11月のこそだてまっぷの絵本棚の1回目は、「夜」をテーマにした絵本をご紹介します。
夜の世界にゆったりと浸って、この時季ならではの長い夜を、親子いっしょに味わってみませんか?
今月の絵本のセレクトは、絵本講座主宰、JPIC読書アドバイザーの大久保徳久子さんです。
秋の夜長に読みたい! “夜”がテーマのオススメ絵本!
◆2~3歳向け! 『おやすみゴリラくん』
作・絵/ペギー・ラスマン 訳/いとうひろし 1,320円 徳間書店
【あらすじ】
ここは、夜の動物園。「ぐっすり、おやすみ」と懐中電灯を片手に声をかけて回る警備員さん。ゴリラくんは、警備員さんの腰のカギ束から、こっそりカギを拝借して檻から抜け出すと、ゾウやライオン、キリンたちも次々と檻から出してあげました。みんなは、警備員さんのあとに続いて、おうちの中へ。なにも気づかず寝てしまう警備員さんの横で、異変に気づいた奥さんは、動物たちを返しに行くのですが…。
【オススメポイント】
動物たちと警備員さんとのとぼけた味わいが、たまりません。檻から出て、自由になった動物たちがどうするのかと思えば、やさしい警備員さんのあとについていくだけ。一方の警備員さんはといえば、前しか見ていなくて、動物たちがゾロゾロと自宅までついてくるのに、気がつかない! 笑わせながらも、読後はあたたかい気持ちが残ります。
作者は「夜」を真っ黒にはえがきません。にじんだ美しい紫、光を感じさせるようなピンク、静けさが伝わる透明な青。内容にぴったりの、あたたかみのある夜の色にも注目です。
◆3~4歳向け! 『つきよのかいじゅう』
作/長 新太 1,495円 佼成出版社
【あらすじ】
山の奥、深い湖に「かいじゅう」がいるらしいと、ひとりの男が湖畔にテントを張り、10年もその出現を待っていました。ある夜、ついに何かが湖面を揺らします。男は夢中で湖に向かって写真を撮ります。少しずつ、湖面から姿を現すかいじゅう。男はいったい、どんなかいじゅうだろうと、興奮が止まりません。こんなかいじゅうかな? ん? いや、これは本当にかいじゅうなのか?
【オススメポイント】
昔、「イギリスのネス湖にネッシーというかいじゅうがいる」とうわさになったことがありました。そのイメージでこの絵本を読み進めると、最後にびっくりが待っています。さすが、ナンセンス絵本の名手・長新太の作品です。湖から少しずつ現れる体に、「こんなかいじゅうかな?」「それとも、こんなかいじゅうかな」と男が想像する場面では、子どもも同じ気持ちのはず。かいじゅうの正体を想像する時間をたっぷり取りつつ、読み進めてくださいね。
◆4~5歳向け! 『まっくらあそびしようよ』
作/はた こうしろう 1,540円 ほるぷ出版
【あらすじ】
「暗いから、楽しく遊べる」のが、まっくらあそび。きょうだいでおばあちゃんちの屋根裏部屋に泊まった夜、お兄ちゃんがライトやカメラを使って、真っ暗だからできる遊びを教えてくれます。ぬいぐるみをおもちゃの汽車に乗せて、ライトをつけると、影が壁に映し出され、ライトを近づけたり離したりすると大きさも変わる! ほかにも、夜が楽しくなるさまざまな「まっくらあそび」が…!
【オススメポイント】
両手を組み合わせて、ちょうや犬の影を映し出して遊んだことはないですか? 夜だからできる遊びを伝えてくれる、おもしろい絵本です。「ライトの距離を変えると、映し出される大きさが変わる」ことも、科学の実験みたいな表現ではなく、ストーリーの中で描かれているからこその、楽しさがあります。後半の、光でお絵かきする方法は、スマホを使ってもできるので、まさにイマドキの遊び方。退屈な夜や、キャンプなどの余興でトライしてみても!
◆大人向け! 『ネコヅメのよる』
作・絵/町田尚子 1,650円 岩崎書店
【あらすじ】
日本家屋が立ち並ぶ、どこかの町。一匹の猫がふと気づきます。「そろそろかもしれない」と。その夜、「こんやだ まちがいない」と確信した猫は、家から抜け出します。すると、あっちからもこっちからも、猫が列をなして集まってきました。町を抜け、森に出た猫たちは、一斉に夜空を見上げます。そのとき、夜空に現れたのは、月ではなく、ネコヅメだったのです!
【オススメポイント】
ペロリと前脚を舐める、いわくありげな迫力ある猫を見ただけで、表紙をめくる手にはもう、期待感しかありません。猫の毛並み、グリーンにも銀杏色にも見える瞳、無造作なひげ、不遜な態度。隅から隅まで見逃せない画面展開に、猫好きでなくとも食いついてしまうはず。不思議で、ありそうもない世界なのに、ありそうな気がしてくるこのリアリティは、唯一無二のものです。あとがきにえがかれた、仔猫にはない大人猫の魅力もご堪能あれ。
次回(11月19日更新)は、「仕事」をテーマにした絵本を紹介します。お楽しみに!
この記事の監修・執筆者
出版社勤務など30年以上絵本の編集に携わる。現在は、「絵本の可能性を広げる」をモットーにオリジナルの絵本講座を開催。全国の赤ちゃん~小学生の保護者、保育士、図書館司書など、これまで1,500人以上に絵本の魅力と可能性を伝えている。
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