赤ちゃん返りとは?上の子にどう対応したらいい?【専門家監修】

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前回、「上の子の赤ちゃん返り、みんなどうしてた?」で、先輩ママたちの声を紹介しました。2人目の誕生に喜びつつも、上の子の赤ちゃん返りで、とにかく抱っこをせがまれたり、「見て見て!」アピールがすごかったり、できていたことができなくなって手がかかったり…。下の子のお世話をしながらだと、本当に大変そうでした。

そこで今回は、元保育士で、日本児童教育専門学校専任講師の、今泉良一先生に、上の子の赤ちゃん返りへの対応について、お話をうかがいました。

お話:今泉 良一(日本児童教育専門学校 専任講師)
イラスト:北村 友紀

目次

赤ちゃん返りは、「ぼく、わたしを見て!」という注目願望

下の子が生まれる前は、みんな楽しみにしていたのに…意外と大変なのが上の子の「赤ちゃん返り」。どうして、「赤ちゃん返り」をしてしまうのでしょう。

それは、「ぼく、わたしを見て!」という注目願望が一番の理由です。

今までは、自分1人に注がれていた両親の気持ちが、弟や妹に移ってしまうのではないか? という不安な思いから、「赤ちゃん返り」という行動として表に現れてきます。

「やってやって!」と甘えたり、ぴったりとくっついてそばから離れなかったり、泣いてわがままを言ったり、赤ちゃん返りの現れ方は子どもによってさまざまです。

ほかにも、環境の変化による「なんだか不安」という気持ちから、「赤ちゃん返り」が起きることもあります。例えば、引っ越しや、両親の別居、進級などです。

では、上の子の「赤ちゃん返り」の困った行動に関して、どのように対応してあげればよいのか、具体的にみていきましょう。

「とにかく、抱っこをせがまれて…大変!」なときは?

アンケートで最も多かったのが、「抱っこをせがむ」でした。下の子を抱っこひもで抱いてしている上から、上の子を抱っこしなければならず大変だった、という声や、外に出るとまったく歩かず、「抱っこ抱っこ!」で困った、といった声がありました。

今泉先生からアドバイス

下の子のお世話もしながらですから、精神的にも体力的にも、大変な時期ですね。

でも、子どもが「抱っこ抱っこ!」とせがむのは、いつくらいまででしょうか。小学校の高学年や中学生になっても「抱っこ!」と言う子はいないですよね。「抱っこ抱っこ!」とせがむのは、子ども時代のほんの一時期。あっという間に過ぎてしまいます。

わたし自身の経験で言うと、わたしも弟が生まれたときに母親に抱っこをせがんで、大変だったと聞いたことがあります。

そんな時、母は園の担任の先生から、「抱っこできるのは、今だけですよ」と言われたそう。母も「そうか…」と思って、できるだけ抱っこの時間を増やしていったら、いつの間にか「抱っこ抱っこ!」と騒がなくなったそうです。

わたしもその担任の先生が大好きだったので覚えていますが、保育の仕事を経験していくなか、いろいろな子どもたちの姿を見てきて、今ではこの言葉に深く納得させられます。

加えていうなら、子どもから「抱っこ抱っこ!」と言われる前に、親の方から、子どもをぎゅっと抱きしめて、スキンシップをはかるのもよい方法だと思います。

ただ、両手がふさがっていたり、とても疲れていたりなど、どうしても抱っこできないときもあります。

そんなときは、座って膝に載せたり、手をつないだり、頭をなでたり、ほっぺに触れたり、おでことおでこをくっつけたりなど、できる範囲で体に触れて、スキンシップをはかりましょう。それだけでも、子どもは満足できると思います。

下の子が泣くたびに、「見て見て!」「聞いて!」というときは?

下の子が泣いたり、下の子の世話をしようとしたりすると、「見て見て!」「聞いて!」「こっち見て!」とアピールする姿があげられました。

今泉先生からアドバイス

自分にだけ注がれてきた親の気持ちが、他へ移ってしまうのではないかと、不安になっているのかもしれませんね。

 下のお子さんのお世話を、一緒にしてもらうのはどうでしょうか。

「ママがトイレに行く間、泣いちゃうかもしれないから見ててね」とか、「オムツを持ってきてくれる?」など、できる範囲でお手伝いをしてもらいましょう。

お手伝いをしてくれたら、「○○くんが手伝ってくれるから、ママ本当に助かったよ!」と、上の子が満足できるよう、がんばりを認める声かけをするとよいでしょう。

「〇〇くんも、こんなに小さかったけれど、今ではこんなに大きく育ってくれて、ママうれしいな」などと話してあげるのも効果的です。

ママのそばを離れないときは?

