災害が起きる前に備えよう!~家族で考える防災~前編【専門家監修】

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毎年9月1日は「防災の日」です。
「防災の日」は、大規模な災害について考えたり、話し合ったり、訓練をしたりして、防災の意識を高めるために1960(昭和35)年に定められました。

防災は事前の準備が最も大切です。防災の日をきっかけに、家族で気持ちも新たに防災について話し合ってみませんか?

防災システム研究所所長の山村武彦先生に、近年高まっている災害のリスクや最新の防災の知識などについて伺い、2回にわたって教えていただきます。今回は、保護者のかたに知っておいてほしい防災の知識や対応のしかたを紹介します。いざというときのために備えましょう。

お話/山村武彦(防災システム研究所所長) 文/こそだてまっぷ編集部

目次

災害のリスクは年々高まっている?

「防災の日」とは?

9月1日は1923(大正12)年に関東大震災が発生した日であり、台風シーズンを迎える時期でもあります。
1959(昭和34)年9月には、日本に上陸した台風15号(伊勢湾台風)によって甚大な被害が生じました。

これらのことがきっかけとなり、1960(昭和35)年に9月1日を「防災の日」と定めたのです。1982(昭和57)年からは「防災の日」を含む8月30日から9月5日までが「防災週間」になりました。

どんな場所にもある災害の可能性

2022(令和4)年は関東大震災から99年経ちますが、その間に日本では100人以上の犠牲者を出す大地震が16回発生しています。つまり、日本は約6年に1度の割合で大地震に見舞われているのです。

台風は、毎年、日本の300km圏内に約12個接近してきて、そのうち約3個が上陸しています(気象庁「台風の平年値・1991年〜2020年の30年平均」より)。

集中豪雨(3時間に降った雨量が130mm以上に達した場合)の発生回数は2020(令和2)年は67.7回と、1976(昭和51)年の31.5回と比べて2.2倍近くに増えています(気象庁気象研究所「アメダス3時間積算降水量でみた集中豪雨事例発生頻度の過去45年間の経年変化」より)。

2000年以降、2011(平成23)年の東日本大震災などの地震災害、2019(令和1年)年の令和元年房総半島台風や東日本台風に伴う洪水・土砂災害など、毎年多くの自然災害が発生し、甚大な被害をもたらしています。

地球温暖化が進めば、災害のリスクはさらに高まると推定されており、今まで災害が起きていない場所でも、洪水や土砂災害など大きな災害に遭う可能性があることを意識してほしいと思います。

こちらもチェック≫【大雨や台風、うちはホントに大丈夫?】子どもがいる家庭でやっておく災害への備え

自宅や地域の危険性を確認しておこう

災害ごとに調べよう

「防災の日」をきっかけに、家族で自宅や地域の災害のリスクを確認しましょう。

地震については、自宅の耐震性がどれくらいあるのかを知っておくことが大事です。木造家屋とマンションでは、対策が変わってきます。耐震性が高い場合は、落下物に注意して、机の下などに入り、揺れが収まるのを待ちますが、耐震性が低い場合は、建物がつぶれてしまうかもしれません。そうなると、机の下は安全ではありません。このように、自宅の状況に応じた対策を考えることが必要です。

洪水については、地域の地方自治体のハザードマップで確認できます。自宅の浸水や土砂災害の危険性がわかるので、土砂災害警報情報や線状降水帯予測情報が出されたら、どんな行動を取ればよいかを決めておきましょう。被災想定区域に自宅があるなら、早めの避難が何よりも大切です。家から避難所までのルートも、実際に地図を見ながら家族で歩いてみることをおすすめします。

避難情報について知っておくことも必要です。
警戒レベルについて正しく理解し、命を守るための行動をとれるようにしましょう。

『避難情報に関するガイドライン』令和3年5月 内閣府資料より

また、大雨に関する対策として、2022(令和4)年6月から、気象庁による「顕著な大雨に関する気象情報」の提供が開始されました。次々と発生した積乱雲により、線状の降水域が数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで大雨をもたらす「線状降水帯」の発生をいち早く伝えるものです。このような新しい情報についても知っておきたいですね。

必要な情報を得る準備をしよう

災害が発生する恐れがあるとき、災害が発生したときには、テレビやラジオからもいろいろな情報が流れますが、自分や家族に必要な情報かどうかはわかりません。情報の対象となるエリアが広く、自宅が対象かどうかわかりにくい場合もあります。

