正しい知識と技術を身につけて適切な対応をすることで、困りごとは軽減されるといわれています。

入園をきっかけに気づくことが多い

なかには、2歳くらいで「うちの子、なんだか育てにくい」と感じて発達障害に気づく保護者もいます。でも、幼稚園や保育園に入って、集団生活をするなかで「あれ、うちの子、他の子と違う?」と我が子の発達障害に気づくケースが多いです。また、通っている園や学校の先生から指摘されて気づくこともあります。

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発達障害の代表的な3タイプ

発達障害には知的障害も含まれますが、ここでは知的障害以外の代表的な3タイプとその主な特性を紹介します。

1)注意欠陥多動性障害/ADHDの特性

・落ち着きがなく、いつも動き回っている

・しゃべりすぎる、静かに遊べない

・突然走り出すなど考えなしに衝動的な行動をとる

・かんしゃくを起こすなど急にカッとなる

・順番を待てない

・相手が話し終わる前に話し始める

・注意したり、集中したりすることが苦手

・指示されたことをすぐ忘れる

・ケアレスミスが多い

・なくし物や忘れ物が多い

 ……など

2)自閉スペクトラム症/ASDの特性

・一方的に話すなど会話が成り立ちにくい

・空気が読めず、相手の気持ちや意図をくみとるのが苦手

・人と関わることや情緒的なやりとりが苦手

・話し方に気持ちがこもっていない

・紋切り型のセリフをよく使う

・相手の言葉をこだまのように繰り返して使う(エコラリア)

・言葉が少ない

・自分の気持ちをうまく言えない

・暗黙の理解が苦手

・言葉の裏の意味や比喩がわからない

・数字、路線図などパターン化されたものを暗記するのが好き

 ……など

3) 学習障害/LDの特性

・「聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する」このうちのどれか1つ、もしくは、複数の学習や習得が遅れている

・全般的に理解力が乏しい場合がある

・何度教えても苦手領域の勉強が進みにくい

・運動が苦手で、人の動きを真似ることができない

・指や手をうまく使えず、ちょうちょう結びをするなどの細かな動きが小学校高学年になってもできない

・朝起きたり、朝の支度をしたりするのが苦手

・できることは年相応にできるので、できないことは怠けているように見える

 ……など

実際には、子どもによって発達障害の特性はさまざまで、上記のすべてが当てはまるわけではありません。3つの発達障害の特性が少しずつ併せて見られる子どもがほとんどです。性別では、3:1くらいの割合で男の子のほうが多いといわれています。

意外と多い? 診断がつきにくいグレーゾーン

「じっとしていられない」「かんしゃくを起こしやすい」などの発達障害の特性は見られるものの、診断基準にぴったり当てはまらず、社会や学校に適応できないほどの発達の遅れではない場合を「グレーゾーン」と呼びます。グレーゾーンと定型発達(知的障害や発達障害ではないこと)の境界線は曖昧です。

発達障害の子どもは、グレーゾーンも含めると10%程度いるといわれています。例えば30人クラスなら3人くらいが発達障害やグレーゾーンの子どもということになります。しかし、現場で子どもたちに触れている学校の先生たちからは「もっと多い印象がある」「1クラスに5、6人はいる」という声もあがっています。

「発達障害かも?」と思ったら、何をすべき?

「うちの子、もしかしたら発達障害かも」と気になったら、まず、通っている園や小学校の先生に相談するのがいいでしょう。その子の特性に合った発達障害相談窓口(スクールカウンセラーや自治体の発達障害者支援センターや療育センターなど)を薦めてもらえるはずです。

また、発達障害外来のある病院に行くというのもひとつの方法です。病院はハードルが高いと感じるかもしれませんが、医師の診断をもらわないと行政の支援や福祉サービスを受けられない場合があります。

医療機関に行くときは、子どもの「困りごと」をリストアップしたメモなどを持参することをオススメします。また、出産時のトラブルの有無や成育歴を聞かれることもあるため母子手帳もあるとよいでしょう。

ただ、現在は予約を取るのに時間がかかる専門機関が多く、検査や診断までに3か月〜1年以上の時間がかかることも珍しくありません。グレーゾーンの場合、診断はつきませんので、その後のフォローアップを受けられないことがほとんどです。診断にこだわって時間を費やすよりも、保護者が適切な対応の方法を学んで実践していくほうが困りごとをより早く改善できるでしょう。

