【専門家監修】子どもの才能の見つけ方と伸ばし方

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「○○ちゃんは才能があっていいわね」「○○くんは、絵がとても上手よね」など、大人どうしで話題になることがありますよね。そんなときに気になるのが、我が子の才能。“才能ってなあに?” “どうやって伸ばせばいいの?”といった保護者の不安に、教育専門家の石田勝紀先生にアドバイスをいただきました。

目次

誰もが何かの才能を持っている

才能が開花するのは、遺伝と環境との2つによるものといわれています。世界中のデータを集めたメタ分析というものがあるのですが、それを見ていくと、たとえば音楽的才能は、遺伝によるものが90%という統計がでています。しかし、ここで誤解してはいけないのは、学校の成績で5を取るのは、「才能」がなくてもできる、ということ。たとえば、幼いときから音だけ聞いて、耳でコピーしてピアノが弾けるという能力は「才能」ですね。

才能というと学校の科目につながるようなものだけを連想しがちですが、そうではありません。例えば人付き合いがすごく上手、人の気持ちがわかる、物づくりが好き、これも「才能」です。誰しもが、何かの才能を必ず持っているんです。

パソコンにたとえると、OSが遺伝による才能の種。その上にあるソフトが環境だとイメージしてみてください。ОSが対応していないと、いくらソフトを入れても稼働しないでしょう。才能は、生まれつきDNAにプログラミングされたものなのです。言い方を変えると長所です。

子どもの才能を見つけるには

長所(才能)を伸ばすとその子はハッピーになります。

わたしは、誰しも才能を最低3つは持っていると思っています。もちろん、誰かと比較して秀でたものだけを「才能」とよぶのは違います。

この間、W杯があったけれど、日本代表の選手たちはあきらかに運動能力という意味での才能の持ち主。けれども、W杯にいけば、自分たちよりも上の能力を持った選手がたくさんいますよね。誰かと比較してしまうと、そこで「自分は才能がない」と思ってしまうけれど、彼らは、どう考えても才能の持ち主なんです。すなわち、人と比べると、才能はなくなってしまうのです。

子どもが自分で自覚しなくても、スムーズにできるもの。それは、きっと才能です。けれども、子ども自身は当たり前にできてしまうので自分ですごいと思わない。そこを親が気づいて伸ばさないといけないわけです。

まずは、お子さんを観察してみてください。小さな虫を見つけるのがはやいとか、自分より小さい子と仲良くなるのがはやいとか、きっと何か見えてくるものがあるはずです。

もともとの才能の種は、露出していないことがほとんどです。イメージで言うと、地層の奥に才能の種を持っている子がほとんどだから、親は種の上にある地層をどんどんけずっていかなくてはいけないわけです。「種の上にある地層をけずる作業」とは、いろいろな経験をさせるということです。

子どもが小さいうちは、親が「この子の才能はなんなんだろう」と突き詰めずに、さまざまな経験ができるようにしてください。そのなかで、子どもが自主的にやりたがるもの。言われなくてもどんどん興味を持ってやること。これが才能の種です。

うちの息子は、子どものころ爬虫類にはまっていました。爬虫類の図鑑を買ってくれと言うので、いろいろな爬虫類の図鑑を買いました。親からするといろいろなテーマの図鑑を見たほうがいいかなと思うけれど、子どもは「○○の爬虫類図鑑は××が載っているから見たい」と言うので、とことん付き合って、我が家は爬虫類の図鑑だらけになりました。クラスの爬虫類好きの子といっしょにかなへびをとってきて、家で育て、卵もかえして、夢中になって世話をしていました。

息子は中学生になると、今度は農業に興味を示しはじめました。そして、今、将来農業の仕事に就きたいと言い出しています。一連の道のりを考えると、共通項として見えてきたことは、生き物を「育てる」ことに関心がある、ということです。わたしは、これが息子の「才能」だと思っています。

