【実は「毒」を持つ危険生物!】 “意外”な生き物

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「毒を持つ生き物」と聞くと、ハブなどの毒ヘビやサソリなどを思い浮かべるかもしれませんね。
でも、「え、こんな生き物が!?」と思うような意外な生き物が毒を持っていることもあります。
今回は、知られざる「危険な毒を持つ動物」をご紹介します。お子さんといっしょに生き物の生態に触れてみるのも楽しいですよ。

文/こそだてまっぷ 編集部

目次

毒を持つ珍しい哺乳類たち

私たちヒトと同じ哺乳類のほとんどは毒を持っていません。有毒の哺乳類はたいへん珍しいのですが、原始的な仲間には、毒を持つものもいます。

「けづめ」に毒を持つカモノハシ

オーストラリアにすむカモノハシは、哺乳類なのに卵を産む変わった生き物で、哺乳類の中では原始的なグループだと考えられています。くちばしを持つユニークな姿を知っている方も多いのではないでしょうか。
実はこのカモノハシ、おすの後ろあしにある「けづめ」から毒を出します。おすだけが毒を持つことから、この毒は、おす同士のなわばり争いなどに使われていると考えられています。繁殖期には毒性が強くなり、もし人間が攻撃されると、激しく痛み、場合によっては命に関わることもあります。
ユーモラスにも見えるカモノハシですが、見かけても抱き上げたりしてはいけません。

おすだけが毒をもつカモノハシ

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意外! 毒を持つ愛らしいサル

東南アジアの熱帯や亜熱帯の森林にすむスローロリスは、原始的なサルの仲間です。体長は25~37cm、くりくりした目をしています。動作はとてもゆっくりで、ぬいぐるみのような見た目もあって、「かわいい!」と思う人も多いようです。
愛らしい姿からは想像できませんが、スローロリスも毒を持っています。脇の下にある上腕腺から出る分泌液を口に入れて唾液とあわせることによって毒素をつくり、毛づくろいしながら体にぬるのです。スローロリスは、こうしてマレーグマやオランウータンなどから身を守っていると考えられています。
人間がスローロリスを触った手をなめてもほとんど害はないとされていますが、アレルギー反応を示し、アナフィラキシーショックを発症することがあります。また、怒ればするどい歯でかみつくこともあります。
スローロリスは、日本では環境大臣の登録を受ければ飼育できますが、絶滅のおそれのある種に指定されており、あまりオススメできません。

毒をつくるスローロリス

毒の唾液で獲物をまひさせるモグラ

じょうぶな前あしで土の中を掘り進み、ミミズなどを食べてくらすモグラたち。地中に長いトンネル網をつくることで知られています。
モグラの中にも毒を持つ種類がいることがわかっています。ヨーロッパからアジア中部にすむヨーロッパモグラは、毒を含む唾液を出し、ミミズや昆虫の幼虫などをかんでまひさせて巣穴にためています。毒を使って食料を備蓄しているというわけです。
ヨーロッパモグラの毒は、人間にはほとんど影響はありません。また、日本にすむモグラには毒は確認されていないのでご安心を。
モグラの仲間には比較的毒を持つものが多く、原始的なモグラの仲間であるトガリネズミやソレノドンも唾液に毒を含んでいます。

毒を持つ鳥はいるの?

鮮やかな羽毛を持つ毒鳥、ズグロモリモズ

「毒を持つ鳥」というのは、ちょっと想像できないかもしれませんね。
鳥類で毒を持つものはごくわずかで、代表的なのが、モリモズというモズの仲間たちです。

パプアニューギニアの熱帯林に、ズグロモリモズという鳥がすんでいます。黒とオレンジ色の鮮やかな体色をしており、昆虫などを食べています。
ズグロモリモズは、皮膚や羽毛にたいへん強い毒を持っています。その毒は、毒矢にぬることで知られるヤドクガエルが持つ毒と同類で、わずか10mgでもマウスに注射すると20分ほどで死んでしまう強力さです。毒を持つ鳥の中でも最強の猛毒だと考えられています。