気象庁はホームページで、大雨や洪水による災害の危険度の高まりを地図上で5段階の色分けで表示する「キキクル(危険度分布)」を公表しています。テレビやラジオなどの気象情報で注意報や警報などが発表されたり、急に激しい雨が降ったりしたときは、「キキクル(危険度分布)」にアクセスして、最新の情報を入手しましょう。

「キキクル(危険度分布)」には危険度の高まりを知らせる通知サービスもあります。地域を登録すれば、大雨による災害の危険の高まりを、スマートフォンのアプリのプッシュ通知やメールで知らせてくれるので、活用してください。

地域の地方自治体の防災メールやエリアメールに登録しておけば、注意報や警報、避難所の情報なども配信されます。
災害が起こってからではなく、事前に情報を得る仕組みをつくり、それを確認する習慣をつけることが大切です。

家族で防災に取り組むことが大切!

年に4回「防災用品点検の日」

防災システム研究所では、9月1日の防災の日を起点に、12月1日、3月1日、6月1日と、3か月ごとに「防災用品点検の日」を提唱し、一般社団法人日本記念日協会により認定・登録されています。

防災の日に防災に対する意識を新たにするのと同時に、防災グッズや備蓄品の点検を3か月ごとに行うことを提案しています。期限のあるもの、季節の変わり目に必要になるものを家族で確認して、入れ替えましょう。

お子さんは成長が早いので、サイズの確認もしてください。冬の前には上着を余分に入れたり、夏の前には熱中症対策になる食べ物やグッズなどを入れたりと、いざというときに防災用品が役立つように見直します。

非常用持ち出し袋に用意するもの
□懐中電灯 □携帯ラジオ・イヤホン □携帯用トイレ □タオル・石鹸・歯磨きセット □飲み水・非常食 □薬・お薬手帳 □軍手 □食品用ラップ □ビニールシート □ウェットティッシュ □マスク □カイロ □下着 □連絡先メモ □保険証と診察券のコピー □皿・コップ・スプーン □電池 □ポリタンク(折りたたみ式のもの) □ 体温計 □消毒薬 □アイマスク・耳栓 □充電器 □ビニール袋 □絆創膏 □筆記用具 など

お子さんとの連絡方法を確保して

家族でよく話し合ってほしいのが、家族が離れているときに災害が発生した場合の連絡方法です。
電話がつながりにくい場合には「災害用伝言ダイヤル(171番)」で家族に音声メッセージを残すことができます。防災週間など、体験用に番号が使えるようになる期間があるので、お子さんといっしょに使い方を練習してください。

災害伝言サービスには、各通信会社(NTTドコモやauなど)が提供する災害用伝言掲示板もあるので、家族で使用しているスマートフォンなどで確認しましょう。
数多くの災害現場で、音声通話はつながらなくても、SMS(ショートメールサービス)は通じたというケースも多くありました。

お子さんが携帯電話を持っていなかったり、使えなかったりする場合もあります。家族と連絡が取れるように、主要な連絡先を書いたメモ、公衆電話用の小銭、家族の写真などを小さくまとめて、外出するときには常に持たせるようにしましょう。公衆電話の使い方も、何度か練習しておくことをおすすめします。

お子さんが学校にいる場合は、学校で保護される場合がほとんどです。学校の災害引き取り協定では、明確にルールが決まっていて、引き取り人の登録がない場合は、たとえば祖父母であってもお子さんを連れて帰ることができないこともあります。
保護者の勤務先などが遠い場合、親戚や同じ学校のほかの保護者に一時的に預かってもらえるような方法を事前に話し合っておくことも大切です。

今回は保護者のかた向けに“高まる災害のリスク”や“防災の最新情報”をご紹介しました。
2回目は、一人で行動することも多い小学生に知ってほしい“防災の知識”についてお話しします。

この記事の監修・執筆者

防災システム研究所所長 山村武彦

1964年、新潟地震でのボランティア活動を契機に、防災・危機管理のシンクタンク「防災システム研究所」を設立。以来50年以上にわたり、世界中で発生する災害の現地調査を実施。報道番組での解説や講演、執筆活動などを通じ、防災意識の啓発に取り組み、多くの企業や自治体のアドバイザーを歴任。著書は『台風防災の新常識』(戎光祥出版)、『災害に強いまちづくりは互近助の力』(ぎょうせい)など多数。また、『一生つかえる!おまもりルールえほんぼうさい』(Gakken)を監修している。

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