ママのそばにぴったりとくっついて、片時も離れず、何をするのも「ママじゃなきゃダメ!」で、大変でした…という声がありました。

今泉先生からアドバイス

子どもは「安心感」を求めているのかもしれません。

できる限り、2人きりの時間を増やしてみてあげてください。下の子が寝ている時や、少しの時間でもご両親に下の子を預けるなど、時間を作って2人だけで過ごしてみましょう。

一緒に絵本を読んだり、外の景色を眺めたりするだけでもOK。短い時間でも「ママと一緒にいられる安心感」で満たされたなら、ママのそばから片時も離れないという行動も、少しずつ減っていくと思います。

ポイントは、量より質です。

といっても、外出など、大がかりなことをしなくても、なにげないことでよいのです。2人だけの「秘密」を共有したり、子どもが「もう、やめてよー」と言うまで、じゃれあって遊んだりするのもおすすめです。

いろいろなわがままが増えたときは?

食事や着替え、トイレなど、できていたことができなくなり、「やって!」と言ったり、哺乳瓶で牛乳が飲みたいと言ったり、わがままが増える、といった声もありました。

今泉先生からアドバイス

わたしが保育の現場でやってきたのは、子どもたちが「とことん満足できるまでやらせる!」でした。哺乳瓶で牛乳を飲みたい子は、もうとことん哺乳瓶を使わせてあげましょう。すると、ふとした時に、はじらいが出てきたり、満足したりして、自分からやめることがあります。

また、なんでも「ヤダー」とわがまま全開なら、逆に反対のことを言ってみるのも手です。

「ごはんなんか食べないよー」と言ったら、「わがまま言わないで食べなさい!!」ではなく、その反対の、「食べなくていいよーーー」(怖くなく、優しく)と言います。すると…「やだ、食べるー!」となります。

「ぼく、起きないよ! まだ寝てる」なら、「さっさと起きなさい!!」ではなく、その反対の「起きなくていいよー! ずっーと寝ててもいいからねー!」(怖くなく、優しく)と言うと…「やだ、起きるー!」となります。

お子さんの性格にもよるかもしれませんが、一度試してみてください!

「できない!」「やって!」という場合によくやっていたのは、「○○ちゃんが、自分で履けるところ見たいな」と言ってみたり、「片方の靴下は履かせてあげるから、もう片方は○○ちゃんやってみよう!」などと声をかけてみることです。

「大人が見てくれている!」ということだけで、子どもはうれしくて、自分でやれることもあります。そして、子どもが自分でできたとき、親はオーバーなくらいほめてあげるとよいでしょう。

赤ちゃん返りは否定せず、一時的なものと捉えて

子どもの赤ちゃん返りでは、どんな行動に対しても、「自分でできるでしょ」「もうお兄ちゃんでしょ」「そんなことばかり言わないで」など、相手を否定する言葉は禁物です。

もちろん、ついつい言ってしまうこともあるかもしれませんが、そのあとのフォローができたらよいですね。

また、「赤ちゃん返り」は、一時的なものと捉えて、あまり深刻になりすぎないことが大切です。

「○○くん、きょうは自分でごはんが食べられたから、かっこいいパワーがたまったね!」とか、「○○ちゃんが、自分でお洋服着られたから、素敵なプリンセスになれるね!」などと、時にはユーモアをもって接することができるとよいでしょう。

そして、お兄ちゃんお姉ちゃんになったとはいえ、「まだ生まれてから3年しかたっていないもんね…」などと思えば、意外と冷静になれたりするものです。

ご両親も、大変な時期かとは思いますが、急にお兄ちゃん、お姉ちゃんになった子どもの気持ちにも寄り添って、対応してあげてください。

この記事の監修・執筆者

日本児童教育専門学校専任講師 今泉 良一

日本児童教育専門学校専任講師。東洋大学大学院修了。13年間、保育士を経験したのち2017年より現職。保育者養成とあわせて「子どもの表現活動」について研究している。

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