“ことばのシャワー”浴びせすぎもNG?コミュニケーション能力がアップする「ことばの育て方」とは?【言語聴覚士・監修】

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“ことばのシャワー”浴びせすぎもNG?コミュニケーション能力がアップする「ことばの育て方」とは?【言語聴覚士・監修】

お子さんの「ことばの発達」で悩んだり、他の子と比べて不安を感じたりしているママパパは多いのではないでしょうか?

一番大切なのは、お子さんの個性に合わせて、焦らず、無理せず、親子で楽しみながらことばを身につけていくこと。

今回は、「ことばの相談室ことり」主宰の言語聴覚士・寺田奈々先生に、親子で楽しみながらできる“ことば育て”についてお話を伺いました。

お話:「ことばの相談室ことり」主宰・言語聴覚士 寺田 奈々

目次

「ことば育て」で大切な3つのこと

ことばを覚え、ことばを発するようになるには、身体の発達脳の発達、そして心の発達が必要。「ことばを覚えさせなきゃ」という思いばかりに捉われてしまいがちですが、まずは焦らず、「ことば育て」における土台を作っていきましょう。

スキンシップ

スキンシップを十分に行うことで「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。

「オキシトシン」は、「安心」「癒し」「愛情」ホルモンともいわれる重要なホルモン。

これらが満たされていることで、精神や脳の安定に効果があり、

それがお子さんの情緒を安定させ、ことばの育ちにつながっていくとされています。

おすすめのスキンシップ

抱っこ、おんぶ、手をつなぐ、背中をさする、ぎゅっと抱きしめる など

規則的な生活リズム

ことばとは直接関係がないと思われがちですが、

  • 規則正しい生活リズム
  • 体を十分に使った運動
  • 手を使った活動
  • 思いきり楽しく遊ぶこと

などの上に言葉の育ちは成り立ちます。

「規則的な生活リズム」が身につくと、一日の流れが分かり、”見通し”が立ちます。すると、身の回りのことばに繰り返し触れることができるので、身近にあることばにより注目が向きやすくなります。

また、「体の発育や手指の発達」は、しゃべるための呼吸やのど、口の発達とも大きく関わっており、「楽しく遊ぶ」ことは、ものごとへの興味関心を育み、新しい言葉の獲得を促すとされています。

これらのことを習慣づけることで、健康な心身を作り、ことばが育まれていくのです。

③ 絵本

4歳を過ぎると、日常生活で使う表現の多くを獲得できるようになり、おしゃべりに困ることが少なくなります。しかし、それ以外の新しい表現に出合っていくことが”ことば育て”には大切です。「絵本」をいっしょに読み、新しい表現に触れる機会を設けていきましょう。

「季節の行事」や「イベント」などの特別な体験、「昆虫」や「恐竜」、「乗り物」、「プリンセス」など、お子さんが興味をもつ世界を深めることで、ことばがぐんぐん育っていきます。

無理のない範囲で構いません。親子で読書を楽しむ時間を作りましょう。

やってはいけいない”ことば”のNGサポート

①【×】発音の間違いを指摘する

子「うちゃぎ!」
親「違うでしょ、う・さ・ぎ」

舌足らずなおしゃべりは、とてもかわいいものですが、そのままにしておいて大丈夫かと、心配になる親御さんも多いのではないでしょうか。しかし、発音の間違いばかりを指摘してしまうと、「家族との会話」が楽しくなくなり、「ことば」を発する数が減ってしまう危険性があります。

話し始めの時期には発音が不明瞭なことがほとんどですが、5~6歳くらいにはとても上手な発音でおしゃべりできるようになるケースが多いです。発音の誤りは無理になおそうとせず、

子「うちゃぎ!」
親「うん、うさぎさんだね」

のように、正解をさりげなく聞かせるのがポイント。

親子の楽しい会話は、子どもの「おしゃべりが好き!」「もっと話したい!」という気持ちにつながり、話す機会の積み重ねが、自然と発音を整えていきます。

②【×】「ことば」をお勉強のように特訓する

「ことば」をお勉強のように特訓することも、幼いうちには避けたいもの。

必ずお子さんが興味関心をもったものから始めましょう。

お子さんが注目したもの、興味を示したものから、お話を引き出し大人がたっぷりお手本を見せることがとても効果的です。

個人差はありますが、平均すると4歳くらいまでが「目の前で起こっていること」について話す力を育む時期。大人からの脈絡のない唐突な話題の提示や転換には、ついていけません。

△ 親「あ! 見て見て! バスが来たよ、“バ・ス”だね」
○(地面を指さす子ども) ⇒ 親「ありさん、いるね~」

大人が誘導するよりも、子どもが関心を向けていることがらに声かけをするほうが、子どもから「ことば」をたくさん引き出すことにつながっていきます。

③【×】ことばをかけすぎる

ことばの力をつけるために、大量のことばをかければよいかといえば、実はそうではありません。

なぜなら、お子さんが一度に覚えていられることばの数は、年齢±2つくらい

3歳なら1~5個 くらいなのです。
【例】(1)はるくん、 (2)いっしょに (3)お靴 (4)履こう

よかれと思って浴びせたたくさんの「ことば」のシャワーが、子どもにとってはただの雑音に…、といった状況にもなりかねません。たとえるなら、外国語の映画を字幕なしで見ているイメージです。

まずは、一度にかけることばの数を厳選して、ゆっくりと伝えることから始めてみましょう。

言語聴覚士から教わる、ことばを育むマル秘テクニック!

Point1.注目を引きつけてから、話しかける!

