一年でいちばん華やぐクリスマスシーズンが到来しました。クリスマスをテーマにした絵本はたくさんありますが、今年はこんな物語はいかがですか?
絵本のセレクトは、絵本専門士で絵本セラピスト®の鳥山由紀先生です。
12月 第1回
「クリスマス」がテーマのオススメの本
◆2~3歳向け! 『サンタさんのおとしもの』
作/三浦太郎 1,100円(税込) あすなろ書房
【あらすじ】
クリスマスイブの夜、赤いマントの女の子がサンタさんの赤い手袋を拾います。寒くて困っているかもしれないと、なんとかサンタさんに届けるために高い高い教会の塔にのぼります。教会の塔からまちを見渡すと、サンタさんは女の子の家のえんとつに入るところでした。急いで塔を下りて家に走ります。サンタさんに落とし物を届けることができるのでしょうか。
【オススメポイント】
女の子が「サンタさんに落とし物を届けたい!」と一生懸命かけまわります。
塔の上から見たまちの中から、いっしょになってサンタさんを探してみましょう。サンタさん以外にも、町の中を走る車や歩いている人、電車や家の窓の中、細かいところまでじっくり眺めて、「ここではこんな人がこんなことしているよ」「ここにこんなのがある!」などとそれぞれのシーンをじっくり見ながらおはなししてみるのも楽しいかもしれません。
女の子のやさしい気持ちに、サンタさんからのプレゼントがぴったりマッチして、寒さの中にもポッとあたたかい気持ちでうれしくなります。
黒い街にカラフルな家々や雪がとてもきれい! そのままツリーのそばに飾ってもおしゃれです。
◆3~4歳向け! 『はらぺこサンタのクリスマス』
作/はらぺこめがね 1,540円(税込) ほるぷ出版
【あらすじ】
プレゼントを配りに出かけようとするサンタさん。おなかペコペコ。でももう時間がないので、はらぺこのまま出かけます。すると、そりの上から見えるものは、どれもこれもおいしそうな食べ物ばかり。
シュトーレンにコンソメスープ、チキンにケーキ。
いえいえ、よく見ると、山や池。
はらぺこサンタ、だいじょうぶかな。無事みんなのもとにプレゼントを配ることができるのでしょうか。
【オススメポイント】
はらぺこめがねさんの描く絵はどれもこれも、ほんとうにおいしそう。はらぺこじゃなくても食べたくなってしまいます。親子で絵本を読みながら、おもわず手がのび、パクリとしてしまいそうですね。
しっかりしなくちゃ はらぺこサンタ プレゼントくばります クリスマス
とリズミカルに楽しく読めるので、親子でいっしょに声に出して読んでみるのも盛り上がりそうです。
こんなにおなかがすいているのに、本物のブッシュドノエルには気づかずに通り過ぎてしまう、ちょっとおっちょこちょいなところも応援したくなるはらぺこサンタです。
でも、最後はちゃーんと。え? 食べられたのかな?
◆4~5歳向け! 『サンタさんからきたてがみ』
作/たんのゆきこ 絵/垂石眞子 1,100円(税込) 福音館書店
【あらすじ】
クリスマスの前の日、手紙を雪の中に落としてしまったねずみの郵便屋さん。1通の手紙の宛名が読めなくなってしまいました。森のみんなも落ち込むねずみといっしょに、なんとかして宛名を読み取ろうとします。どうやらねずみさんあてのよう。サンタさんからねずみさんへの手紙、なんと書いてあるのでしょうか。
【オススメポイント】
配達しないといけない手紙をぬらしてしまって、しょんぼりしているねずみを心配して様子をみにくるやさしい動物たちですが、それがサンタさんからの手紙だとわかったとたん、「もしかしたら自分あてかも」とちょっぴり期待しつつ主張する場面が私は大好きです。動物たちの表情がかわいくて応援したくなります。サンタさんから自分に手紙が届いたらうれしいですよね。ぬれた手紙のどこかに、自分にもあてはまる部分がないか探してみましょう。結局ねずみさんあてだったけれど、みんなうらやましがりながらも、なんとかねずみさんをサンタさんとの約束の場所に間に合うように連れて行こうといっしょに走ってくれます。
サンタさんとの待ち合わせ場所の、森でいちばん大きなもみの木のページは、開いたとたん、キラキラの光がぱーっと目に飛び込んでくるようで、クリスマス気分を盛り上げてくれますよ。
◆大人向け! 『ふくびき』
作/くすのきしげのり 絵/狩野富貴子 1,650円(税込) 小学館
【あらすじ】
大好きなお母ちゃんにクリスマスのプレゼントを贈りたいと、姉弟がお金を出し合ってプレゼントを買いに出かけます。でも2人のお金ではお母ちゃんが欲しがっていたバッグが買えないことを知ってがっくり。帰り道ふくびきの券を拾い、くじをひくと、なんと3等のバッグが当たります。大喜びの弟ですが、お姉ちゃんは拾った券で当ててしまったことに胸を痛め、悩みます。
【オススメポイント】
お母ちゃんにプレゼントを買ってあげたいやさしい気持ちと、うそをついてバッグを当ててしまったうしろめたさ、周りの大人たちのやさしさ、姉弟のやさしさを知ったお母ちゃん、みんなの気持ちがわかりすぎるほどに伝わってきて、ドキドキしてしまいます。
バッグが当たった時は、おもわず「やった!」と思ってしまった私ですが、お姉ちゃんの正直な気持ちに、大人げない自分を反省しました。
無邪気な弟と、その弟の気持ちも汲んであげたいけれど、自分の中の罪悪感との間で揺れるお姉ちゃんの気持ちにきっと大人は心奪われるでしょう。お姉ちゃんのように正直でありたいと思いつつ、お母ちゃんのようにやさしく包み込む親でありたいと、両方の立場から読むたびに心揺さぶられます。きっと、3人で食べたケーキはどんなケーキよりもおいしかったでしょうね。
次回の絵本棚は「お正月」をテーマにした絵本を紹介します。お楽しみに!
この記事の監修・執筆者
(プロフィール)
絵本専門士4期生。絵本セラピスト協会認定絵本セラピスト®。大人・子どもを問わずお気に入りの一冊を見つけてもらえることを思い、絵本に関する講演や執筆、絵本講座の開催、読み聞かせなどを行う。また、箏奏者との絵本の読み聞かせユニット「ことえほん」での公演活動、大学での認定絵本士養成講座講師も務める。
(ブログ)
https://ameblo.jp/ehonrahen/
(ことえほんfacebook)
https://www.facebook.com/kotokotoehon/
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