【キレやすい子どもにならないために】怒りをコントロールする、子どものアンガーマネジメントとは[専門家監修]

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【キレやすい子どもにならないために】怒りをコントロールする、子どものアンガーマネジメントとは[専門家監修]

物事が思いどおりにいかないと、怒ってかんしゃくを起こす子の保護者必見! 子どもが怒りをコントロールできるようになる方法を日本アンガーマネジメント協会の小尻美奈先生にうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

怒るのは「べき」が裏切られたとき

アンガーマネジメントとは、怒る必要のあることは上手に怒り、怒る必要のないことは怒らないようにすむようにすることを目標としています。

子どもが怒ってトラブルになったケースを例に、怒りの正体について考えてみましょう。

【子どもの怒りの正体はどこに隠れている?】

《case 1:友だちとけんかになった場合》

友だちと遊んでいたうちの子。いつの間にかおもちゃの取り合いになってしまいました。友だちがうちの子のおもちゃを使っていてなかなか返してくれず、怒って大げんかになったようです。その結果、友だちをたたいて大騒ぎに……。

《case 2:友だちが約束を破った場合》

友だちと公園で遊ぶ約束をしていたうちの子が、真っ赤な顔で怒って帰ってきました。約束の時間を過ぎても、友だちが来なかったのです。「もうあの子とは、絶対遊ばない!」と怒ってパニックになってしまいました。

怒りの正体は、子ども自身が持っている「~であるべき」です。「べき」という理想や願望、価値観などが裏切られたときに生まれます。そして、どのような「べき」を持っているかは子どもによって違います。

case 1で予想される「べき」の例

●友だちは、自分のおもちゃで遊ぶべきで、私のおもちゃで遊ぶべきではない
●友だちだけがおもちゃで遊ぶべきではなく、私と交代で順番に遊ぶべき
●友だちは、私が大切にしているおもちゃをもっと丁寧に扱うべき  …など

どの「べき」が裏切られたのか、この段階ではわかりませんね。

case 2で予想される「べき」の例

●友だちは遊ぶ約束を守るべき
●友だちは用事ができて遊べないなら、謝るべき
●友だちは遊びたくないなら、自分と約束をするべきではない  …など

これも、どの「べき」が裏切られたのかわかりません。子どもが怒っているときは、次の手順で声をかけてみましょう。

1.「本当はどうしたかった?」「何がいちばん嫌だったの?」と、声をかける
2.本人が気づいていない子どもの「べき(欲求)」を丁寧に聞き、言葉にする手伝いをする
3.「〜したかったのね/〜したくなかったのね」と受け止める

自分の「べき」を保護者が受け止めて「そうだったんだ」と共感してくれるだけで、子どもの気持ちは落ち着くことも多いです。

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子どもがヒートアップしているときは、まずはクールダウン

Case 1のように子どもが怒りで興奮している場合は、「べき」を聞き出す余裕がありません。そんなときは、まず、クールダウンさせる必要があります。子どもの気持ちをクールダウンさせる方法をご紹介します。

1.タイムアウト

その場を離れることを「タイムアウト」といいます。取っ組み合いのけんかになっている場合などは、まず、お互いの物理的距離を離すためにそれぞれを別の場所へ連れていきましょう。洗面所に行って手を洗う、キッチンに行って水を飲むなどの行動でもクールダウン効果があります。

2.深呼吸

深い呼吸をするとクールダウンできます。たとえば、風船を用意しておいて「怒っている気持ちを風船に吹き込むつもりでふくらましてごらん」というのも効果的です。とくに幼児の場合は、息を吸ったり吐いたりする行為を視覚的に体感できるものがオススメです。

3.グーパー

体を動かすことで怒りのエネルギーを発散できることがあります。手を握ったり開いたりするグーパーは子どもでもかんたんにできるのでオススメです。好みにもよりますが、折り紙や粘土遊びなどで気持ちを切り替えられる子どももいます。

