多感になる年頃の“入り口”にいる小学3・4年生の子どもたち。低学年までとは“悩みの質”が変わってくるこの頃の繊細な子どもの悩みに、保護者はどう向き合えばよいでしょうか。
友だち関係・恋愛相談・性への疑問など、子どもと向き合う保護者の悩みに対し、助産師で性教育YouTuberのシオリーヌ先生にお話を伺いました。
取材・文/こそだてまっぷ編集部
【相談①】女子グループの友だち関係の悩み
相談者
「女の子の数人グループにいる娘。最近、中心的存在の子と友だち関係がうまくいってないようで、学校に行きたくないと言います。どう接すればいいでしょうか?」
シオリーヌ先生
まずは「学校に行きたくない」と伝えてくれたお子さんに「悩んでいることを話してくれてありがとう」と伝えてあげてください。悩んでいることを親に話すのは、とても勇気がいること。思いを打ち明けてくれたことに感謝しましょう。
「これからはいっしょに考えられるから、悩みを話してくれてよかったよ」と伝えると、お子さんもホッとするのではないかと思います。
そのうえでこの場合は、学校に行きたくないなら「行かない」という選択肢もあってよいと思います。今はお子さんの心を守るために“休む”・“別の場所に行く”という選択肢も考えておくことが必要かもしれません。
いちばん大切なことは“お子さん自身がどうしたいか”です。その気持ちに寄り添ってサポートできるとよいと思います。
このとき、保護者が過度に心配したり、ショックを受けたりする様子をお子さんに見せてしまうと、「こんなに悲しませちゃうんだ……」となり、相談しづらくなってしまう可能性もあります。できるだけ落ち着いて受け止め、いっしょに考える姿勢をとれるとよいでしょう。
【相談②】「告白したい!」恋愛の悩み
相談者
「子どもがクラスの子に告白しようとしているけれど、友だち関係がややこしくなると思うのです。止めるべきでしょうか?」
シオリーヌ先生
保護者の立場からすると、その後の人間関係が心配になってしまいますよね。お子さんを心配するが故の悩みかと思いますが、これはお子さんの人間関係のお話。どうするか決めるのは、お子さん自身です。
もしお子さんから「告白したいけれど、どう思う?」と相談をされたなら、「あくまで自分(保護者)の意見としてはこう思うけれど、最後は自分で決めるのがいいんじゃない?」というようなニュアンスで、保護者といえど、いち個人の考えとしてアドバイスしてみるのはいかがでしょうか。「もし告白したあとにまた悩みができたら、なんでも相談してね」と伝えておくこともよいでしょう。
【相談③】恋愛&性描写のある作品との付き合い方についての悩み
相談者
「恋愛をテーマにした小説やマンガに興味津々の我が子。一応小学生向けとはいえ、あまり勧めたくありません。かといって今後、恋愛や性描写のあるマンガなどを隠れて見るようになるのも避けたいです。どのように対処するとよいですか?」
シオリーヌ先生
ひとつ明確な線引きができる基準としては、アダルトコンテンツとされるものは年齢制限(18歳未満はNG)があるので、「これは子どもは見てはいけないものだよ」ということを、きちんと伝えましょう。
そのうえで、“小学生向け”とされる作品であれば、保護者が厳しく制限する必要は、そこまでないのかな…と私個人は感じます。保護者がダメと言っても、友だちの家や、どこかで見るんじゃないかな(笑)。
とはいえ、最近は小学生向けのマンガといっても、壁ドンや無理やりなキスシーンなど、保護者からすると小学生には少し刺激が強めでは?と感じる描写もあるかと思います。そして、そういうシーンが作品の中で、ときめくシーンとして描かれていたりもします。
そうしたリアルでしたら性暴力になるような描写については、実際の人間関係のなかではマネしてはいけない、ということを伝えていけたらよいのではないかと考えます。
作品をいっしょに読んで子どもとコミュニケーションを取るというのも一つの方法かもしれません。「最近どのマンガが好き?お母さんも読んでみたいな」と貸してもらったり、親目線で懸念する部分を確認しつつ「(突然キスされるシーンなどをさして)この男子と女子は好き同士だからいいかもだけど…そうじゃなかったら結構怖いかもね」などと言い合いながら、意見を交換してみることもできそうです。
【相談④】異性の親子、お風呂の悩み
相談者
「親子ですが異性の場合。いっしょにお風呂に入るのはいつ頃まで? また、保護者の体(性器)を見て興味を持ち始めています。どう接すればよいですか?」
シオリーヌ先生
そもそもどうして子どもとお風呂に入っているか?というと、「子どものからだを清潔に保つため。保護者は必要だから手伝いをしている」と、私は考えています。