鮮やかな姿のズグロモリモズ

ズグロモリモズやその近縁種が毒を持つことがわかったのは、1990年のことでした。
ズグロモリモズを捕らえた学者が、そのときにかまれた傷口をなめたところ、口の中が痛み、しびれを感じたことがきっかけになったといいます。それまで毒を持つ鳥類は知られておらず、この発見は、権威ある科学誌『サイエンス』に掲載され話題になりました。
ズグロモリモズは、強い毒を持つおかげで、ヘビやタカなどから身を守っています。しかし、この毒は自分の体内でつくっているのではありません。飼育下のズグロモリモズは毒を持たないことから、ズグロモリモズは、自然環境で食べている甲虫などから毒を得て体内にためていると考えられています。

まだまだいる、要注意の生き物たち

毒を持つカメ?

爬虫類には毒ヘビや毒トカゲなどもおり、あまり意外さを感じないかもしれません。しかし、同じ爬虫類でもカメの仲間で毒を持つものはほとんど知られていません。
その数少ない例外といえるのがミツユビハコガメです。アメリカ合衆国にすみ、甲羅の長さが12~18cmです。昆虫や魚類、植物の葉や茎、果実、きのこなどを食べる雑食性です。
見た目もくらしぶりも地味なミツユビハコガメですが、全身の肉に毒を持っていることがあります。ただし、えものを捕らえるために毒を使うわけではありません。どうやら積極的に(?)毒を持つようになったわけではなく、身を守ることにも役立ってもいなさそうです。
ミツユビハコガメは毒きのこも食べるのですが、毒きのこの毒に対して抗体を持っているために、自分はなんともないのです。こうして食べた毒きのこの毒が体内に蓄積されているというわけです。
ミツユビハコガメは、その肉を食べない限り害をこうむることはありません。ご安心を。

ミツユビハコガメは、体内に毒をためる数少ないカメ

ウナギの刺し身がないのは毒のせい!?

最後は魚類からです。魚類には毒を持つものが多く知られています。
たとえばフグは、種類や部位によって猛毒があるため、免許がないと調理できない決まりになっています。それでも毎年のようにフグ毒による事故が起こっています。
フグほどではありませんが、私たちに身近なウナギも毒を持っています。
ウナギは蒲焼きなどで食べる機会も多いことから、たいていの人は無毒だと思っているのではないでしょうか。

実は、ウナギは血液や口にたんぱく質性の毒を持っており、血液が人間の眼や口に入ると強い痛みを感じます。生で体内に入ると下痢や吐き気などにおそわれるとのこと。ウナギの刺し身がないのはそのためなのです(完全に血液を抜いて食べることはあります)。
しかし、この毒は加熱することで無毒になるので、蒲焼きなどならまったく心配ないというわけなのです。

いかがでしたか。毒のある生き物たちが思ったより多く、驚いたかもしれません。
彼らの毒は、身を守ったり、食べ物を捕獲するのに利用したりと、生きていくうえで役立っています。このほかにも毒のある生き物を子どもといっしょにさがしてみてください。自然の知恵に感動し、いとおしく感じるようになるかもしれません。
ただし、毒にはくれぐれも気をつけてくださいね。

この記事の監修・執筆者

肉食爬虫類研究所代表 富田京一

とみた きょういち/1966年福島県生まれ。爬虫類・恐竜研究家。TCA東京ECO動物海洋専門学校 恐竜・自然史博物専攻講師。おもに沖縄のマングローブ地帯に生息する爬虫類の生態を研究している。

「奥出雲多根自然博物館」「恐竜王国2012」など博物館や博覧会の監修、『映画ドラえもん のび太の恐竜2006』『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』など映像作品の時代考証も行ってきた。

著書に『そうだったのか! 初耳恐竜学』(小学館)、『恐竜は今も生きている』(ポプラ社)、『日本のカメ・トカゲ・ヘビ』(山と溪谷社)、監修書に『あたまがよくなる! どうぶつクイズ』(Gakken)などがある。

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