結局、ラベル(爬虫類)は変わっても、根底のところは変わらないわけです。ラベル(爬虫類)だけで判断してはいけないということがわかりますね。

見つけた才能を伸ばすには

たとえば音楽の才能を与えられた子がいるとします。でも楽器に出合わないと才能はひらきませんよね。

才能の種を植物にたとえてみましょう。種は、温度と水と空気、太陽など、条件が整わないと芽が出ませんよね。これが「才能」という種を伸ばす「環境」にあたります。さらに、親は、「うちの子はひまわりのような花が咲くはず」と思うけれど、たんぽぽの種の場合もあります。親が勝手に大きい花のほうがよいと思い込んでいるだけ。当然、どんな花が咲くか決まっているわけです。親には、人と我が子を比べないで、どんな花が咲くかわくわくしていてほしいなと思います。

ちなみに、遺伝とは、親の遺伝だけではありません。DNAレベルで、もともとその子にプログラミングされているもの。だから、親が「自分に才能がないから…」などと言って悩む必要はありません。

我が子の才能を伸ばすことばかけ

何かに子どもが取り組んだら「あ、センスいいね!」などと認めることばをかけてあげてください。そうすると、子どもの自己肯定感があがります。

自己肯定感があがると意欲につながる。意欲を持って取り組むとどんどん伸びる。だから、子どもが自己肯定感を持つことがとても大切なのです。

また、本が好きな子がいるとしましょう。親は読書もいいけど、生活習慣を優先しようとします。たとえば「ごはんよ」と言っているのにこない。そうすると、「ごはんだから、はやくいらっしゃい」などと、言ってしまいがちですよね。確かに悪くはないのですが、一度以下のような対応をためしてみてはいかがでしょうか。

ごはんの声かけは1回だけする。でもこなければ、もう声をかけない。子どもがとことん好きなことをできる時間を確保するのです。やがて、子どもが自分で満足すればごはんを食べにくるでしょう。そのときに「やっと終わったの」や「ごはん冷めちゃったわよ」など、嫌味を言ってはいけません。何も言わなくても、次からは子どもが自分で調整するようになるでしょう。子どもはとことんやりたいようにやったので、満足するわけです。満足する経験があると、子どもは自分で調整できるようになります。

ただし、ゲームと動画は例外です。ゲームと動画は才能ではなく、暇だからやっていることがほとんどだからです。

子どもへのことばかけで、最も大切なことは、否定しないこと。「計算遅いね」とか「そそっかしいね」とか。マイナスなことは、成長を邪魔するだけです。

ひとつエピソードがあります。わたしは7歳のときに親戚のおじさんから「音痴だな」と言われたことがあります。それがトラウマになって歌を歌えなくなりました。しかし、40歳を越えて、トラウマを克服したくて、ある合唱団に入りました。思い切って歌ってみたら、合唱団の仲間に「うまいね」と言ってもらえたのです。指導者にも「音痴じゃないよ。上手ですよ」と言われて、トラウマ解消です(笑)。先日は、有名歌手のバックコーラスを務めました(笑)。7歳のとき、「音痴だな」と言われなかったら、もっと楽しい音楽人生があったのかな、と思います。

子どもの能力に関わることを、マイナス的な表現をしていないか、いま一度振り返ってみてください。大人は茶化すように言ったとしても、子どもの心は傷つき、わたしのようにトラウマになってしまうこともあるのです。結局、自分が言われて嫌なことは、子どもにも言わない。これが基本なのです。

この記事の監修・執筆者

石田 勝紀

20歳で起業し、学習塾を創業。これまで4000人以上の子どもたちに対し直接指導するかたわら、講演会やセミナーなども実施。また、2003年35歳で都内の私立の中高一貫校の常任理事に就任。2016年からは「カフェスタイル勉強会~Mama Café」というママ対象の子育て・教育の学びの会を全国で主宰。『子どもの自己肯定感を高める 10の魔法のことば』(集英社)、『同じ勉強をしていて、なぜ差がつくのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

公式サイト
http://www.ishida.online/

音声配信Voicy
https://voicy.jp/channel/1270

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