【盲点!子どもの水難事故はこんな場所でも】危険なポイントを場所別にチェック![専門家監修]

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夏になると、子どもの痛ましい水難事故がたびたび報道されます。川や海はもちろん、近所のため池や用水路などにも潜む危険について水難学会理事の斎藤秀俊先生にうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部

目次

ため池や用水路で死亡事故が起きている

令和4年に発表された「令和3年における水難の概況」(警察庁生活安全局生活安全企画課)によると、子ども(※中学生以下)の死者・行方不明者の場所別数は下記のとおりです。

●河川……18人
●湖沼池…6人
●海………5人
●用水路…2人

合計31人

いちばん多いのは「河川」ですが、川以外の場所でも子どもの水難事故が起きていることがわかります。

たとえば2022年4月、広島県の太田川放水路で5歳男児が、5月には埼玉県加須市の用水路で4歳男児が、行方不明になったのちに発見され、いずれも溺死した可能性があると報道されています。ため池など大人から見たら「こんな小さな池で!?」と思えるような場所でも、小さな子どもにとってはとくに危険。子どもだけでは遊びに行かないよう、くり返し伝えましょう。

久しぶりの帰省にも注意

コロナ禍が落ち着いてきた2023年の夏休みは、3年ぶりに家族で帰省を予定しているかたも多いのではないでしょうか。しかし、帰省先や親戚の家の近くで子どもが水難事故に遭うケースも少なくありません。帰省先にある、子どもにとって非日常的な場、とくに水辺は子どもがつい近づきたくなる場所です。帰省先でも普段と変わらずに子どもの行動をしっかりと見守るようにしましょう。

≪関連記事≫【園バス置き去り事故を防ぐために】2023年4月から内閣府の通達で何が変わる? 保護者にできることは?[専門家監修]

場所別に危険ポイントをチェック

ここでは、「川」以外の場所で、子どものどんな水難事故が起きているかをお伝えします。

【1.ため池】

ため池での事故は年間20~30件程度起きています。なかでも、親子やきょうだい、友だちどうしで遊んでいるときに、子どもや年下のきょうだいがため池に落ち、それを助けようとした保護者や年上のきょうだいがいっしょに犠牲になってしまうケースが多いのが特徴です。

2016年、宮城県で父子3人が落ちて亡くなった、ため池事故がありました。水難学会がその事故調査のために実証実験をしたところ、いったんため池に入ってしまうと、大人でも自力で這い上がってくるのが難しいことがわかりました。ため池の構造は、すり鉢状になっていることが多く、足が池底にとられて滑ってしまうからです。

もし、子どもがため池に転落したら、保護者はまず「浮いて待て」と伝えましょう。または足がつく場所なら、浅い場所でも「立てるところで動かずに待って」と伝えましょう。その後、すみやかに119番(消防)に通報します。ため池の場合、無理に這い上がろうとすると、ますます滑って深みにはまるので、呼吸ができる場所で救助を待つことが重要です。

【2.用水路】

用水路では2~4歳児の水難事故が多く、保護者がちょっと目を離したすきに発生しています。

用水路にはいろいろなタイプがありますが、事故が起きやすいのは、岸から水路に向かって斜面になっている場合です。まだ足元がおぼつかない幼児が斜面に足を踏み入れてしまうと、勢いがついて斜面を駆け下り、そのまま用水路に落ちてしまうと考えられます。小学校高学年など、ある程度の経験値があれば、あとずさりをするなどして上に戻ることもできますが、幼児には難しいでしょう。幼児の行動特性や、体の大きさに比べて頭が大きいため転びやすいなどの身体的特徴も影響していることが考えられます。

保護者は子どもを絶対に用水路に近づけさせないようにしましょう。

【3.海】

海で救助された人々が溺れた原因の中でもっとも多い自然要因は「離岸流(りがんりゅう)」と「陸風(りくかぜ)」です。

●離岸流

沖に向かって発生する強い流れを離岸流といいます。河口付近、堤防沿い等の人工物(突堤など)付近、岩場など離岸流が発生しやすい場所では海に入らないようにしましょう。波の白い泡や海藻、ごみなどが集まって沖へ流れている場所は離岸流が起きている可能性があります。

●陸風

陸側から海側へ吹く風が陸風です。陸風が吹くと、海で浮き輪やフロートなどの浮き具で遊んでいる人たちが一斉に沖に流されます。関東地方では夕方、日本海側では昼間でも陸風が吹くことがあります。

子どもが浮き具を使って海で遊ぶときは、水深はひざまでの深さの場所で、保護者も近くでいっしょに遊ぶようにしましょう。浮き具を持って水深の深い場所に行くと陸風に流されてしまいます。

万が一、子どもが陸風で沖に流されたときのために「浮き具を手放さないこと」と教えておきましょう。浮き具があれば、たとえ流されても呼吸をして浮いていることができ、救助を待てます。

【4.レジャープール】

水が流れたり、遊具が設置してあったりするレジャープールでは、5~7歳くらいの子どもの溺水事故が多く発生しています。一般的なレジャープールは深さが120cmで、その年齢の子どもの身長とほぼ同じくらいです。重大事故が起きやすいのは、子どもが走り飛び込みをした入水直後です。プールの底に足がつかずにあっという間に溺れてしまうケースが多いため、走り飛び込みは絶対にさせないようにしましょう。

プールでの事故を防ぐには、最初に子どもに「正しい入り方」を教えることが重要です。《プールに設置されているはしごを使用し、水に背中を向けて、腕ではしごを持ってゆっくり入水する》のが、プールの正しい入り方です。小学1年生なら、学校の体育の授業で最初にプールに入る際に、正しい入り方を教わるはずですし、スイミングスクールでも最初に教えているはずです。まだ、プールの正しい入り方を教わっていない未就学児には、レジャープールで遊ぶ前に保護者が教えましょう。

子どもの水難事故を未然に防ぐには、

①子どもを危険な場所に近づけない
②子どもから目を離さない
③水辺では保護者もいっしょに遊ぶ など

これらの原則を守ることが重要です。子どもの好奇心や行動特性を考えて、子どもの行動をしっかりと見守りましょう。

この記事の監修・執筆者

一般社団法人水難学会理事 斎藤秀俊

長岡技術科学大学大学院教授、工学博士。水域での事件・事故について、工学、医学、教育学、気象学などのさまざまな観点から検証及び研究を行う。各メディアで風呂から海、水や雪氷まで実験・現場第一主義に徹した記事やコメントを公開。全国各地で発生する水難事故・事件の科学捜査においても多数の実績を誇る。

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