【医師監修】生まれつき疲れやすい体質…HSPママのための子育てお悩み解決法

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【医師監修】生まれつき疲れやすい体質…HSPママのための子育てお悩み解決法

他人と比べて、「とても疲れやすい」「相手の顔色をうかがってしまう」「子どもの感情に引っ張られる」…など、さまざまな感覚刺激に敏感に反応してしまい、その結果疲れ果ててしまう。

そんな悩みを抱えるHSPのママへ、HSPの特徴やメカニズムや対処法を、具体的な事例とともにご紹介します。精神科医の長沼睦雄先生に教えていただきました。

お話:十勝むつみのクリニック 院長 長沼睦雄
イラスト:sayasans(https://sayasans.tumblr.com/

目次

敏感すぎるのは生まれつき!? HSPの特徴とメカニズム

HSP(Highly Sensitive Person)は、「とても敏感な人」と訳され、生まれもった気質です。

人の言葉や表情に過敏に反応したり、大きな音や光が苦手だったりします。自分の意思とは関係なく、周囲の環境に無意識に反応するため、疲れやすかったり、生きづらさを感じたりする人が多いといわれています。例えば、以下のような傾向が挙げられます。

刺激に敏感

HSPの人は、他人よりもかなり敏感な感覚をもっているため、刺激を必要以上にたくさん受け取ってしまいがち。

他の人が気づかず流しているような音や光、人の感情などを、無意識に感覚情報として取り込んで反応してしまうため、どうしてもストレスが大きくなります。

ポイント

人は、自分にとって嫌な刺激を受けたとき、神経・免疫・ホルモン系による「一次反応(急性期反応)」を起こして対処します。
これで対処しきれないような強烈な、あるいは慢性の刺激に対しては各系が「二次反応(慢性期反応)」を起こして対処します。

敏感すぎるHSPの人は、自分では対処しきれないほどたくさんの嫌な刺激を受け取ってしまい、二次反応による慢性炎症を脳や身体に起こしてしまうと考えられます。

周囲の人の影響を受けやすい

HSPの人は、相手の表情や雰囲気、声や音調などから気持ちを汲み取るなど「共感性」に長けています。これは、生まれもった繊細な神経と、豊かな感受性によるものといえるでしょう。

他人の怒りや悲しみ、つらさなどのマイナス感情はもちろん、嬉しさや楽しさなどのプラスの感情にも、とても強く影響されてしまいます。

ポイント

感情への共感性を超えて、他者に過剰に気をつかい周囲の他者に合わせてしまう傾向(過剰同調性)が強い人もいます。
自分と他人とを区別する境界線が薄く、相手の気持ちを受けすぎて自分の気持ちを守れない状態になってしまいます。
境界線は、成長にしたがって育まれますが、生まれもった特性や気質、自己主張しにくい環境での育ちにより、境界線の形成が遅れ、壁も薄くなってしまいます。相手の気持ちを推し量りすぎて、自分の気持ちを吐き出せずに育つHSPの人も多いのです。

刺激を求めるHSS

HSPの人は7割が内向型で、内省的で静かな生活を好み、衝動的ではなく危険は冒しません。

残りの3割は、好奇心に満ちてやる気があり、衝動的で刺激を好む「HSSHigh Sensation Seeking)」という気質をあわせもっています。

この場合、移り気で神経が高ぶりやすく、刺激に圧倒されやすく飽きっぽいのが特徴で、新しい経験を求めますが動揺するような事態や危険は避けたいという特徴をもちます。好奇心から行動した結果、ついやりすぎて疲れ果ててしまうことになります。

HSPといっても、敏感さの程度や内容はさまざまですし、HSSをどの程度もっているかで、反応の仕方や疲れやすさは違ってきます。

敏感すぎるHSPママの、子育ての悩みにお答え!

長沼先生に、HSPのママのお悩みに答えてもらいました。

事例1 楽しいレジャーなのに、帰宅するとドッと疲れる…

前々から楽しみにしていた家族での予定。準備万端で出かけたけれど、帰宅するとグッタリ…。次の日は私だけ寝込んでしまいました。

自覚とルーティーンで自分を守る!

敏感すぎるあなたは、家族の要求をすべて満たし、きちんとやり遂げるまで休めないと感じてしまうことでしょう。また過去の経験や未来の出来事などを考え、周囲の人に気をつかい、情報や感覚の刺激を受けすぎてしまいます。

まずは自分がとても疲れやすい体質であることを自覚しましょう。

出かけた翌日は、疲れを癒すために、ひとりでゆっくりと過ごせるスケジュールを組んでおくのがおすすめです。

また、お出かけ前にも「ルーティーン」で自分を落ち着かせる時間と空間をもつとよいです。ふだんと同じことをすることで安心感が得られ、これからの行動をシミュレーションする余裕ができます。呼吸法、ポーズ、お祈り、気合い、魔法の言葉、ツボ押し、アロマなどで、安心の自己暗示をかけてみてください。

事例2 子どもが泣くと自分のことのように悲しくなってしまう

友だちとケンカをして泣いている我が子を見ると、つらくて自分のことのように悲しくなってしまいました。どんな風に考えれば良かったの?

