子どもの行動のなかには、気になる点が見られることがあります。まばたきをする、鼻を鳴らす、爪かみ、髪いじり、指しゃぶり、鼻ほじり…などなど。適切な処置が必要なものもあれば、心配のいらないものまで千差万別。今回はとくに子どもの気になる行動について、原因、対処法などを、みやのこどもクリニックの宮野孝一先生にお伺いしました。
監修 宮野孝一(みやのこどもクリニック院長) 文/こそだてまっぷ編集部
—「チック」と「癖」のちがいはなんでしょうか?
「チック」は無意識、「癖」は意識的
「チック」は無意識での突発的な体の動き、発声が繰り返し起きてしまう疾患で、4~11歳ごろのお子さんに多く見られます。
「まばたきをする、顔をしかめる」「口をゆがめる、舌を出す」「首を左右に振る」などの「運動チック」、「咳払い」「鼻や舌を鳴らす」「叫ぶ」「単語を連発する」などの「音声チック」があります。
癖には、「指しゃぶり」「髪いじり」「歯ぎしり」「爪かみ」「性器いじり」などがあります。これらをしていないと落ち着かない、イライラしてくる。こういう行動をしているときが心の安らぎにもなるため、意識的な行動です。
—「チック」や「癖」への対処法はあるのでしょうか?
「チック」も「癖」も見守って
「指しゃぶり」「髪いじり」「歯ぎしり」「爪噛み」「性器いじり」などの、いわゆる「癖」は病的なものではないので、長い目で温かく見守るのが一番です。無理にやめさせる必要はありません。ある程度の年齢になると、恥ずかしくてやめていきます。
「チック」も多くは自然に治りますが、どうしても気になるなら医療機関に相談しましょう。
—どんな行動の場合、注意が必要でしょうか?
不快感、不安感からくるものは注意して
不安や心配を強く感じているなどの脅迫観念が強いものは要注意です。たとえば「一日のうちに必要以上に何度も手を洗わなければ落ち着かない」「常に同じ道を通らないと気が済まない」「うそをつく」などの行動が顕著な場合は医療機関にかかってほしいですが、そうでなければ様子を見ていいでしょう。
—「チック」や「病的な癖」が起こる原因はなんでしょうか?
強い不安や緊張、疲れなどで起こる
主に、ストレスや不安、緊張、疲労などが原因で起こります。たとえば「保育園が替わった」「担任の先生が替わった」「仲のいい友だちから仲間外れにされた」などです。これは、心身ともに落ち着いてくると改善していきます。
そのほか、長時間のテレビゲームなどの環境要因でも起こることがあります。
—「チック」や「病的な癖」が出ないように家庭でできる予防策はありますか?
子どもの心が安定していられるような環境づくりを
日ごろから、「家庭円満」「規則正しい生活」「親子でよく会話をする」「余暇を子どもと遊ぶために時間を充てる」ことなどを心がけてください。
—すでに症状が出ている場合は、家庭でできるケアはありますか?
とにかく見守り、ほかのことで興味を引く
ストレスを減らすために環境調整をする必要がありますが、チックや癖などの症状に対して、注意したり、怒ったり絶対にしないであげてください。なるべく、ほかのことに興味を持たせるようにして対処しましょう。
さらに、園や学校の先生には包み隠さずお話をして、日ごろの行動を注意深く見てもらうようにできるといいですね。
—それでも治らず医療機関に相談したいときは何科に相談したらいいでしょうか?
「児童精神科」「子どもの心相談」で受診を
できれば「児童精神科」が望ましいですが、「子どもの心相談」の診療をしている小児科医でもよいでしょう。
いろいろと不安を感じることの多い「チック」や「癖」ですが、何より大切なのはお子さんの心身の健康。お子さんとのスキンシップや会話を大切に、まずはあたたかく様子を見守るようにしましょう。
この記事の監修・執筆者
みやのこどもクリニック院長。日本小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定専門医であり、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などの診療にも積極的に取り組む。
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