【医師監修】小学生のおねしょは病気なの?〈夜尿症 前編〉

更新日: 公開日:

【医師監修】小学生のおねしょは病気なの?〈夜尿症 前編〉

「小学生になったのに、まだ、おねしょをしてしまう」そんな悩みを抱えていませんか? もしかしたら、それは「夜尿症」という病気かもしれません。直接命にかかわる病気ではなく、お子さんが小学校を卒業するころまでには自然に治るケースが多いようです。とはいえ、夜尿症は、お子さんの心理面によくない影響を与えることがあるので早めの対策が必要です。夜尿症に詳しい兵庫医科大学小児科学特別招聘教授の服部益治先生にお話をうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

「おねしょ」と「夜尿症」の違い

まずは、「おねしょ」と「夜尿症」の違いから説明しましょう。

夜、眠っている間に乳幼児が気づかずに尿を漏らすことを「おねしょ」と言います。これは必ずしも病気というわけではなく、よくある生理的なものなので問題はありません。

 ですが、5歳を過ぎても夜間の尿漏れが月に1回以上で3か月以上続く場合は「夜尿症」と診断され、治療が必要な場合があります。「おねしょ」と「夜尿症」は、医学的には別のものと考えられているのです。

夜尿症のお子さんは、5歳で15%、6歳で13%、10歳でも5%くらいいます。夜尿症は直接命にかかわるような病気ではないため放置されているケースが多く、また、あまり人に言わない保護者が多いのです。

宿泊学習が医療機関受診のきっかけに

ここ数年は、コロナ禍で中止されることもありましたが、多くの小学校で宿泊を伴う集団での自然体験活動(自然学校、自然学習、林間学校など)が行われています。夜尿症のお子さんとその保護者は、「自然学校に参加するまでになんとか治しておきたい」などの理由で医療機関に駆け込むケースが増えています。

日本だけでなく海外でも夜尿症に関する調査が本格的に始まったのは2000年代に入ってからで、まだ20年ほどしか経っていません。以前、小学校で集団宿泊を伴う学習活動が行われていなかった時代は、「小学校6年の修学旅行までには治るだろう」と放置していた保護者も多かったと考えられます。

お子さんの自尊心を傷つける夜尿症

今では、夜尿症は医療機関で適切な診断や治療を受ければ、放置した場合より早く治る率が2~3倍高くなることがわかっています。小学生になってもおねしょが続き、もし、先に挙げた夜尿症の定義にお子さんがあてはまるなら、医療機関に相談しましょう。臓器疾患などほかの病気が隠れているケースもあります。

 夜尿症は、お子さんの自尊心を傷つけ、自分を“だめな人間”“ほかの人より劣った人間”だと思い込んでしまうきっかけになるおそれがあります。その結果、学校生活や友人関係によくない影響を与えることもあるでしょう。自然に治癒することが多いですが、お子さんの心理面や生活面への影響を考え、早めの対策をして夜尿症を長引かせないようにすることが大切です。

夜尿症の原因とメカニズム

夜尿症の原因は、主に次のようなことです。

●夜眠っている間に作られる尿の量が多い。

●膀胱のサイズ(容量)が小さい、あるいは未熟(成長に伴って、膀胱が大きくなれば改善する)。

●睡眠から覚醒しにくく、夜中に目を覚ます能力が未熟。睡眠の質がよくない場合が多い。

夜尿症は、夜眠っている間に作られる尿の量と、尿をためる膀胱の大きさとのバランスが取れていない場合に起こります。たとえば、眠っている間に作られる尿の量が多すぎたり、膀胱のサイズが小さすぎて十分に尿をためられなかったりするとあふれてしまいます。

 また、就寝中に膀胱から尿があふれそうになっていることに気づいて起きることができればトイレに行けるのですが、起きられないと漏らしてしまいます。

人間は、夜しっかり眠って休養するために夜間の尿を減らす能力を持っています。これは脳から出される「抗利尿ホルモン」の働きによるものです。質のよい睡眠をとっていると抗利尿ホルモンが出やすくなります。夜尿症を長引かせないためには、睡眠の質を改善することを心がけましょう。

夜尿症には遺伝的な要因もある

上記のほか、遺伝的要因もあります。両親のいずれかが夜尿症の場合、約40%のお子さんに夜尿症が見られます。きょうだいや親せきに夜尿症の人がいる場合も注意が必要です。

 また、男女比は2:1で男児に夜尿症が多いことがわかっています。それはおそらく、性ホルモンの影響と考えられます。性ホルモンの分泌が始まる時期が、男性ホルモンは、女性ホルモンより遅い場合が多いのです。そのため男の子のほうが、女の子よりも成長が遅いのが一般的で、膀胱の成長も遅いことが考えられます。

昼間のお漏らしがあると治るのに時間がかかることも

夜尿症以外に、昼間に尿を漏らしてしまう「昼間尿失禁」という病気があります。症状は、5歳以上で、昼間の眠っていないときに尿を漏らしてしまうというものです。7歳で7%がかかっているとされていますが、成長するにつれて自然に治る場合が多いです。

ただし、5歳を過ぎても長期間にわたり続く例もあります。長引くと夜尿症以上に日常生活に影響が出やすく、お子さんの自尊心の低下を招く可能性があるので気をつけましょう。昼間尿失禁は膀胱・尿道などの形態や機能に何らかの問題があったり心理的ストレスが原因になったりすることもあります。

夜尿症と昼間尿失禁を併発するお子さんは、夜尿症の子どもの5%程度と多くはありません。しかし、昼間尿失禁がある夜尿症は治るのに時間がかかります。

ゲームも昼間尿失禁の原因のひとつに

最近、子どもの昼間尿失禁が増加傾向にあります。ゲームなどの遊びもその原因のひとつと考えられます。たとえば、ゲームに夢中になってトイレに行くのをがまんすることが続くと、尿意に鈍感になり、膀胱の壁がだんだん厚くなります。膀胱の壁が厚くなると大きく膨らみにくくなり、尿をたくさんためることができなくなって漏らしてしまいます。

お子さんがトイレをがまんしないように「ゲームをする前にはトイレに行きなさい」などと、保護者や周りの大人が声をかけてトイレに行く習慣をつけさせるといいでしょう。

★後編では、「夜尿症は、生活の見直しで改善!」として、家庭でできる対策と治療法についてお伝えします。

この記事の監修・執筆者

兵庫医科大学小児科学特別招聘教授 服部 益治

「おねしょ卒業!プロジェクト委員会」委員長。日本小児科学会専門医、日本腎臓学会専門医、日本夜尿症学会評議員、医療福祉センターさくら院長ほか。専門は、小児科全般、腎臓病、夜尿症、予防接種、傷害予防など。次世代を託す子どもたちに心豊かに育ってもらうために講演や執筆などで活躍。

あわせて読みたい

関連記事

この記事の監修・執筆者の記事