[十五夜]を子どもにどう伝える? 【専門家監修】

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[十五夜]を子どもにどう伝える? 【専門家監修】

「十五夜のときに月見だんごを食べるのはどうして?」と子どもに聞かれたら、答えられますか?
日本の行事にはそれぞれ意味があります。その意味や歴史、風習などを知って、ぜひ子どもに教えてあげましょう。今回お届けするのは「十五夜」のお月見です。「行事育」を提唱する和文化研究家の三浦康子先生に「十五夜」の意味などをうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部 イラスト/湯沢知子

目次

十五夜は秋の収穫に感謝する行事

十五夜は、きれいな月をながめながら収穫に感謝する行事です。旧暦(※)の8月15日(新暦では9月中旬~10月上旬ごろ)の十五夜は、1年でもっとも美しいとされているので「中秋(ちゅうしゅう)の名月」と呼ばれています。

旧暦では7~9月が秋です。秋の真ん中である中秋(旧暦8月15日/十五夜)は空が澄んで月が美しく見えるため、平安時代の貴族が中国伝来の月見を取り入れ、風雅な行事として楽しむようになりました。この風習が庶民に広がると、秋の収穫物を供えて実りに感謝する行事に変わっていき、親しまれるようになったのです。

月はその満ち欠けを基準にして、暦がつくられるなど昔の人々の暮らしを支えていました。そして月の満ち欠けに作物の実りを重ね合わせ、月に感謝と祈りをささげるようになったとされています。

十五夜は芋類の収穫祝いも兼ねているので、別名「芋名月(いもめいげつ)」といいます。また、「十三夜」(旧暦の9月13日)や「十日夜(とおかんや)」(旧暦の10月10日)にお月見をする風習もあります。

※旧暦と新暦……現在使用されている新暦は、太陽の動きに合わせてつくられた太陽暦。明治6年から使用されている。それ以前に使われていた旧暦は、月の満ち欠けに太陽の動きを加味して作られた太陰太陽暦。新暦は太陽の動きを基準とするため1年は365日だが、旧暦は月の満ち欠けに基づくので1年が354日。そのため暦と季節に1年で11日のずれが生じる。そこで旧暦では19年に7回ぐらいの割合で1年を13か月にしてそのずれを調整していた。

こちらもチェック≫子どもの5つの力を育む[行事育]とは?【専門家監修】

満月に見立てたものが月見だんご

十五夜のお供えものには里芋料理や月見だんごを用意し、食べる前に月がよく見える窓辺などに供えてお月様をながめます。月見だんごは、丸い満月に見立てたもので、十五夜にちなんで15個、またはその年の満月の数をお供えします。月をながめたあとで、月見だんごをいただきましょう。

里芋以外にも、季節の野菜や果物をお供えします。ぶどうのようにツル性のものは、お月様とのつながりが強くなるといわれ、縁起がよいとされています。

お供えものを盛る器を「三方(さんぽう)」といいます(三宝とも書く)。三方に穴が開いていて、穴のない面を神様(ここではお月様)に向けて供えます。三方に開いた穴から神様の力を授かるとされています。三方がない場合は、白い皿に白い紙を敷いて代用するとよいでしょう。

お供えものにはすすきをあしらいます。すすきは、神様が降りてくるときの目印です。実りを迎える秋の稲穂に見立てています。鋭い切り口が魔よけになるとされ、お月見のあとに軒先につるす風習もあります。

月見だんごを盗まれると縁起がよい!?

昔から、家の縁側に供えた月見だんごを近所の子が盗んで食べてしまうのを喜ぶ風習がありました。これを「月見どろぼう」といい「お月様が食べてくれたからよいことがあるよ」と言って歓迎してきました。現代では難しいことですね。

月のもようを何にたとえるかは国によっていろいろ

日本では、月のもようのことを「うさぎが餅をついている」場面にたとえます。これは仏教説話にもとづいていて、餅は大事な食べものの象徴であり、豊穣祈願の意味もこめられています。

月のもようのとらえ方は、国や民族によって異なります。中国では「薬草を挽くうさぎ」(日本と少し似ていますね)、ヨーロッパでは「大きなハサミをもったカニ」「本を読むおばあさん」「女性の横顔」、カナダでは「バケツを運ぶ少女」などいろいろなとらえ方があります。

ご家庭でお月見をしながら、「〇〇(子どもの名前)には、月のもようが何に見える?」という会話を楽しんでみてはいかがでしょう。子どもの想像力に驚かされるかもしれません。

月のもようの白い部分は、クレーター(隕石が衝突した跡)の多い高地で、黒い部分は低地です。お月見をしながらそんなことも話してあげると、子どものわくわく感も高まるでしょう。

月の満ち欠けには美しい呼び名がある

太陽暦である新暦では月の満ち欠けと、暦上の1か月が一致しません。ですが、旧暦では月の満ち欠けが1か月の単位でした。人々は月の満ち欠けで月日を知り、それに合わせて農作業や行事を行い、月の明かりを頼りに暮らしていたので、月は生活に欠かせないものでした。月の満ち欠けによる呼び名もたくさんあります。情緒たっぷりの月の呼び名をご紹介します。

さまざまな行事を楽しむことで、「根っこになる」「絆になる」「心豊かになる」「賢くなる」「元気になる」の5つの力を育むことができるのが行事育です(行事育については子どもの5つの力を育む[行事育]とは?【専門家監修】で説明しているので、ご覧ください)。「花鳥風月」など日本では昔から月は風雅を象徴するものとして大切にされてきました。昔の暮らしを思いながら、月をながめてみませんか?

この記事の監修・執筆者

和文化研究家 三浦 康子

古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとる。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、監修書『季節を愉しむ366日』(朝日新聞出版)ほか多数。

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