突然の災害に備えて、普段から避難グッズの準備や避難経路の確認、防災の意識が大切です。
また、いざというときに大人だけでなく、徐々に子どもも自分の身を守れるようになりたいもの。
ただ、いきなり災害の話や防災の知識を伝えるのは、親子ともになかなか難しいですよね。そこで今回は、おうちで簡単にできる、防災要素のある遊びを紹介します。
「あそび防災プロジェクト」という企業向けのイベントを運営する、株式会社IKUSAの、あそびコンサルタントで、防災士でもある、五十里 航さんにお話をうかがいました。
お話/五十里 航(株式会社IKUSA あそびコンサルタント、防災士) イラスト/わたいしおり
1 防災ジェスチャーゲーム
遊び方
出題者がジェスチャーやものまねをして、回答者は何を表現しているかを答えます。
子どもに親しみのある「動物」「スポーツ」「乗り物」などをテーマにするとわかりやすいでしょう。
3人以上いる場合は、最初の人から最後の人まで、正しい答えが伝われば成功です。
家族どうしの集まりなど大人数で遊ぶときは、チーム戦にしても盛り上がります。
避難訓練などで防災の知識がついてきている子がいる場合は、「防災」をテーマとした、「防災ヘルメット」「懐中電灯」など、防災に関連するアイテムを当てるジェスチャーを取り入れるのもよいでしょう。
解説
いわゆる「ジェスチャーゲーム」なので、ルールがシンプルで、幼児にも楽しく取り組めます。
災害時の避難所では、人が密集しているため、想像よりもガヤガヤしていることが多いそう。そのため、3~4m先の相手の声が聞き取りづらく、実際にジェスチャーでやりとりをする場合もあるようです。
声でのやりとりが制限されるといかに不便かを知り、相手の動きから情報を読み取る力を身につけることができます。
2 長~い非常食をさがせ!
遊び方
何組かの家族対抗で遊ぶことができます。
LINEのビデオ通話や、Zoomなどオンラインで会話ができるツールを使用します。
制限時間を決めて、家にある非常食で、賞味期限がいちばん長いものを見つけて持ってきたチームの勝ちです。
期限の短いもの、○○色のもの、大きな缶詰など、お題を変えて遊んでみるのもいいですね。
ひと家族で遊ぶ場合には、非常食を並べて、親子で囲んでさがす遊び方も楽しめそうです。
解説
非常食の賞味期限は、10年もつ水もあれば、思っているよりも短く、定期的にチェックしなければ期限が切れてしまうものもあります。
賞味期限を気にかけた遊びをすることで、「これはまだまだもちそう」「もうすぐ切れそう」など、親子での気づきに役立ちます。
また、食べ慣れない食事を非常時にいきなり口にすることは、普段と違う状況に加えてストレスがかかります。
見慣れておくことや、期限が切れそうになったら親子で「どんな味かな?」「こっちのほうが好きな味!」などと食べ慣れておくことで、いざというときに少しでも安心感が得られます。
3 「危ない」はどこ?
遊び方
下の絵から、防災の視点で考えたときに危険なところ、改善できるところを見つけましょう。
全部で5つあります。
解説
1.大きな家具を固定する
避難経路となるドアの近くに大きな家具を置いていると、倒れたときに出口がふさがってしまうことがあります。
ドアから離した位置に配置するほか、L字金具や転倒防止の突っ張り棒でしっかりと固定しましょう。
2.ドアを開けておく
地震の揺れで、ドア枠が変形して開かなくなることがあります。
鍵といっしょにドアも開けておきましょう。
3.枕元に懐中電灯
真っ暗な部屋で懐中電灯をさがすのは難しく、危険もあるため、枕元に懐中電灯を置いておきます。
スマートフォンのライトも活用できますが、充電の減り具合や持ちやすさを考慮すると、懐中電灯を用意するのがベストです。
4.高い所に物を置かない
高い所や不安定な場所に物を固定せずに置いていると、地震の揺れで落ちたり飛んできたりして危険です。低い位置に置くようにするか、すぐに動かせない場合でも、100均でも入手できる耐震マットを敷くなど対策を取りましょう。
5.カーテンをつける
カーテンを閉めておくことで、窓ガラスが割れたときにガラスの飛散が抑えられます。
燃えにくい素材と加工を施した、防災カーテンを使用することもオススメです。
4 遊びに取り組むなかで保護者が気をつけたいこと
遊ぶことが大好きで、遊びのなかでさまざまな物事を吸収していく子どもたちですが、防災に関することを「楽しい」という思いで取り組んでよいものなのでしょうか。
五十里さんは、むしろ、まずは楽しく防災あそびを行うことが大切と言います。
そもそも株式会社IKUSAは、企業や自治体に向けた「チャンバラ合戦」というレクリエーションから始まったイベント会社です。
地域の歴史(岐阜の関ヶ原の戦いなど)を再現し、子どもたちが遊びながら地域の歴史を学んだり、企業内でのレクリエーションとして体験してもらったりしているそう。
あるとき、「防災訓練への参加率が低い」という声を聞き、“楽しいイベント運営のプロ”が、本気で防災と遊びを組み合わせたものを提案することで、少しでも防災を自分事として捉えてもらえるようになるのではないかと、「あそび防災プロジェクト」の取り組みを始めたという側面があります。
今では、運動会を通して楽しく防災を体験できる「防災運動会」や、親子で防災を学べるワークショップ「防災ヒーロー入団試験」など、遊びを取り入れた防災イベントを全国の企業や自治体、ショッピングモールで行っています。
実際の災害現場では人命が関わることを「遊び」と関連づけることについて否定的な意見もありましたが、シリアスな内容ではなく、「あそび防災プロジェクト」として届けることで、参加者から「楽しかったです」「知ることができてよかったです」と感想をもらい、遊びを通して防災のことを伝える価値があると実感しているそうです。
大きな地震など有事の際には防災意識が高まるものですが、一度避難訓練をして終わるのではなく、継続が必要なため、防災について考える初めの一歩として、また、子どもがいる家庭でのイベントごととして、定期的に取り組むとよいそうです。
子どもの年齢が上がってきたり、繰り返し遊んだりするなかで、+αとして、遊んだあとに1~3節で紹介したような解説を、子どもにわかりやすく伝えてもよいでしょう。
ぜひ、親子でのコミュニケーションとして、防災の一環として、遊んでみてくださいね。
第2回では、「おうちにあるもので防災アイデア」を紹介します。2月28日(火)公開予定です。
この記事の監修・執筆者
15/10,000の選考を通過して大手繊維商社に新卒入社。その後、株式会社IKUSAに入社。営業職に従事し、入社5ヶ月目に月間売上1,000万円を突破。2022年4月に社会課題解決プロジェクト「ソーシャルアクティビティ事業部」のプロジェクトリーダーに就任。防災士、カードゲーム「2030 SDGs」公認ファシリテーターの資格を保有。
”防災は難しそう”、”あまり関心がない”といったお客様に対して、ワクワクする楽しい体験を通して”はじめの一歩”に貢献していきます。
あそび防災プロジェクトURL:https://asobi-bosai.com/
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