指しゃぶりや爪かみなど、子どもによくみられる癖は「習癖」と呼ばれるもの。必要以上に気にしなくても自然となくなっていくものから専門家に相談したほうがよいものまで、さまざまです。そこで、ママやパパが気になる「子どもの癖」について、あきやま子どもクリニック院長の秋山千枝子先生にお伺いしました。今回から2回にわたりお届けします。
「習癖」とはどんなもの?
おもな「習癖」には、指しゃぶりや爪かみ、性器いじり、抜毛癖、歯ぎしりなどのほか、身体の動きを伴う頭振り、頭たたき、体揺らし、無意識に同じ動き(まばたきなど)を繰り返すチックがあります。そのほか、
睡眠に関するもの:夜驚症(寝ているときに突然泣き叫んだり暴れたりする)、夢中遊行症(寝ているときに突然起き上がり歩きまわる)。
食事に関するもの:過食、異食、食思不振など。
排泄に関するもの:遺尿症、遺糞症など。
言語に関するもの:吃音症、選択性緘黙(特定の場所で話ができない)
など、数多くあります。いずれも、通常の発達の過程で見られることがあります。
「習癖」は子どものストレスサイン?
子どもは自分の気持ちを言語化できないために身体症状や行動で表現することがあり、「習癖」も子どものなんらかのサインとして受けとめられてきました。そのために子どもの「習癖」を目にすると、その原因探しをして、途方にくれるママやパパが少なくありません。もちろん、なんらかのストレスがあれば軽減させる必要がありますが、ほとんどが自然に改善していくもの。ただ「習癖」には
①気にしなくてよいもの
②大人が対応したほうがいいもの
③専門家に相談したほうがよいもの
の3つがあります。それぞれの内容を確認してみましょう。
気にしなくてよい「習癖」
就学前までのチックや吃音は大人が気にしなくてよいとされています。「どうしたの?目が痛いの?」「もう一度言って」などと大人が気にして話題にすればするほど、症状が出現してきます。保護者は気にせず、規則正しい生活を心がけて自然に消失するのを待ちましょう。また、夜驚症、夢中遊行などは、起床時に子ども自身は覚えていないことが多いため、話題にする必要はありません。ただし、睡眠後2時間以内に起こるため、大人は危険がないように見守ることは必要です。
就学前の「習癖」の多くが成長とともに自然に減少するように、小・中学校でも、ある時期に多くみられ、その後に減少するものがあります。たとえば、小学校低学年では夜驚症や歯ぎしり、高学年では爪かみや夢中遊行、チック。中学生では抜毛癖などです。
保護者が対応することで改善する「習癖」
指しゃぶりや爪かみは、子どもによくみられる癖です。たとえば指しゃぶりの発生頻度は、1歳半の子どもでおよそ30%、3歳児でおよそ20%、5歳児でおよそ10%と、年齢とともに減少傾向にあり、爪かみの発生頻度は1歳半で0.2%、2歳児で1.4%、3歳児で3.7%、5歳児で4.3%、小学校4~6年生で44.2%と年齢とともに増加傾向にあります。ただ、ほとんどの場合で大きな問題になることはなく、基本的には発達の過程で一過性にみられる生理的な行動なのです。ママやパパは、過剰な心配をせず無理に禁止しないほうがよいでしょう。特に指しゃぶりは、子どもが手持ちぶさたなときに現れることが多いので、そのときは、絵本やおもちゃを手渡したり、外遊びに誘うなど、子どもの関心をそらし、指しゃぶりをする機会を失くすことが効果的です。
口やかましく頻回に注意をすると、余計に意識してひどくなったり、隠れて行う可能性があります。また、子ども自身が「やめたい」という気持ちがある場合、たとえば爪を噛みたくなったら握りこぶしをつくって太ももに押しつける、口に入れると苦いマニュキュアをぬる、などの方法を試してもOK。
そのほかの性器いじりや抜毛癖、歯ぎしり、頭振り、頭たたき、体揺らしも同様の対応で改善されていきます。
次回は、③専門家に相談したほうがよい「習癖」についてご紹介します。
この記事の監修・執筆者
子どもの人権を大切にすることを基本に「病気があってもなくても、障がいがあってもなくても、すべての子どもたちに発達支援をする」という目標を掲げる、あきやま子どもクリニック院長(東京都三鷹市)。日本小児科医会理事。東京都母子保健運営協議会委員。
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