4.呪文を唱える

自分の気持ちが落ち着く言葉を決めておき、怒ったときはそれを呪文のように唱えます。好きなアニメやゲームのキャラクターの決めゼリフなどがオススメです。

5.お守りに触る

お気に入りのぬいぐるみなど「これに触ると落ち着く」というお守りのようなものがある子どももいます。普段から親子で「怒りたくなったら、これを触って落ち着こうね」と話し合っておくとよいでしょう。

子どもに身につけてほしい、怒るときの3つのお約束

怒りは人間にとって大切な感情です。自分にとって大切な人やもの、たとえば人権を侵されたときなどは適切に怒らなくては自分を守れません。ですから、子どもには「怒ってはいけない」とは教えないようにしましょう。重要なのは、怒りをがまんすることではなく、上手に怒ることです。そこでまず、怒るときにやってはいけないことを子どもに伝えておきましょう。

《怒るときにやってはいけない3つのお約束》

1.人を傷つけない

たたく、蹴るなどの暴力や「バカ」などの人格を傷つける言葉を口にしない。

2.自分を傷つけない

怒ると自分の体を痛めつける子どももいます。怒りをがまんし続けるのも自分の心を傷つけることになります。

3.ものに当たらない

ものを投げつけたり、本などを破ったりする子どももいます。ものに当たると、一瞬すっきりするような気がしますが、問題が解決するわけではありません。すっきりを味わうと、怒りを感じるたびにすっきりを求めて、ものに当たるという行為がエスカレートしていく場合があります。

怒るときは、アイメッセージで

子どもに上手な怒り方を教える方法を次のケースを例にご紹介します。

【自分は何をどうしたいのかを言葉にする】

《case 3:友だちが借りた本を返してくれない場合》

友だちに本を貸したのに、なかなか返してくれません。「なんで、借りた本を返さないの!?」と猛烈に怒っています。

このような場合、保護者はまず、「あなたは、どうしたいの?何がいちばん嫌?」と聞いてみましょう。本人が「自分は何をどうしたいのか」に気づいて、それを言葉にすることが重要です。

●私は、あの本を読みたいのに、本がなくて困っている
●私は、あの本を大事にしたいのに、手元にないから悲しい
●私は、今週中に本を返してほしいと思っていた  …など

自分がどうしたいのかがわかったら、それを「私はこうしてほしい」というメッセージにして相手に伝えれば、感情的に怒ってトラブルになることを避けられます。この方法を「アイ(I)メッセージ」といいます。「なんで(あなたは)本を返さないの!?」と怒ると、主語が相手になり、相手を責めるだけで、問題は解決しません。たとえば「(私は)あの本を今週中に返してほしいと思っている」と伝えれば、本当にしてほしいことが相手にスムーズに伝わります。

また、このとき「すぐに返してほしい」と言うだけでは十分ではありません。「すぐに」「早く」などの表現は人によって受け取り方が違うので、「今週中に」など自分のリクエストを具体的に伝えることがポイントです。

このように、子ども自身が怒りの感情をコントロールするには、怒ったときに「自分はどうしたいのか?何をいちばん嫌だと思っているのか」を言葉にする習慣を身につけるとよいでしょう。まだそれが上手にできない子どもは、保護者が本人の気持ちや欲求をうまく言語化するトレーニングを手伝っていきましょう。

子どもが自分の怒りをコントロールできるようになるには、まずは自分の怒りの正体をを捉え、理解することが大切です。保護者が怒りの気持ちをうまくコントロールするコツを日ごろから子どもに伝えていけるとよいですね。

この記事の監修・執筆者

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会公認講師 小尻 美奈

幼稚園教諭を経て、現在は保育・教育分野を中心にアンガーマネジメント研修を行うほか、保護者向け講演会、子ども向け授業でもアンガーマネジメントを教えている。

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