衣・食・住の「住」に関わる掃除や片付けは一生ついて回ります。部屋が散らかったり汚れたりしていると、気分が滅入ることも…。でも、大人になっても片付けや掃除が苦手だったり腰が重かったりする方もいるのではないでしょうか。
そこで、子どものころから身につけたい、片付け・掃除の習慣について、室内環境改善コンサルタントの山口由紀子さんにお話をうかがいました。
お話/山口由紀子(おそうじジョーズ 代表)
1 片付け・掃除の習慣を身につけると、子どもの力が伸びる!
片付けとは、「散らかっているものを片付けること」です。
掃除とは、「室内の空気の環境をきれいにすること」です。
窓を開けて空気を入れ替えてゴミやホコリを取り除き、きれいな空間を保つ作業を習慣化することで、子どもにはこんな力が身につきます。
ものを見極める力・判断力
部屋が散らかっていると判断したり、“汚れたから掃除をしよう”と決めたりする力がつきます。
段取り力・思考力
片付けでは、大きいものと小さいもの、どんなものから手をつけると片付くのか、見通しをもつことができるようになります。
掃除においては、上から下、奥から手前に掃除していくことが基本です。最適な掃除の手順を自分で考える力が身につきます。
忍耐力・集中力
片付けや掃除が終わるまでがんばる力が身につきます。
これは、相手の話を聞いたり、勉強などに集中して取り組んだりすることにもつながります。
片付けや掃除が習慣になると、いつも手入れの行き届いた清潔な部屋に、いつでも人を招くことができるため、人とコミュニケーションを取れる機会が増えるというメリットなどもあります。
2 〈片付け編〉片付けの習慣づくりは、いっしょにやることから!
親子で5分から始めよう
保護者がいっしょに片付けを行うことが鉄則です。
子どもは大人のまねをすることが楽しいので、保護者がいっしょにやることでお手本を見せるのがベストです。
そして、うまく片付けることができなくても、危険を伴う場合以外は手や口を出さずに、「自分でできた」「片付けができる!」という自信がもてるように、たくさんほめて、感謝の言葉を伝えてください。
初めは、タイマーをかけて、親子で5分間だけ片付けをしてみましょう。
タイマーが鳴ったら、片付け途中でもやめてかまいません。
慣れてきたら、最長15分まで取り組んでみてください。
内容は、たとえば
- 引き出しを閉める
- 飴の空袋をゴミ箱に捨てる
などからで、十分です。
ただし、何気なく「これポイしてね」と伝えても、初めは子どもにはわかりません。
- 捨ててよいものと捨ててはいけないものの判断
- どこに捨てればよいのか
という行動ひとつを取っても、子どもにはハードルが高いのです。
子どもが捨てやすい動線にゴミ箱を置いて、「飴の袋は中身が入っていないからいらないね。ゴミ箱にいっしょに捨てようね。ゴミ箱はここよ」と知らせます。いっしょに捨てることができたら「よくできたね、ありがとう」と必ず伝えましょう。
説明することで子どもの理解が追いついてくると、「できたね」「ありがとう」と言われることもうれしくて、積極的にゴミを捨ててくれるようになってきます。
ポイント
子どもが「これはゴミ?」と聞いてきたら、「あとでね」と言わずにその場で判断しましょう。捨てられたら、感謝を。
子どもの自己有能感・自己肯定感の育ちにもつながります。
子ども専用のおもちゃボックスを用意しよう
子どものおもちゃを片付けるカゴや箱を用意しましょう。片付ける場所が明確になっていると、大人は伝えやすく、子どもも判断しやすいです。
「おもちゃのおうちはどこ?」と尋ねると、1歳でも「ここ」と言ったり指さしして教えてくれたりする子もいます。
「そうだね、いっしょにおうちに帰してあげようね」と、親子で片付けましょう。
違うところを「ここ」と言ったときには「違うよ」と全否定せずに、「ママ(パパ)はこっちがいいと思うな」など、さりげなく、正しい場所がわかるようにフォローするとよいでしょう。
ポイント
イヤイヤ期で「片付けない!」というケースもあることでしょう。
そんなときには、「いっしょにやろうか」と誘ってみましょう。「きょうはイヤ!」と言うときには、保護者が片付ける日があってももちろんOK!
“遊んだあとは片付けるもの”という意識をもてるように、子どもに見えるところで片付けるとよいですよ。
また、この時期はご褒美作戦もあり。ご褒美には、「片付けたら公園に行こうか」「終わったらだっこがいいかな?」など、子どもの好きなことを設定するのがオススメです。
3 〈片付け編〉保護者が「片付け」苦手ならこの方法!