小学校の特別支援学級で特性に合った指導を受ける

学校生活(集団生活)にうまくなじめないと感じた小学生の場合は、特別支援学級を選ぶという選択肢があります。

特別支援学級とは小・中学校に設置されている学級で、軽度~中度の発達障害があり、通常の学級での学習が難しい子どもが、少人数クラスで個々の理解度に合った教育や指導を受けられるものです。子どもの状況に合わせて、給食や休み時間、一部の授業を通常の学級で受ける場合もあります。また、低学年のうちは支援学級で特性に合った指導を受け、高学年になったら通常の学級に変更するという選択をしている人もいます。特別支援教育に抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、子どもの成長にとって何がいちばん大切かを考えて選択するとよいでしょう。ただし、特別支援学級を希望しても必ず入れるとは限りませんし、学校によって学級の種別や内容はさまざまですので、事前に十分な下調べを行い、その学級を選ぶ目的を明確にすることが大切です。

特別支援学級を選択した場合のメリット

・先生は発達障害や特別支援教育の専門知識があるので安心

・個別の指導計画が立てられ、特性に合った教育が受けられる

・少人数クラスで先生の目が行き届きやすい

・その子が持つ能力や良さを伸ばせる

・言葉、計算、お金の理解など社会生活に密着した基礎能力を養える

・問題行動や理解力不足などの特性に対して周囲から理解を得やすいので、本人のストレスを軽減できる

・会話や活動をいっしょに楽しめる友だちを作りやすい

 ……など

特別支援学級を選択した場合のデメリット

・学力が十分にある子どもは学習が物足りなく感じることがある

・発達障害に男子が多いため男子の割合が高く、女子の場合は友だちが作りにくい

・「どうして自分だけ?」と通常の学級に通う子どもとの違いに気づくと、ストレスや不安を抱えることがある

 ……など

放っておくと二次障害の可能性も

発達障害、とくにグレーゾーンの子どもを持つ保護者の中には「もう少し成長すれば困りごとが減るかもしれない」などの期待をこめて「もうしばらく様子を見よう」と問題を先送りにしてしまう方もいます。ですが、発達障害を疑ったら、早めの対応をオススメします。発達障害の子どもは、問題行動を起こすたびに、保護者や先生から叱られてばかりいる状況に陥りやすいです。そのため自尊心を失って学校生活や社会生活になじめなくなり、二次障害を発症してしまうおそれがあります。二次障害とは、本来の特性とは別に、二次的な問題や行動が起きること。それを防ぐためには、そのまま様子を見るより、早めの対応が必要なのです。

《二次障害の例》

1)劣等感やイライラ感が高まり攻撃的・暴力的になる

2)うつになる

3)学校がつまらなくなって不登校になる

 ……など。

近年、メディアなどで取り上げられることが増え、発達障害という言葉も認知が広まってきました。その結果、子どもの発達障害が発見されやすくなっています。子どもが明るい気持ちで学校生活を送れるように発達障害の兆候に気づいたら、先送りにせず早めの対応をしましょう。

次週、後編では、発達障害の子どもを伸ばす「コミュニケーションのコツ」をお伝えします。

監修/吉野加容子(脳科学者「発達科学コミュニケーション」代表) 

学術博士、臨床発達心理士。広島大学、東京学芸大学大学院(修士課程)、慶應義塾大学大学院(博士課程)修了。脳科学、教育学、発達心理学のメソッドを合わせた“家庭でできる”発達支援プログラム「発達科学コミュニケーション」を開発。発達に悩む親子のカウンセリングや発達支援などを行う。「パステル総研」公式HP https://desc-lab.com/

監修/森中博子(小児科専門医/親子の未来を創る発達診断「ママカルテ」主宰)

小児科医として21年間でのべ16000組の親子と出会ってきた経験と、自身の発達障害の子どもの育児経験から、親子のコミュニケーションの重要性を痛感。「発達科学コミュニケーション」トレーナーとして活動。現在は親子の未来を創る発達診断「ママカルテ」を研究・開発している。

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