お正月に、なぜおせち料理やお雑煮を食べるのかご存じですか? また、昔からのお正月遊びなどにも意味があります。お正月に食べるものや、お正月の遊びについて「行事育」を提唱する和文化研究家の三浦康子先生に教えていただきました。
文/こそだてまっぷ編集部
Q1 おせち料理って、そもそも何?
A:おせち料理は、もともと神様にお供えする料理で、今は、これを食べることで、その年の幸せや健康を願うという意味が込められています。
「おせち(お節)料理」は、「御節供(おせちく)料理」を略したもので、もともとお正月や「端午の節句」などの五節句に神様にお供えする料理を指していましたが、しだいにもっとも重要なお正月の料理を指すようになりました。神様と共に食事をすることで、神様との結びつきを深め、幸せを祈る意味があります。
おせちに入れる料理には、それぞれ健康や幸せを願う意味が込められています。その一部を紹介します。
黒豆…まめに(勤勉に)働き、まめに(丈夫で元気に)暮らせるようにという願いが込められています。
数の子…鰊(ニシン)の卵。粒が多いので、子宝に恵まれることや、子孫繁栄を願います。「ニシン」という音から「二親健在(にしんけんざい)」にも通じます。
ごまめ…カタクチイワシの幼魚を乾燥させて調理した料理。イワシを肥料にすると豊作になったため「五万米(ごまめ)」とも書き、「田作り」などとも呼ばれ、その年の豊作を願います。
伊達巻き…卵料理のひとつ。巻き物の形が書物や掛け軸に通じ、知識や文化の発展を願います。
紅白かまぼこ…紅色は魔よけ、白は清浄を意味しています。半円形は、新年の神様である「年神様」を象徴する初日の出に通じる形です。
昆布巻き…「こぶまき」は、「よろこぶ」にかけて縁起がよいとされる食べ物です。
栗きんとん…栗は「勝ち栗」と呼ばれる縁起物。きんとんは「金団」と書き、蓄財につながります。
おせち料理を重箱に詰める際は、品数を3品、5品、7品など、縁起のよい奇数にするのがよいとされています。黒豆、数の子、ごまめ(関西ではたたきごぼう)は、おせち料理に欠かせない「三つ肴(みつざかな)」とされています。おせち料理を用意する際は、ぜひ、参考にしてください。
最近は、おせち料理を購入するご家庭も増えていますね。購入したものでもよいので、お正月には家族でおせち料理を囲み、「黒豆を食べると、元気に過ごせるといわれているんだよ」「栗きんとんを食べると、お金がたまるとされているんだって」などと、その料理に込められた意味を子どもに楽しく伝えてあげましょう。
Q2 お正月に食べるお雑煮には、どんな意味がある?
A:お正月に食べるお雑煮は、年神様から分けてもらった「年魂(としだま)」=「お餅」を食べるための料理です。お餅には稲の霊が宿っていて、食べると生命力が与えられるのでハレの日(お祭りや儀式などを行う特別な日)の食べ物とされる、おめでたい食材です。
お雑煮に入れる具や味つけは、地域や家によって異なります。たとえば、東京では醤油味で、焼いた角餅を入れることが多く、京都では白味噌仕立てで、丸餅を入れて煮ることが多いなどの特徴があり、さらに家庭によっても違いがあります。
子どものころから食べてきたお雑煮で自分のルーツをたどることもできるでしょう。子どもが成長するにつれ、将来、いろいろなお雑煮に出会うかもしれませんが、「うちのお雑煮がいちばん!」と思ってくれたらいいですね。
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Q3 お正月遊びには、どんな意味やいわれがある?
●凧あげ●
A:凧は中国から伝わり、占いや戦いの道具として使われてきました。江戸時代になると、子どもが誕生した際に凧あげをして子どもの健康や成長を祈るようになったのです。その後、庶民の遊びとして広がっていきました。凧が高くあがるほど願い事が天に届きやすいとされ、子どもが元気に育つといわれています。
●こま回し●
A:奈良時代に朝鮮半島の高麗(俗称こま)から伝わったので「こま」といわれています。日本では「独楽」という漢字をあてるようになりました。こま回しは「物事が円滑に回る」に通じるので、縁起がよいとされています。また、こまがうまく回ると、子どもが早く独り立ちできるといわれています。
●羽根つき●
A:室町時代に中国から伝わった遊びで、邪気払いのために羽根つきをしたといわれています。羽根の重りに使用されているのはムクロジという植物の実で、漢字で「無患子」と書くため、「子どもが患わない」に通じます。また、羽根がトンボに似ており、トンボは、病気を媒介する蚊の天敵のため、子どもを病気から守りたいという願いも込められています。打ちそこなうと顔に墨をぬるのは、魔よけのおまじないです。女の子の初正月(赤ちゃんが生まれて初めて迎える正月)に羽子板を贈る風習もあります。
●小倉百人一首●
A:飛鳥時代から鎌倉時代の百人の歌人の和歌を、藤原定家(ふじわらのていか/さだいえ)がまとめたもので、上の句を読んで、下の句を書いた札を取るかるた遊びです。室町時代にポルトガルから「うんすんかるた」が伝来し、日本の「貝合わせ」と結びついて、花札、百人一首、いろはがるたに発展しました。
百人一首やいろはかるたは、遊びながら教養が身につくことから人気となり、江戸時代後期には百人一首の会も開かれ、お正月の遊びとして定着していったと考えられています。
●福笑い●
A:目隠しをして、顔の輪郭だけをかいた紙の上に、目・鼻・口などの絵を並べていく遊び。出来上がった顔を見て、笑って楽しみます。「笑う門(かど)には福来(ふくきた)る」とされ縁起がよく、お正月に楽しまれるようになりました。
ここで紹介した昔ながらの「お正月遊び」は、保護者の世代でも、実際にはやったことがない人が多いかもしれませんね。昔ながらの遊びには、子どもの健やかな成長や幸せを願う気持ちが込められており、保護者から子へと伝える遊びは格別な体験となるでしょう。
冬休みは、年末年始をはさんで、子どもとゆっくりと過ごせるよい機会です。ここに挙げたすべてのことをする必要はありませんが、できる範囲で、日本のお正月を親子で味わい、楽しんでみてはいかがでしょう。
この記事の監修・執筆者
古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとる。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、監修書『季節を愉しむ366日』(朝日新聞出版)ほか多数。
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