【“お口ぽかん”に要注意】長引くマスク生活で口を閉じられない子が急増! 健康リスクも![医師監修]

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【“お口ぽかん”に要注意】長引くマスク生活で口を閉じられない子が急増! 健康リスクも![医師監修]

お子さんがぽかんと口を開けたままにしていることはありませんか? 今や当たり前となったマスク生活の影響があるかもしれません。口呼吸研究の第一人者、医師の今井一彰先生にお話をうかがいました。

イラスト/種田瑞子 文/こそだてまっぷ編集部

目次

「お口ぽかん」は“病気”!?

最近よく聞く「お口ぽかん」とは、安静時には本来閉じているべき口が開いたままになっている状態のことです。口呼吸をしているために口を閉じることができない、または、何らかの理由で口を閉じるのが難しい「口唇閉鎖不全症」の可能性があります。これは、食べる、話すなどの口の機能が十分に発達していないという病気「口腔機能発達不全症」のひとつです。

「お口ぽかん」の子どもが増えている!

長引くマスク生活の影響もあり、子どもの「お口ぽかん」が増えています。菓子メーカー「ロッテ」が2022年に実施した3~12歳の子どもの保護者215人を対象にした「お口ぽかん」に関する意識調査によると、保護者の70%以上が、「お口ぽかん」が慢性的に続くことが「口唇閉鎖不全症」という病気の可能性があることを知らなかったという結果が出ています。保護者たちに「お口ぽかん」が病気であるという意識が低いということがわかります。

口呼吸が体によくないわけ

「お口ぽかん」になっている子どもは、口呼吸になっています。人は安静時には、本来、鼻から息を吸って鼻から吐く鼻呼吸をしています(しゃべる、歌う、または激しい運動時など安静時以外は口で呼吸をすることがあります)。

鼻呼吸の場合、空気中の異物や病原菌は、たとえ吸い込んでも鼻粘膜の表面に生えている線毛(せんもう)や粘液、そして口の奥にある扁桃リンパ組織でとらえられ、体内に持ち込まないしくみになっています。また、鼻から吸い込んだ空気は鼻の中を通ることで温かく湿った状態で肺へと送られます。鼻は、いわば“加温・加湿機能つきの空気清浄機”なのです。

一方、口呼吸をすると、口の中が乾燥し、唾液による殺菌・消毒作用が発揮されず、細菌が繁殖しやすくなります。その結果、虫歯や歯周病、口臭といった口の中のトラブルが起きやすくなります。

≪関連記事≫【医師監修】なったらどうする? 子どものしもやけ

口呼吸の原因は?

口を閉じられない理由には、口周りや舌の筋肉の機能が低下していることが考えられます。その背景には、柔らかくて、あまりかまなくても食べられる食べ物を好む傾向や、昔のような口遊び(たとえば、口笛を吹いたり風車を回したりするような遊び)をする機会が減ってきたことなどがあります。

また、アレルギー性鼻炎や花粉症、蓄膿症(慢性副鼻腔炎)などで、鼻が詰まってしまう子どもが増えており、鼻呼吸ができず、それがきっかけで口呼吸になるケースもあります。

コロナ禍によるマスク生活で、子どもたちも息がしにくく、マスクの下で口を開いたままになっていることもあるでしょう。マスクのせいで口元が見えないこともあり、保護者がそれに気づきにくいという問題も浮上しています。

放置しておくとこんなリスクが!

「お口ぽかん」状態を放置しておくと、さまざまな悪影響を引き起こす原因になります。主なリスクは次の3つです。

1.インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、風邪などにかかりやすい

鼻から空気を吸い込む鼻呼吸であれば、病原菌を途中でとらえ、体内に持ち込むリスクを軽減することができますが、口呼吸では、ウイルスが体内に侵入したり、冷たく乾いた空気でのどや気管を傷めたりするリスクが高まります。その結果、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症に感染したり、風邪をひきやすくなったりします。

2.虫歯や歯周病、歯肉炎になりやすく、口臭の原因にも

口を開いている状態が続くと口の中が乾燥し、唾液の分泌量が減少します。唾液には虫歯や歯周病、歯肉炎などの原因となる口内細菌の繁殖を抑制する効果や、食べかすを洗い流す自浄作用があります。唾液の分泌量が減少することによって、虫歯や歯周病、歯肉炎のリスクが高まったり、食べかすなどのたんぱく質を洗い流す作用が低下し、たんぱく質を分解・発酵する過程でガスが発生し、口臭の原因になったりします。

3.歯並びが悪くなる

口呼吸をしていると、舌を正しい位置で維持することができずに、舌があごのほうに下がってしまいます。すると、舌先で前歯の裏を押すことになり、前歯に過度な圧力がかかって、いわゆる“出っ歯”“受け口”の原因となります。また、歯がまっすぐに生えそろうのに必要なあごの成長を、下がってしまった舌が妨げ、歯並びがデコボコになることもあります。

↑左が舌の正しい位置。口呼吸をすると舌の位置が下がってしまい、舌先で前歯の裏を押してしまう。

ほかにも、小児期には口呼吸が原因でアレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、中耳炎や副鼻腔炎などを引き起こす場合もあります。副鼻腔炎による鼻づまりで、集中力や学習意欲の低下も懸念されます。

さらに、幼少期から成長期にかけて「お口ぽかん」状態を続けていると、顔の形に影響が出ることもあります。口周りの筋肉やあごの発達不全により、顔のゆがみなどが生じる可能性もあります。

おうちで子どもの口呼吸をチェック

子どもが口呼吸をしているか、鼻呼吸をしているかを保護者が日ごろから子どもの様子をよく観察して早期に発見し、対処することが重要です。まずは、下記の項目をチェックしてみましょう。

うちの子、もしかしたら口呼吸? 保護者ができる子どもの口呼吸チェック

□ いつも口を開けている
□ 食べるときにクチャクチャ音を立てる
□ 歯のかみ合わせが悪い
□ 唇がよく渇いている
□ 口臭が強い
□ いびきをかく

上記の項目のうち、2つ以上当てはまったら、子どもが口呼吸をしている疑いがあります。口を閉じることがうまくできない「口唇閉鎖不全症」は歯科の病気ですので、まずは小児歯科に相談してみましょう。

子どもの「お口ぽかん」は、その後の発達や成長に大きく影響します。マスクのせいで子どもの口呼吸に気づきにくいこともありますので、保護者が早めに適切な対応をしていきましょう。

この記事の監修・執筆者

みらいクリニック院長 今井一彰

NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長。山口大学医学部卒業。息育(そくいく)、口呼吸問題の第一人者として全国の園や小学校から行政・企業などまで幅広く講演を行う。著書に『免疫を高めて病気を治す口の体操「あいうべ」』(マキノ出版)など。

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