2024年1月1日、石川県能登地方を震源とし、最大震度7を観測した能登半島地震が発生しました。2011年3月11日に発生した東日本大震災を思い起こすような巨大な地震でした。
日本は、その位置や地形、地質や気象などの特徴から、台風・豪雨・豪雪・洪水・土砂災害・地震・津波・火山噴火などのさまざまな自然災害が発生しやすい国です。
いつ発生するかわからない災害に、どのように備えて、身を守ればよいのでしょうか。
今回は、災害に備えるための新しい考え方として注目される「フェーズフリー」についてご紹介します。
“日常時”と“非常時”を分けずに備える「フェーズフリー」
繰り返される災害に備えて
日本は、世界でも有数の自然災害が多い国です。
災害によってライフライン(電気・ガス・水道など)が使えない、物流が絶たれて物資が手に入らないという事態は、いつ起こってもおかしくないでしょう。
災害が発生するたびに「普段から充分に備えておかなくては」と思っても、何から始めればよいのか、またどんな準備をすればよいのか難しく感じることも多いのではないでしょうか。
そこで知ってほしいのが「フェーズフリー」という考え方です。
「フェーズフリー」とは?
「フェーズフリー」とは、“日常時(普段の生活)”と“非常時(災害発生時)”のふたつのフェーズ(時期・状態)の境を取り払って、“日常時”に使っているものやサービスを、“非常時”にも役立つようにしようという、新しい防災の考え方です。
日常生活の延長で災害に備えることができるので、「備えない防災」とも呼ばれます。
「フェーズフリー」なものやサービスを普段から生活に取り入れれば、非常時に備える特別なもの・専用のものを最低限ですませることができます。
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「フェーズフリー」の商品やアイデアとは?
どんな「フェーズフリー」の実例があるの?
日常時も非常時も活用できる「フェーズフリー」の商品やアイデアには、どのようなものがあるのでしょうか。実例を知ってその特徴をとらえれば、「フェーズフリー」な視点で災害に備えるヒントになるかもしれません。
食品のローリングストック
私たちの生活にとって欠かせない食品を例に「フェーズフリー」を考えてみましょう。
災害発生時のために、家庭で備えておくべき食品の目安は3日〜1週間分程度とされています。家族全員に必要な量を、防災用の非常食だけで用意しようとすると、収納場所や費用の面で難しいこともありますね。また、しまい込んでしまって、賞味期限や消費期限が切れてしまうことも……。
そこで、普段から使いやすく、災害時にも役立つ食品を生活に多く取り入れようというのが「フェーズフリー」の考え方です。
例えば、長期保存ができるスパゲッティは、普段からストックしている家庭も多いでしょう。ゆで時間が短い商品を取り入れれば、普段の生活でも料理する時間を短くでき、また、災害でガスが止まって、カセット式ガスコンロで料理をするような状況になっても、短時間でゆであがり、ガスボンベの使用量を減らすことができます。
このように、災害時にも使いやすいかどうかを、普段から食品を選ぶポイントのひとつにすれば、「フェーズフリー」な備えが実践できます。
また、普段の食品を多めに買い置きしておき、賞味期限・消費期限の短いものから使って、使った分を買い足しすることで、常に家庭に一定量の食品を備蓄する「ローリングストック」も、「フェーズフリー」な考え方に沿った災害対策です。
スパゲッティなどの乾麺や缶詰、レトルト食品など、長期保存できるものから「ローリングストック」して、「フェーズフリー」な備えをしてみませんか?
災害時も役立つバッグ
お子さんが日常使いするバッグは、どのような選び方をしていますか?
バッグなどの日用品を選ぶとき、普段の使い勝手のよさとともに、まさかの事態に備えるポイントがあるかどうかも注目してみてください。
アウトドアメーカーのコールマンは、キッズバッグの胸ベルトにホイッスルが付いた「デイパックミニシリーズ」を発売しています。バッグがずれないように止める胸ベルトにホイッスル付きのバックルが使われているもので、お子さんが災害時や路上で危険を感じた時などに、音を出して助けを呼ぶことができます。また、リフレクターテープ(反射テープ)が自動車のライトなどに反射して光るので、早朝・夜間の交通事故防止にも役立ちます。
移動式電源になるバス
街の中に目を向けると、「フェーズフリー」な工夫が取り入れられた公共交通機関や施設もあります。
2019年11月から運行を開始した「IKEBUS(イケバス)」は、東京都の池袋駅周辺の公園や施設を巡る小型電気バスです。IKEBUSは、災害時にはバッテリーを移動式電源として供給でき、約2500台のスマートフォンや非常用照明などの充電に活用できます。
災害用トイレや給水設備などが備えられた公園など、身の回りに「フェーズフリー」な施設があるか、ぜひお子さんと調べてみてください。
災害に強くなる教育
学校教育に「フェーズフリー」を取り入れている自治体もあります。
徳島県鳴門市は「フェーズフリー」をさまざまな教育の場で実践しています。
例えば小学校の体育の授業では、長距離走の目標を、学校から近隣の避難所までの距離や、津波到達までに予想される時間などに設定することで、長距離走の必然性を認識させ、意欲を高める取り組みをしています。また、小学校の英語の授業では、会話の場面を災害発生時に設定して、避難路の訪ね方や道案内の仕方を学びます。
このように、学校の授業や活動を通じて、子どもたちの災害への対応力を育てているのです。
今回は日常と非日常を分けずに災害に備える「フェーズフリー」についてご紹介しました。
自然災害が多発する日本で、今後ますます注目される「フェーズフリー」。家庭でもその考え方を共有して話し合い、災害対策を進めてみてはいかがでしょうか。
この記事の監修・執筆者
未就学から中学生までの子を持つママ編集者を中心に、子どもの学びや育ちに関する様々な情報を日々発信しています!
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