本来とてもプライベートな空間であるお風呂に一緒に入るのは、「からだを自分ひとりで洗えるようになるまでの例外的な期間」。そう考えるとお子さんが自分自身できれいに洗えるようになったらいっしょには入らない、ということが、ひとつの基準といえそうです。
また、いっしょに入っていても、プライベートゾーンを守ることは大切。親のプライベートゾーンに無断で触れようとしたりする時には「プライベートな部分だから勝手に触っちゃいけないところだよ」と伝えてあげましょう。
昨今では、子どもを対象とした性加害も多く聞かれます。そういう観点からも、子ども自身のプライベートゾーンを勝手に見られたり触られたりすることは絶対にダメなことで、勝手に触ってくる人がいたらイヤだと言っていいし、周りの人に助けを求めていいんだよ、ということを伝えていくことも大切です。
また、保護者のからだを見て性器の仕組みに興味を持ち始めたなら、絵本や性教育の本をいっしょに読みながら勉強するということも、よい学びの機会につながるでしょう。
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【相談⑤】子ども自身の外見についての悩み
相談者
「体格が大きめのうちの子は“ビッグ”とあだ名で呼ばれ、傷ついています。ギャグのように受け取ってきたので周りの子も悪気は無いようです。学校内ではあだ名禁止なので、うちわで言われています。どう接すればよいでしょうか?」
シオリーヌ先生
外見をとやかく言う行為は、子ども・大人、誰に対しても、その人のありのままで生きる権利を侵害することになります。そして我慢することは本当に辛いことです。
まずは、お子さんがどうしたいかを聞くところからはじめましょう。例えば、次のような選択肢が考えられます。
1学校の先生に相談する
2相手のお子さん・親御さんと直接話をする
3子ども自身が大ごとにしたくない場合、少しでも気持ちが軽くなるよう話を聞く等して支える
……など。
「あなたはどうしたい?」と、聞いてみてください。
もし、大人が介入してやめさせてほしいということなら、1や2の方法で全力でサポートしましょう。
この時に気をつけたいことは、親が勝手に動いてしまうこと。子どものためと思って先回りし過ぎると信頼関係が崩れてしまう可能性もあるので、まずは「伝えてくれてありがとう」と感謝し、いっしょに解決方法を考えていきましょう。
【相談⑥】女の子の服装についての悩み
相談者
「短めのふわっとしたスカートや、肩の出た露出多めのデザインの服を、学校に着ていこうとします。ファッションに興味を持っているけれど、どこまでやらせていいのでしょう? 」
シオリーヌ先生
学校の校則で特に決まりが無いようでしたら、基本的には本人のしたい服装を尊重してあげて、よいのではないかと思います。
一方で、女の子を対象にした性加害も多い世の中。本来はどんな格好をしていても安全であってほしいですが、そういう事件も実際にあるので、心配に感じてしまう保護者の方の気持ちもわかります。ですので、そんな事情も踏まえて、服装について保護者が何を心配しているのかを伝え、相談をする形で話をしてみるとよいでしょう。
例えば「“親といっしょにいるとき”は、守ってあげられるから好きな服装でいいけれど、“登下校・習い事・塾・公園遊びなど、ひとりで行動するとき”は危険な目で見られる可能性があるから心配に思っちゃうよ、どう思う?」と。「こうしなさい、やめなさい」ではなく、あくまでお子さんの意見に耳を傾ける形で、お話をしてみてください。
ここまで子どもについて保護者の方のさまざまな悩みがありました。いずれも、子どもも対等なひとりの人だということを念頭に置いて、コミュニケーションを取ることが大切です。
子育ての中で保護者ができることは、選択肢を与えてあげること。その先にまた悩めることがあったときには、全力でサポートする――これが、保護者の権利の範囲の中でできることなのではないかなと思います。
この記事の監修・執筆者
助産師として総合病院産婦人科病棟での勤務ののち、精神科児童思春期病棟で若者の心理ケアを学ぶ。2017年より性教育に関する発信活動を始め、2019年2月よりYoutubeチャンネルで動画投稿を開始する。著書に『こどもジェンダー』(ワニブックス)、『やらねばならぬと思いつつ〈超初級〉性教育サポートBOOK』(Hagazussa Books)などがある。
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