1歳半頃から2歳頃を目安にはじまる「イヤイヤ期」。できることが増えるにつれて「自分でやりたい」気持ちが強くなることが要因と言われています。親としては、子どもが成長している証として喜んでよいことなのでしょう。ただ、そうも言っていられないときって、ありますよね…。今回は、「イヤイヤ期」の子どもとの関わり方や大人がストレスをためないコツについて、元保育士で日本児童教育専門学校専任講師の今泉良一先生にお話を伺いました。
お話:今泉 良一(日本児童教育専門学校専任講師)
イラスト:野田 節美
いつ頃始まって、いつ頃終わる?
「『イヤイヤ期』が始まる時期は個人差がありますが、1歳半頃から始まる子が多いです。2歳頃にピークを迎え、3歳後半頃には落ちついてきますよ」と今泉先生。自分の意思が通ったり通らなかったりを経験することで、少しずつ周りの人と折り合いをつけることを学んでいくのだそうです。
「“自分の思いを認めてもらった”と満足感を味わうことも大切ですし、“人には自分と違う思いがある”とわかって葛藤する経験も大切。こうした経験の繰り返しから、心が成長していくのです」
大人目線から考えると、「イヤイヤ期」はつらい時期かもしれませんが、心が成長するためには、必要な時期だということですね。
親はどう対応すればよいの?
では、親として子どもの「イヤ!」「ダメ!」「自分で!」をどう受けとめればよいのでしょう?
「『イヤイヤ期』が大切な時期だからといって全部受けとめなくてはいけない、と考えると疲弊してしまいます。時間がないとき、公共の場で恥ずかしいときもありますよね。親だって人間ですから、そのときに可能な範囲で、子どもに向き合ってください」と今泉先生。少しホッとしますね…。
子どもに向き合うときのコツは、選択肢をもたせることなのだそうです。
「例えば、服を着替えたいときに“イヤ!”が始まるとしますよね。“風邪ひいちゃうから、これ着てよ。とってもかわいいよ”となだめるのではなく、“じゃあ、くまさんのシャツとリボンのシャツがあるんだけど、どっちがいい?”などと聞いてみるのも一案。その場しのぎの受け答えは避け、 “あなたの気持ちを尊重している”という気持ちが伝われば、案外子どもも素直に選んでくれるものです。
また、“お母さんはあっちにいるから決まったら教えてね” と話して、ときには一度子どものそばを離れて待つことも効果的です」
そんな今泉先生にも、小さい頃に思いが伝わらず悔しかった経験があるのだそうです。
「園で合奏をすることになったんですよ。僕はタンバリンがやりたかったのに、気持ちを聞いてもらえず、鈴をやらされちゃった。タンバリンやりたかったのになぁ。よっぽど悔しかったんでしょうね。今でもよく覚えています」
子どもの頃の記憶って、なぜかうれしいときよりも悔しい思いをしたときのほうが鮮明に覚えているものですよね。言葉を自由に使うのが不十分な時期だからこそ、大人が子どもの気持ちに向き合って「どうしたいのか」「なにがイヤだったのか」を整理することが大切なのでしょう。
もちろん、親にも都合はあります。公共の場で始まったら「周りの人たちに迷惑かけちゃうから、ちょっと向こうに行こう」と言ってその場から離れ、気分転換ができるようにするのもアイディア。「園でもそうですが、だいたいひと泣きすると落ち着くものですよ(笑)」と今泉先生。親も思いつめないことが大切なのですね。
女の子の「イヤイヤ期」と男の子の「イヤイヤ期」には違いがあるの?
さて、「イヤイヤ期」に性別の違いはあるのでしょうか?
「心の成長からくる行動なので、男の子だから、とか女の子だから、ということはあまりありませんね。あくまでも個人差なんですよ」と今泉先生。おっとりとした性格の子で「イヤイヤ期」がほとんどない子もいるそうです。
「基本的には、家でも園でも自分の意見を言える環境であれば、『イヤイヤ期』がないといって心配する必要もありません」
親がイライラしたときの解消法は?
最後に、子どもに振り回されて親がイライラしたときの解消法についてお聞きしました。園では、たくさんの「イヤイヤ期」真っ最中の子どもたちがいますから、先生方もたいへんですもんね。
「基本的には『イヤイヤ期』ってこういうもの、と思って保育します。その日の予定通りにいかなくても“ま、いいか”と気持ちを切り替えるようにします。どうしてものときは、とりあえずトイレに行って気分転換(笑)。水1杯飲んで、気持ちを落ち着かせることもありますよ」
この記事の監修・執筆者
日本児童教育専門学校専任講師。東洋大学大学院修了。13年間、保育士を経験したのち2017年より現職。保育者養成とあわせて「子どもの表現活動」について研究している。
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