境界線を引く

それは、あなたがHSPである証拠です。共感性が強くて感情移入しやすいあなたは、自他の区別をする境界線が薄いために過剰同調を起こしているのです。

もしかすると、あなたが小さい時の自分の姿と重なってしまうのかもしれませんね。

そんなときは、泣いている子どもの気持ちにしっかり共感し、味わい、理解してあげることです。「そうか、そうか、悲しいね、くやしいね、つらいね」「よくわかるよ、泣いてもいいいんだよ」と心の中で言ってあげてください。あなたの昔を思い出したなら、一緒に泣いてあげたらいいでしょう。

そして、ケンカしている二人に近づいて、「どうしたの?何かあったの?」と二人を分けて、二人だけの所で、あなたの子どもの言い分をしっかり聞いてあげることです。大切なのは、マイナス感情を恐がったり嫌がったりせず、共感しつつも心の距離をとって、理性的に対処することだと思います。

事例3 保育園に行きたくないと言い続ける子ども。私もつらいし、どうすれば良いの?

慣れれば大丈夫と思っていたけれど、子どもはずっとこの世の終わりのように泣いています。保育園=かわいそう、に思えます。私が会社を辞めるべき?

自分も子どもも責めないで

HSP気質でないママでも、子どもにこのように園を嫌がって大泣きされると、「がんばって」とは言いにくくなるものです。

HSPのママであれば、「このままだと、ずっと行けなくなるかも」「園にいけなかったら、どうなってしまうの?」「園に迷惑かけているのでは?」「私の子育てがわるいのかしら?」などと葛藤と不安に苦しんでしまうことでしょう。

また、ひといちばい敏感な子であれば、適応を強いられると心がとても疲れ果ててしまいます。自分を受けとめてもらえなかったり無視されたりすると深く傷つきます。無理な登園が促されることで将来にまで影響する心の傷ができてしまいます。母親の期待に応えられない自分を責めてもいます。

そんなとき、子どもも自分も園の先生も責めることなく解決するには、「今、無理しなくていいんだよ」「必ず、元気に園に行ける時が来るよ」「今は、休んでもいいんだよ」としっかり言ってあげることです。

「甘やかしてはいけません」「わがままになるよ」などと、周囲に言われるかもしれません。でも、厳しくしても余計にパニックになり、よくはなりません。

不安と恐怖でいっぱいになっている子どもにとって一番の解決策は、絶対に怒らない人、否定しない人、好いて受け入れてくれる人、肯定してくれる人たちに囲まれて甘えられることです。

変化のカギは安心感なのです。今を認めてあげることで、安心が生まれ変化が起きます。

敏感すぎるHSPママが子育てをするとき、大切にしたい3つのこと

共感しながら心の距離を保つ

HSPのママは、子どものつらさに共感しすぎて、感情を揺さぶられ、冷静になれないこともあるでしょう。逆に、感情を抑えて「~すべき」と防衛線を張り、子どもに押しつけたりしてしまうかもしれません。大切なのは、共感しながらも、のみ込まれないようにすることです。そのためには、子どもとの間の境界線をしっかりさせ、心の距離を保つのが大切です。

自分の心の不安に目を向けてみる

HSPのママは、親に過剰な適応を強いられて苦しい思いをして育った人も、逆に敏感さゆえに何でも許されて育った人もいるかと思います。その反動で、自分の子には過保護になったり過干渉になったりするかもしれません。そんな自分を、頭ではやりすぎだとわかっていても、どうしても子どもを守りすぎてしまうことはありませんか。

そんなときは、まずは自分の心の不安に目を向けてください。

あなたの心を今も縛っている、親から言われた言葉を思い出してみましょう。そこに解決のヒントが見えてくるはずです。

敏感すぎて疲れた心身を癒す

HSPのあなたは、親や周囲に気をつかい「いい子」に育ったのかもしれません。今も「いい子」の殻を破れずにいるのかもしれません。

自分より他人の気持ちを優先させ、自分のことはいつもあと回し、そんな生活を今もしていませんか。

自分を守り、肩の力を抜くのに、後ろめたいことなどありません。自分が弱ってしまっていては、子どもの面倒を見るどころではなくなります。

まずは、疲れた心身をしっかりと養生しましょう。質の良い食事で腸内環境を整え、適度な運動で身体を温めます。ひとりになる時間をもち、静かに休みましょう。笑顔がなくなったら要注意。心が止まっている証拠です。話す、書く、運動する、行動するなどで、心の流れを保ちましょう。

この記事の監修・執筆者

十勝むつみのクリニック 院長 長沼 睦雄

ながぬま むつお/十勝むつみのクリニック院長。
北海道大学医学部卒業。平成20年より道立緑ヶ丘病院精神科に勤務し、小児と成人の診療を行ったのち、十勝むつみのクリニックを開院。
HSC/HSP、発達障害、発達性トラウマ、愛着障害などの診断治療に専念し、脳と心と体と魂を統合的に診る医療を目指している。
『敏感すぎる自分を好きになれる本』(小社刊)など著書多数。

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