子どもに「本を読むことを好きになってほしい」と願っている保護者は多いでしょう。
でもそもそも、本を読むことのよさって? 読書習慣が身につくと、子どもにとってどんな育ちが期待できるのでしょうか。
千葉経済大学短期大学部こども学科 教授の横山洋子先生にお話をうかがいました。
お話/横山洋子(千葉経済大学短期大学部 こども学科 学科長 教授)
読書のもっとも大きな効果は「人生が豊かになる」こと
本を読むことで得られる力や効果はたくさんあります。
●知識力
●想像力
⇒想像力が身につくと、すでに知っている知識をもとに予測したり、考えたりする力が身につきます。また、思いやりも想像力の育ちから生まれます。
●集中力
⇒読む力や読解力にもつながります。
●語彙力
⇒言葉が増えると、伝える力やコミュニケーション能力も高まります。
なかでも覚えておきたいのは、「読書をすれば世界が広がる」ということです。
本の内容を疑似体験することで、体はその場にいながらにして、旅をしているのです。
本を読むかたなら、経験したことのある感覚かもしれませんね。
また、自身の成長だけでなく、登場人物と共に経験を重ね成長できるため、読書習慣を身につけると、人生がより豊かになるといえるでしょう。
読書の習慣は何歳までに身につけたい?
読書で得られる力についてお伝えしましたが、力をつけるために子どもに本を読ませようと躍起になるのではなく、まずは子どもが読書の楽しさを知ることが何より大切です。
自分で文字を続けて読めるようになる小学1、2年生ごろは、教科書などでも本に触れる機会が多くなるので、読書習慣を身につけるには理想的な年齢です。
ただし、人によって状況はさまざま。ですので、「本を読むって楽しい!」と、その子が思ったときが、読書習慣を身につける適齢期です。
「小学校の低学年を過ぎたから」「今読まないから」といって、「うちの子は本が好きじゃないのね」と諦めないでくださいね。それは、お子さんにとって「楽しい」「おもしろい」と感じる本にまだ出合っていないだけです。
子どもが「おや!」と思えるような楽しい本に出合えるよう、いろいろな本が手に取れる環境を準備していきましょう。
子どもが本を読みたくなる仕掛け作り
子どもが本好きに育つために、家庭でできる工夫を紹介します。
《その1》保護者が本を読む姿を見せる
保護者が本を読む姿を見ることで、子どもは「いつかは自分も読みたい」とあこがれをもちます。
本に触れる環境を増やすことにもつながりますので、リビングに家族の本棚を置くことをオススメします。
大人の本、子どもの本、辞典や図鑑、雑誌、絵本やアルバム、借りてきた本などなんでもかまいません。
保護者が読むものも雑誌や子ども向けの本でもよいですし、忙しくて毎日は読めないという場合は、週末だけ、10分だけなどでもOK。
1日のなかでテレビを消して“読書タイム”をつくるのもひとつの方法です。
《その2》図書館に行く
貸し出し期間に合わせて、親子で2週間に1回、図書館に通うとよいでしょう。
図書館にはさまざまなジャンルの本があるので、わくわくして、子どもが興味のある本を見つけられます。
本は子ども自身に選ばせましょう。
興味があるものを探し出せない場合は、人気の本をピックアップしたり司書のかたに尋ねたりしてください。
その際も、何冊か候補を挙げたら、そのなかから選ぶのは、あくまで子ども自身です。
《その3》子どもが本を読んでいたらほめる・認める
本を読むことは、子どもが世界をどんどん広げている証拠です。
お子さんが本を読んでいたら、ぜひ「あなたが本を読む姿を見ると、お母さんは・お父さんはうれしい!」とほめて、認めてください。
気をつけたいのは「読みなさい」と子どもに読書を強制すること。
“楽しい”から離れる関わりは、避けたいものです。
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本を手に取れる環境にいなければ、本を読む機会はなかなか訪れません。
もし、今、保護者に読書習慣がなくても、子どもが小学校の低学年以降でも、まだ間に合います。
●子どもが興味のあるジャンルの本に出合えるようにする
●「読んでみようかな」と思った際に手に取れるよう、身近に本がある
この2点を意識して、ぜひ今から取り組んでみてください。
今の環境を突然、ガラッと環境を変えてもかまいません。
「お母さん・お父さん、本が好きになったから、ここに本棚を置くね」「○○ちゃんの好きな本もここに置こうね」「一緒に図書館に行ってみよう」と伝えてみてください。
それに、小学校1、2年生は、まだまだ読み聞かせをしてほしい時期。
文字が読めることと、文章を理解しながら読み進めることはまた別です。
子どもに断られるまでは「いっしょに読もう!」と誘って読み聞かせもして、お子さんとの時間を楽しんでください。
この記事の監修・執筆者
富山大学教育学部附属幼稚園・教諭、富山市立古里小学校、富山市立鵜坂小学校・教諭を経て、現在は千葉経済大学短期大学部こども学科の教授を務める。著書には、『保育者のためのお仕事マナーBOOK』、『保育に生かせる!年中行事・園行事ことばかけの本』、『毎日のちょこっとあそび』(学研)などがある。
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