小学校の算数で教わる四則計算(たし算、ひき算、かけ算、わり算)は、日常生活で必要となる基礎知識です。
大人はもちろん、多くの子どもも習得してしまえば当たり前のようにできる計算かもしれませんが、実は「どうしてそう解くのか」「そこにどんな意味があるのか」という問題の奥にある考え方をとらえることが、とても大切です。
「問題の奥にある考え方などあるの?」と思われるかもしれませんが、ただ計算問題を解くだけでは気づきにくい、算数の本質に関わるお話です。
この考え方や意味を理解することで、算数の問題もわかるようになり、算数や学ぶこと自体が楽しくなっていきます。まずは大人が理解して、子どもとコミュニケーションを取りながら教えてみましょう。
前回は、数の概念のとらえ方についてお話ししましたが、第2回目は、二桁の数のとらえ方や位取りについてです。
ゼロのおかげで「10」が表せる
人は長い歴史の中で、相手に数(量)を知らせたり、数を記録したりする必要が生じてきました。初めは木の棒に刻み目をつけるなどして数を記録していましたが、それでは大きな数を表すのが大変です。そこで、より簡単に数を表すために数字が発明されたのです。
私たちが普段使っている算用数字は0から9まで10個ありますが、実はとても不思議な記号です。
ものが一つあれば「1」、二つあれば「2」と表します。でも、「じゅう」は「1」と「0」の二つの記号を並べて表します。漢数字ならば「十」で、ローマ数字ならば「X」という1文字で表しますが、算用数字には「じゅう」を表すための一つの記号はありません。
大人であれば「当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、「一つなら1、二つなら2」とそれぞれの量と数字が対応することを覚えた子どもにとっては、とても難しいことです。
【こちらも分かりやすい!】「数」を具体的に捉えるコツについてのお話はこちら
何もないことを表す「0(ゼロ)」はインドで発明された概念です。
たとえば、「105」なら十の位には数がないことを表しますね。数字の並ぶ位置によってそれぞれの位を表す「位取り」を使って数を表すことで、とても計算しやすくなりました。
インドからアラビア経由でヨーロッパに渡り、15世紀には広く使われるようになった「0」のおかげで、近代の科学技術が急速に発展したといわれています。「0」はとても大切な概念ですね。
ステップ1 タイルを使って、量と数字を関連づけましょう
【問題】 次のタイルを数えましょう。また、タイルの数を表す数字を答えましょう。
【答え】 (左から)いち、1 に、2 さん、3 よん、4 ご、5 ろく、6
順番と量を関連づけて覚えるには、タイルを使うことが効果的です。
上の図のようにタイルを並べると、たとえば、タイルが3枚あるところは、3という量と3番目を表しているのがすぐにわかります。また、3は2より1多く、4より1少ないこともひと目見てわかります。
3枚と3番目(量と順番)の区別をするのは、初めは難しいかもしれませんが、幼少期から数には量があるのだということをつかめると、量と順番を区別することができ、低学年の算数をスムーズに学ぶことができます。
また、遊びの体験が多いほど、数には量があるということを早く知ることができます。家族や友だちといっしょに遊ぶという生活体験が豊かであれば算数にも強くなりますので、テレビゲームだけではなく、外遊びやトランプなどの遊びをどんどんするようにしましょう。
ステップ2 タイルを使って、位取りのしくみをつかみましょう
【問題】 次のタイルを数えましょう。また、タイルの数を表す数字を答えましょう。
【答え】 1…5 2…10 3…14 4…20
二桁の数字を理解するには、位取りのしくみを知ることが大切です。
たとえば、強制的に「じゅう」は「10」だと覚えさせるのではなく、「十の位は10のかたまりが一つあるので1と書き、一の位には何もないので0と書く」ということを理解させることが大切です。
位取りのしくみをつかむためにも、タイルを使うことはとても効果的です。
2問目の場合、タイルが10になったら、それを1本(10のまとまり)と考えるとよいでしょう。そして、一の位にはタイルがないので、何もないことを表す0が入るということをつかませましょう。
4問目も10のまとまりが二つあって、一の位には何もないので0が入るということを表します。
いかがでしたか? 位取りや何もないことを表す「0」を理解することは子どもにとっては難しいものです。焦らず、楽しく数に触れていきましょう
この記事の監修・執筆者
こみやま ひろひと/1949年生まれ。日本教育社会学会会員。放送大学非常勤講師。2005年より学研グループの学研メソッドで中学受験塾を運営。学習参考書を多数執筆。最近は活用型学力やPISAなど学力に関した教員向け、保護者向けの著書、論文を執筆している。
主な著書・監修書に『子どもの「底力」が育つ塾選び』(平凡社新書)、『はじめてのアクティブラーニング社会の?<はてな>を探検』全3巻(童心社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 数と数式の話』(日本文芸社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 数学の定理』(日本文芸社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 統計学の話』(日本文芸社)、『大人に役立つ算数』(角川ソフィア文庫)、『危機に対応できる学力』(明石書店)など多数。
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