普段行けない場所や、できないことに挑戦できる絶好のチャンスの夏休み。
しかし、その半面、学校の時間割がないことで生活リズムが乱れ、せっかく立てた計画どおりに予定が進まず、気づいたら夏休みが終わってしまった…というご家庭も少なくないのではないでしょうか。休み中にクセづいたダラダラ生活がたたると、休み明けのスタートダッシュでつまずく可能性も…。
そこで今年こそは“脱・ダラダラ夏休み”のために、夏休みの計画の立て方のポイントやうまく時間を使うことができるようになるための工夫を、隂山英男先生におうかがいしました。
お話/隂山ラボ代表(教育クリエイター) 隂山 英男
今と昔では学習量が大違い! 今の夏休みに求められること
一年間の学習内容を見通したうえで、“どんな夏休みにするか”を考えよう!
ランドセルの中身が年々重くなっているという話を聞きますが、小学校教科書のページ数が10年前にくらべて増えていることからもわかるように、今の子どもたちが学んでいる学習内容は、親御さんが学んできた学習内容よりも明らかに膨大になっています。
昔は、夏休みをのんびり適当に過ごしていても、なんだかんだ通り過ぎることができましたが、今は、夏休みの間によく準備をしておかないと、学習に遅れを取ってしまったり、それが原因で苦手意識が植えつけられてしまったりする可能性も…。
だからこそ、学校の動きが止まる夏休みの約40日間をどう使うのか、ご家庭でしっかりとした方向性をもつことが大切になります。ポイントは、学校の一年間の学習内容を見通したうえで、夏休みの位置づけを考えるということ。
たとえば、
●1学期の復習を多めに充てる
●2学期の予習をして安心して授業に臨めるようにする
といったようなイメージです。
“夏休み単独”で考えてしまうと、一年間のカリキュラムが見通せず、「ダラダラ夏休み」になってしまいますから気をつけましょう。
夏休みの計画を立てるコツ
先に述べたように、一年間の学習内容が膨大な子どもたちですから、夏休みのうちに、「1学期の復習」と「2学期の予習」までしっかりと押さえておきたいですね。
しかし、夏休みは長いので、ワンパターンで過ごそうとすると、どうしてもだらけてきてしまいます。そこでオススメなのが、夏休みを4つに区切って計画を立てること。たとえば、以下のように考えてみましょう。
【7月中】…1学期の復習をしましょう!
1学期に学習した内容は、夏休みの後半になればなるほど、忘れていってしまいます。ですから、7月中に学校から出ている、1学期の復習的なプリントやドリルはすべて終わらせてしまうのがベストです。
【8月上旬】…自由研究や自由工作を仕上げよう!
学校から、自由研究や自由工作の宿題が出ている場合は、このタイミングで仕上げてしまいましょう。
【お盆】…家庭のイベントやゆっくり休む時期に
お子さんがエネルギー切れになってくるころ。世の中もお盆シーズンでママパパがお休みのところも多いと思いますので、学習はお休みにしてみましょう。この時期に家庭のイベントごとを催したり、ゆっくりと休んだりするのもよいでしょう。
【お盆明け】…2学期の予習をしましょう!
2学期は、スタートから重要教材が続々と出てきます。夏休みのうちに目を通しておけば、安心して2学期をスタートさせることができるでしょう。
夏休みの間は、時間割がなくなりますからダラダラと過ごしてしまいがちに。
「〇時からは、机に向かう時間にしよう」というように、お子さんといっしょにルールを設けておくことも大切です。
勉強ができなくなる最大の理由はコレ!
夏休みのうちに解消しよう
勉強ができなくなる最大の理由は、「自分はできない」という思い込みだと私は考えています。つまずきがあると、「自分ってダメな子?」と思い込んでしまい、やがてそれがコンプレックスになってしまったり、苦手意識につながってしまったりしていることが多くあるのではないでしょうか。逆に、「自分はできる!」と思えたら、自信がつくはずです。
これは、学説的にもいわれていることで、
たとえ、もともと能力が高くなくても、適正に課題を与えることによって自信がついていき、だんだんと能力が上がっていくのです。
つまり、能力的な問題よりも、心理的な問題が大きく関わっているといえますね。先で述べた夏休みの計画に「1学期の復習」と「2学期の予習」を組み込んだのも、これが理由です。
だからこそ、夏休みの学習においても、「つまずいた段階まで戻る」ということが大切。たとえ、高学年のお子さんでも、1年生の学習まで戻ってよいのです。そして、つまずきをクリアできたら、たくさんほめてあげましょう。そうすることで、一つひとつ「自分はできない」という思い込みを解消していくことができ、お子さんの学習力もぐんぐん伸びていくでしょう。
【脱・ダラダラ夏休み】のために
マイ腕時計を持たせてあげましょう!
実は、夏休みとは言わず、幼稚園や保育園に入園したらお子さんには腕時計を持たせてあげることをオススメしています。なぜなら、こうして腕時計をいつでも身に着けていることで、自分の時間を管理するための“時間感覚”や“時刻感覚”が自然と身についていくからです。
「早くして!」「ちょっと待っててね」
と、よく言ってしまうことがありますが、それが具体的にどれくらいの時間なのかわかりませんから、子どもが時間や時刻を意識して生活していくことは難しいですね。
そんなときに、お子さんの腕時計があれば、
「これは30分くらいでやってみようか?」⇒時間感覚
「〇時になったら、おうちに帰ろうね」⇒時刻感覚
というように伝えることができ、お子さんも自然と時間や時刻というものを肌で感じながら、理解していきます。
こうして家庭の中で時間・時刻を意識して根づかせていくことで、お子さんの時間を見通す力が身についていき、ダラダラ夏休み解消のための確実な一歩になっていくでしょう。
隂山先生からのメッセージ
1学期の成績をもらったら、まずは3月までの学習内容の見通しをもって、夏休みにどんなことをして過ごせばよいかを親子で考えてみましょう。
また、「時間使いの達人」になるためには、時間感覚・時刻感覚を家庭の中で根づかせていくことが大切。それに、夏休みという時間はうってつけです。
それ以外にも、夏休みにしかできないような読書や外遊びなどに没頭する経験は知的好奇心を引き出し、決定的にお子さんの学習の原動力になっていきます。これらの戦略をもって臨めば、きっと楽しく有意義な夏休みになっていくでしょう。
夏休みのおうちでの学習にも役立つ!
隂山先生の著書もオススメ
この記事の監修・執筆者
かげやま ひでお/岡山大学法学部卒業後、教職に就く。兵庫県朝来町立(現・朝来市立)山口小学校在職時に反復学習で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。2003年広島県尾道市立土堂小学校長に全国公募により就任。2006年立命館大学教授及び立命館小学校副校長を経て、現在、隂山ラボ代表。教育クリエイターとして、全国各地で学力向上アドバイザーを務め、講演会活動を行っている。『本当の学力をつける本』(文藝春秋)、『学校を変える15分 常識を破れば子どもは伸びる』(中村堂)ほか、著書多数。
隂山メソッドを教材化したドリルは「徹底反復シリーズ」(小学館)、「早ね早おき朝5分ドリルシリーズ」(Gakken)など、累計1500万部に及ぶ。
隂山英男HP
http://kageyamahideo.com/
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