「ことば」は耳から入ってきますが、<聴く力>は生まれてから少しずつ育っていくため、幼いうちは未熟です。

話しかけるときはお子さんがこちらを振り向いて、「お子さんの聴く姿勢が整ってから」が基本。

お子さんに話しかけるときは、以下のポイントを心がけましょう。

  • 見てほしい物を見てから
  • 目が合ってから

Point2.4歳ごろまでは、”今”起こっていることがらの会話を大切に

4歳ごろまでは、“目の前にある・今起こっていることがら”について話すのが得意です。新しい表現はその場で学んでいくので、その瞬間の会話を大切にしましょう。

過去のできごと・未来の予定についてのお話は、頭の中にイメージをむくむくと呼び起こす必要があり、幼い子どもにとっては難しいものです。

過去・未来について話すときは、なにかヒントや手がかりになるようなものを用意するといいですね。

  • 過去の写真や動画を見ながら
  • 遠足に持っていく持ち物などを準備しながら など

Point3.会話は「交代」で「同じ量」で話す

どちらかが一方的にたくさん話したり、言いっぱなしで終わったり、コロコロ話題が変わっったりしてしまうと、ことばは育っていきません。まずは2つのことを意識してみましょう。

交代

交互に行う会話は、あらゆるコミュニケーションの基礎になります。

子「あい、どーぞ」
親「ありがとう!」
子「とういたまって」
親「○○ちゃんも、はい」
子「あいあと」

同じ量

同じことばの量を意識してお子さんのおしゃべりを引き出していきましょう。

【△な例】

子「あい、どーぞ」
親「わあ!おいしそう!おみそしるだね。○○ちゃんが作ったの?」
子「…」
親「栄養たっぷりだね!ニンジンも入ってる!ママの分もたっぷりあってうれしいな~」

【○な例】

子「あい、どーぞ」
親「わあ!おいしそう!」
子「おみそしる!」
親「あったかいな~」

◆さりげなく「つけ足し」を加えてもOK。
子「パパ くつ!」
親「パパくつ そこだよねえ
子「たっくん あっち!」
親「たっくんのは あっちだね

ことばを育てることは、”子どもの成長”のココにつながる

コミュニケーション能力がアップする!

「伝えたい想い」「ことばの力」は、互いに引き出し合う関係にあります。

伝わるとうれしくてことばを学ぶモチベーションに

ことばを学ぶと、より伝えたい!(わかりたい!)と思うように

という連鎖が生まれるからです。

「伝えたい想い」が育っていくことも非常に重要です。

思考力が育まれる

わたしたちは頭のなかで、たくさんのことばを使って考えます。幼いうちは、ことばをひとりごとのように発していますが、その過程を経て、自分のことばが増えてくからこそ「どうして〇〇なんだろう」「○○にしてみよう!」と頭の中で考えられるようになってきます。

こうして、幼児期の言葉の発達は、学齢期の学習の土台になっていくのです。

注意したいのは、国語や算数などの小学校で習う教科学習を先取りする必要はないということ。むしろ母語で「聴く」「話す」といった力をしっかりとつけていくことが重要です。

気をつけたい子どものサイン

1歳半健診では「指差しが出ているか」、3歳児健診では「ことばをつなげて2語文~3語文でお話ししているか」を確認されますが、ことばの発達は、“ことば以外の要素も含めた複数の力”が絡み合った先に育まれるもの。

上記以外にも次のような指標を目安にするとよいでしょう。

ことばを話す前

  • 喃語(なんご)や声を出している
  • 声で感情を伝えたり、目配せで意思を伝えようとする
  • 相手の指差しや視線、触れ合い(タッチ)のサインをキャッチすることができる

ことばを話し始めの時期

  • ことばが少しずつ増えている
  • 名詞以外のことば(動詞、形容詞、「ゴシゴシ」や「シュッシュ」などのオノマトペ)も増えている

文で話し始めの時期

  • 大人の口ぶりをまねしたりして、ことばを発することが増えてきた

複数の文を組み合わせて話し始める時期

  • 身の回りのことや生活について、ことばで伝えたいという気持ちが育ってきている

もし、気になる項目があったら、かかりつけの小児科医や地域の健康診断のときなどに相談してみましょう。

なな先生からのメッセージ

「ことばは、つらく苦しい努力によって身につく」

というイメージを持っている方がいたら、それは誤りです。

子どもは、たっぷり甘え、スキンシップのある安心な環境を基地に、楽しく驚きに満ちた体験を通じて、好奇心を育んでいきます。

そして、興味関心を持ち、わかりたい・伝えたい・自分でも使いこなしてみたいというわくわくした気持ちが、ことばの発達につながっていくのです。

そのためには、周囲の大人も楽しんで「ことば育て」をすることが大切です。

本人の素質と環境の相互作用によってことばは発達していきます。ことばを学ぶには、たくさんの大人の手助けを必要とします。

焦らず

無理せず

楽しみながら

生活のなかに少しずつ取り入れていってください。

この記事の監修・執筆者

「ことばの相談室ことり」主宰/言語聴覚士 寺田 奈々

総合病院、プライベートのクリニック、専門学校、区立障害者福祉センターなどに勤務し、年間100症例以上のことばの相談・支援に携わる。臨床のかたわら、「おうち療育」を合言葉にコトリドリルシリーズを製作・販売。専門は、お子さんのことばの発達全般・吃音・発音指導・学習面のサポート・失語症・大人の発音矯正。

ことばの相談室ことりHP
https://stkotori.com/

Instagram
https://www.instagram.com/stkotori/

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