子どもたちは毎日の生活や遊びの中で、頻繁にけがをします。
家庭でできる手当ては? 病院に行ったほうがよいけがは?
そんな身近な疑問におこたえする連載です。
今回は、公園などの屋外遊びで起こりやすいけがの手当てについて、みやのこどもクリニックの宮野孝一先生にうかがいました。
監修/みやのこどもクリニック 院長 宮野孝一
1 こんなときどうする? とげが刺さった
子どものやわらかい皮膚はとげが刺さりやすく、木製遊具やベンチなどがある屋外でよく起こるけがのひとつです。
まずはCheck!
□とげの刺さった部位
□とげの長さ、傷の深さ
□どこでけがをしたか
手当ての仕方
(1)道具を消毒する
とげ抜き、ピンセット、針などの道具を消毒します。アルコール消毒、または熱湯をかけるか火で軽くあぶります。
(2)とげを抜く
とげを押し込まないように、傷口の周りをつまんだり押さえたりして、とげ抜きかピンセットでとげをつかみ、そっと抜きます。
(3)取れない場合は針を使う
(1)で消毒した縫い針や安全ピンで、とげに沿うような向きで針を刺したあと、(2)と同様にとげを抜き、とげの先端を出します。
(4)流水で流して消毒する
傷口を水で洗い、消毒します。
こんなときは病院へ
- とげが深い所まで刺さっていて、痛みが強い
- 毒性のある生き物(毛虫やクラゲなど)
- 植物などのとげが刺さった場合
- 腫れや痛みが強い
小さなとげであれば、取れなくても自然と出てくることが多いです。
ただ、雑菌のついたとげなどは中で化膿する場合もあるため、痛みが残ったり赤く腫れたりするようであれば受診すると安心です。
2 こんなときどうする? かぶれた
かぶれの原因物質
かぶれの原因物質には、「植物」「金属」「日用品」「化粧品」などがあります。
とくに屋外遊びでは、植物、金属、日用品でかぶれが起こる場合が考えられます。
「植物」でのかぶれには、刺激性皮膚炎と、アレルギー性接触皮膚炎があります。
刺激性のかぶれは、とげなどによる物理的な刺激と、葉や茎、樹液などに含まれる物質による刺激があります。
アレルギー性のかぶれは、花や葉、茎、樹液などに含まれる物質に反応して、24~48時間程度たってからかぶれが発症します。
「金属」は砂場の砂にも含まれており、普段はかぶれなくても、体調によって症状が出る場合があります。
「日用品」は、ゴムや洗剤、薬品などがあります。
まずはCheck!
□何でかぶれたか
□かぶれの程度
手当ての仕方
(1)着替える
衣服が子どもに触れないように着替えさせます。脱いだ服には原因物質が付着している場合があるため、ビニール袋などに入れます。
(2)流水で洗う
かぶれた部分を水で流します。
(3)抗ヒスタミン軟こうを塗る
かゆみや腫れを抑える効果があります。
こんなときは病院へ
- 水疱ができて、かゆみが強い
- 2~3日たっても症状が治まらない
- 痛みがある
- かき壊してとびひの症状が出た
3 こんなときどうする? 虫に刺された
この時期、屋外遊びでとくに多いのが、虫刺されです。
毛虫や蚊、ハチなど、何に刺されたかによって対応が異なります。
まずはCheck!
