6月18日(日)は父の日です。
そこで今回は「お父さん」にまつわる絵本を紹介したいと思います。
絵本のセレクトは、絵本専門士で絵本セラピスト®の鳥山由紀さんです。
6月第2回
「お父さん」がテーマの絵本
◆2~3歳向け! 『パパのぼり』
作/きくち ちき 1,100円(税込) 文溪堂
【あらすじ】
ぶうんぶうん、と、くまちゃんがおもちゃのバスを走らせ、走ってのぼってお山のてっぺんを目指します。途中すべって転んで、がんばれがんばれ、と励ましながらさらにのぼっていきますが、なかなかけわしい山のようです。「ついたついた」とそのお山は、パパでした。パパの頭に着いたところで、今度はパパすべり。のぼっておりて「パパもういっかい」。
【オススメポイント】
おもちゃのバスを走らせながら、パパの体をのぼっていくくまちゃん。バス目線で、パパと遊べるのがうれしくて楽しくて仕方ない様子。頭の上に到着すると、「次は? 次は?」とせかされるパパ。さぁ次は「パパすべりーー!」
くまちゃんを見守るパパ、いっしょに遊べるのがうれしくて楽しそうなくまちゃんの様子に、読んでいるこちらまで幸せ気分になってきます。親子で読めば、お子さんもきっと楽しくて安心な世界に入り込んでいきますよ。いっしょに絵本を読んだあとは、ぜひ「パパのぼり」を実践してみたいですね。裏表紙のパパとくまちゃんの様子も、ほのぼのしてあたたかい空気感がただよっています。
◆3~4歳向け! 『パパ、お月さまとって!』
作/エリック・カール 訳/もり ひさし 1,760円(税込) 偕成社
【あらすじ】
月のきれいな夜、モニカはパパに「パパ、お月さま とって!」と言います。
パパはながーいながーいはしごを持ってきて、たかーいたかーい山へ運んでいき、大きなお月さまのもとへ。こんな大きなお月さまは持って帰れない、と言うと、小さくなってから持って帰るといい、とお月さまが言います。パパは小さくなったお月さまを持ち帰り、モニカに渡しますが、モニカがお月さまと遊んでいると、ある日パッとその月が消えてしまいました。
【オススメポイント】
ながーいはしごがたかーい山にかけられる部分や、パパが大きな大きなお月さまに着いた部分がしかけになっていて、横にグイッと、縦にビューンと、大きく開いて迫力満点。しかけを開いた瞬間、お月さまに手が届きそう! と、絵本の世界に入り込んだようでわくわくします。
お月さまを持って帰ってきてくれたパパが、なんとかっこよくたのもしく見えるのでしょう。こんなパパ、大好きになっちゃいますね。
色の美しさにも引かれます。我が家の子どもたちは、しかけ部分を開くのが大好きで、何度も開いて閉じて開いて閉じて。実際にお月さまを見るのも大好きでした。絵本を読んだら、もちろんパパといっしょにお月さまを見に外に出てみましょう。「パパ、お月さまとって!」とかわいい無理難題を要求されてしまうかもしれませんね。
◆4~5歳向け! 『えいっ』
作/三木 卓 絵/高畠 純 1,320円(税込) 理論社
【あらすじ】
父子で町へ買い物に。お父さんが「えいっ」と言うと、信号が青に。「えいっ」と言うと星が出てきて、「えいっ」と言うと切符が出てくる。お父さんはなかなかやるもんだ、とくまの子は思います。くまの子は、お父さんがどうやって「えいっ」としているのか、わかっているのかいないのか、自分もやってみたいと、家路につきます。家に帰り、玄関のチャイムを「えいっ」と鳴らすと…宣言どおり、くまの子のいちばん好きな人が出てきました。
【オススメポイント】
これは作者の三木卓さんがご自身のお子さんとの散歩中のやりとりを元に書かれたそうですが、我が家も子どもが小さいころ、まったく同じことをやっていました。「なんだか変だな」と思いながらも、子どもはその遊びをいっしょに楽しんでくれます。ぼくもお父さんみたいになりたいとくまの子。そのためにはしっかり勉強するようにと言われると、「しっかり勉強する!」と誓います。
でも、最初は「お父さんすごい!」と思っていたのが、だんだん、あれ? なんだか変だぞ、と思いつつ、子どもはいろいろ考えるんですね。そして自分なりの「えいっ」をちゃーんと発見していくのです。このお話は、最後はお母さんも含めてほのぼのとしたハッピーエンドなので、読んだあとも、親子で幸せな気分になります。身の回りでいろいろな「えいっ」を試してみてください。
◆大人向け! 『ボクサー』
作/ハサン・ムーサヴィー 訳/愛甲恵子 1,980円(税込) トップスタジオHR
【あらすじ】
ハートが2つ刺しゅうされた、父さんが残した形見のグローブ。そのグローブをはめて、ボクサーは打って打って打ち続けます。町の人気者のボクサーになったあとも、打って打って打って、何もかもを打ち崩し、何年もがたっていました。ボクサーは立ち止まり、独りぼっちの自分に向き合います。「どうして父さんはボクシングを教えてくれたのだろう」。母さんのハートの刺しゅうを通じて父さんの思いを感じながら、またボクサーは打ちます。ある日、出会った少年にボクシングを教えてほしいと言われますが、ボクサーは何を教えるのでしょう。
【オススメポイント】
父さんが残したグローブでやみくもに打ち続けるボクサー。でもあるとき、ふと立ち止まり考えます。ボクシングを教えてくれた父さんの思い、グローブにハートの刺しゅうを入れた母さんの思い。みんなの笑顔のために打ち続けた父さんの思いに気づいたとき、ボクサーのパンチは変わります。みんなのために、みんなのためにと打つボクサーは、少年に何を教えるのでしょう。
一人で鍛え抜くボクサー、みんなの人気者だったボクサー、雪の中打ち続けるボクサー…、絵を見ていると、その一途な思いやひたむきさがひしひしと感じられます。
大人になった自分が、こぶしにどんな思いを込めることができるのか、実際にボクシングをしなくとも、父や母の自分に向けられた思いについて、あらためて考えさせられます。大人が読んで感じて考えることのできる1冊です。
次回、7月の「こそだてまっぷの絵本棚」の絵本セレクトは、絵本講座主宰、JPIC読書アドバイザーの大久保徳久子さんです。お楽しみに!
この記事の監修・執筆者
(プロフィール)
絵本専門士4期生。絵本セラピスト協会認定絵本セラピスト®。大人・子どもを問わずお気に入りの一冊を見つけてもらえることを思い、絵本に関する講演や執筆、絵本講座の開催、読み聞かせなどを行う。また、箏奏者との絵本の読み聞かせユニット「ことえほん」での公演活動、大学での認定絵本士養成講座講師も務める。
(ブログ)
https://ameblo.jp/ehonrahen/
(ことえほんfacebook)
https://www.facebook.com/kotokotoehon/
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