ここまで、子どもが身につけたい習慣についてお伝えしてきましたが、実は保護者自身が片付けが苦手…何から始めよう…というかたも多いのではないでしょうか。
そんなかたも大丈夫!
今日から取り組める片付け習慣を2つお教えします。
寝る前にテーブルの上だけ片付ける
夜は、テーブルの上のものだけを紙袋に全部入れて、何もない状態にしましょう。
ほかのところは散らかったままでかまいません。
ポイント
明らかなゴミはその場で捨てましょう。
大事なことは、何も考えなくてもできる(袋にまとめて入れる)ワンアクションを設定することです。
翌朝、起きたら窓を開けて、きれいなテーブルでお茶でも飲んで、一息ついてください。
時間が経つにつれて、またテーブルの上も散らかっていきますが、夜になったら再び紙袋にすべてを入れて、テーブルの上だけは何もないようにしましょう。
「今朝もテーブルの上がきれいですてき!」と、昨夜の自分をほめてあげてくださいね。
そうして、翌朝のテーブルの上には何もない状態が習慣になるまで続けてください。
それが当たり前になると、ほかのところにも目がいくようになるかもしれません。
子どもと競争する
子どもがおもちゃや幼稚園のバッグを片付けるのと、大人が家の片付けをするのを、同じタイミングにしてみましょう。
「どっちが速いか競争しよう。勝ったほうがチョコレートね」などと、子どもを誘って片付けタイムを作ってしまえば驚くほど喜んで乗ってくれますし、大人も片付ける機会ができて一石二鳥です。
きょうだいで競争して片付けてもらうのもよいですよ。
終わったあとは、「きれいになって気持ちがいいね」「きれいにしてくれてありがとう」と、清潔にすることは心地がよいことと伝えましょう。
4 〈掃除編〉年齢別 掃除の習慣はまねっこから!
片付けにも言えることですが、掃除に関して「まだ1歳だから…」と保護者が限度を設けてしまうのはもったいないこと。
1歳には1歳、2歳には2歳なりにできる力があるのです。ぜひ、その子の力を信じてあげてください。
とくに掃除は道具を使うので、子どもは興味津々。
保護者が普段から、子どもの目に入るところで掃除をしている環境がとても大切です。
「まねをしたい、自分もやってみたい」という思いでワクワクしている子どもと、いっしょに掃除に取り組んでみましょう。
1~2歳ごろ
●はたきをかける
はたきは軽いので、1歳からでも持ちやすいお掃除アイテムです。
3~4歳ごろ
●水切りワイパー
水が切れたことが一目でわかりやすいです。
●ハケでサッシなど細かいところを掃除する
窓のサッシやすき間などは、子どもの目線で汚れを見つけやすく、小さい手で掃除しやすくてオススメです。
●小さいほうきで掃く
ベランダや玄関などの掃き掃除は、落ち葉や砂集めをお願いすると、子どもがわかりやすいでしょう。子どものサイズに合うよう、小さめのほうきを用意すると、さらにやる気がアップ!
●掃除機をかける
車のおもちゃのようで喜んでやる子も。ハンディータイプの掃除機なら、コンセントや重さが邪魔をせずにかけやすいです。
5歳ごろ
●雑巾がけ
雑巾を絞るところからチャレンジ!
絞るときは雑巾を縦にして、利き手を上に、もう片方の手を下に添えて、手首を外側にひねるようにすると、よく水が切れます。水が出なくなるまで絞ることを伝えましょう。
●テーブルの形に合わせて拭く
テーブルの拭き掃除自体は、1歳ごろからでも◎。
四角いテーブルを丸く拭いていたのが、このころには、形に合わせて四角く拭けるようになるでしょう。
保護者だけでいっしょうけんめい片付けや掃除をするのではなく、子どもを巻き込んで行うことで、子どもの習慣づけにもなりますし、初めはうまくできなくてもだんだんとできるようになってくると、家庭の戦力にもなってくれます。
保護者に「ありがとう」と笑いかけられたりほめられたりすると、子どもはうれしいもの。それに、保護者の心の余裕にもなりますよ。
難しく考えずに、生活の一環として、また、親子のコミュニケーションの時間のひとつとして取り入れてみてくださいね。
この記事の監修・執筆者
おそうじジョーズ 代表。きれいマイスター協会 代表。福祉住環境コーディネーター2級。著書に『10歳までに身につけたい 子どもが一生困らない片づけ・そうじのコツ』(青春出版社)、『室内環境改善コンサルタントが教える片手でカンタン掃除術』(セルバ出版)
こそだてまっぷから
人気の記事がLINEに届く♪