□何に刺されたか
□傷の部位
手当ての仕方~毛虫・毒ガ~
(1)患部を流水で洗う
毛に触れないように、患部をこすらずに流水で洗います。石けんがあればよく泡立てて、やさしくなでて洗い流します。
(2)残った毛を抜く
毛が残っていたら、粘着テープで取り除きます。
(3)抗ヒスタミン軟こうを塗る
かゆみや腫れを抑える効果があります。
こんなときは病院へ
- 痛みやかゆみがひどい、発疹が出ている(かくと発疹が広がり、眠れないほどかゆくなったり、腫れたりします)
- 毛が取れない
毛虫や毒ガの毛は、直接虫に触っていなくても風にのって飛んできたり、服についていたりする場合もあります。じんましんと似た発疹のため、屋外遊び後に発疹が出た場合は、受診の際に伝えましょう。
毛のついた服は、そのまま洗濯するとほかの服に移ります。処分するのがベストですが、洗う場合はゴム手袋を着けて手洗いを。
手当ての仕方~ハチ~
(1)針を抜く
針が残っているときは、消毒したとげ抜きで針の根元をつかんで引き抜きます。とげ抜きがない場合や数が多い場合は、粘着テープでもOK。
(2)毒を抜く
傷の周囲をつまんで毒を押し出します。
(3)流水で洗う
こすらずに流水でよく洗い流します。
(4)抗ヒスタミン軟こうを塗る
かゆみや腫れを抑える効果があります。
こんなときは救急車を呼ぶ・病院へ
- スズメバチ、アシナガバチ、クマバチに刺された
- 同じ種類のハチに刺されたことがある(ハチに刺されると、体内でアレルギー反応を起こす物質が作られます。そのため、2度目に同じ種類のハチに刺されると、アナフィラキシーショックを起こすことがあります)
- 針が取れない
- 複数箇所を刺された
- 腫れや痛みが強い
- ショック状態(呼吸困難、発汗、意識障害、おう吐、発熱、発疹など)
手当ての仕方~蚊・ブヨ~
(1)患部を流水と石けんで洗う
石けんをよく泡立てて、やさしくなでて水で洗い流します。
(2)かゆみどめを塗るか冷やす
市販のかゆみ止めの軟こうや虫刺され薬を塗ります。冷やすとかゆみが抑えられます。
!かき壊すと黄色ブドウ球菌が繁殖して、とびひになることもあります。ひどくかいてしまう場合は通気性のよいガーゼを貼って保護を。とびひになってしまった場合は病院へ。
予防策として、子どもが使える虫よけスプレーやシールを使用するほか、刺されたあとにかき壊さないように、普段から爪を短く切っておきましょう。
こんなときは病院へ
- かき壊してとびひの症状が出ている
- かゆみが強い
4 こんなときどうする? 動物にかまれた
イヌやネコのほか、ヘビやニワトリ、ハムスターなどの小動物など、まずはかんだ動物を確認しましょう。
基本的には応急手当後に、外科を受診します。
まずはCheck!
□何にかまれたか
□傷の深さ
□出血の有無
□意識はあるか、呼びかけに反応するか
手当ての仕方~イヌ・ネコ・ニワトリ・ウサギ・ハムスターなど~
(1)傷口を洗う
流水で、傷口の中までしっかりと洗います。
(2)止血し、消毒する
出血がひどい場合は止血をしてから消毒をします。
(3)冷やして病院へ
滅菌ガーゼで傷口をおおい、病院を受診します。
!動物は破傷風菌や狂犬病ウィルスのほか多くの雑菌を持っているため、創傷パッドで傷をふさがずに受診しましょう。
こんなときは救急車を呼ぶ・急いで病院へ
- ショック状態
- 意識がない
- 顔色が悪く、もうろうとしている
- けいれんしている
- 吐き気があったりおう吐したりする
- 強くかまれた
- 顔をかまれた
- 出血が止まらない
- 目をつつかれたりひっかかれたりした
- 傷が深く、貫通している
手当ての仕方~ヘビ~
(1)傷口より心臓に近い部位をしばる
毒が全身に回らないように、布やガーゼでしばります。
!毒ヘビの毒の吸い出しはNG。救助者の口内に傷や口内炎があると、そこからかまれた子の血液で感染するおそれがあります。
(2)安静にして、静かに救急車に運ぶ
救急車を呼び、傷を心臓よりも高くして運びます。
!万が一毒ヘビである場合の危険性を考慮して、すぐに救急車を呼びます。
一度かぶれたり腫れたりしたことがあるものは把握し、子どもの様子や傷の具合をよく確認するようにしましょう。
この記事の監修・執筆者
みやのこどもクリニック院長。日本小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定専門医であり、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などの診療にも積極的に取り組む。
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