「なんで○○なの?」
ーそれはね、△△だからよ。
「なんで△△なの?」
ーええと…
「なんで? どうして?」…
答えても答えても、終わらないお子さんの「なんで?」攻撃に困っていませんか?
「今ちょっと待って~」「なんで? なんで? って、うるさーい!」なんて言っちゃうこと、ありますよね。
でも実は、子どもの「なんで?」は、とても大切な成長過程。大人の対応一つで、その後に関わってくるとか…それなら一体、どう対処するのがいいのでしょう。
元保育士で日本児童教育専門学校専任講師の、今泉良一先生にお話を伺いました。
お話:今泉 良一(日本児童教育専門学校専任講師)
子どもの「なんで?」は、知的好奇心を伸ばすチャンス!
2~3歳ごろから始まる「なんで?」は、第一次質問期と呼ばれる発達過程で、成長の証のひとつです。
子どもが「なんで?」「どうして?」と尋ねるのには、次のような理由が考えられます。
・質問をしながら名称を知り、言葉を獲得している
・行動範囲が広がり、外界への興味が高まっている
・探索活動がより盛んになり、物の名称や性質、さまざまな事象などへの気づき
・「ぼくはこんなことも考えているよ」「私はこんなことを見ているよ」という知的好奇心の芽生えや自我の育ち
2歳ごろまでの子どもの心のなかは自分中心で、「~したい」「~するのはイヤ!」という欲求が多くを占めています。しかし、2~3歳になると「物事には原因や理由がある」ということが段々とわかるようになってきます。
そのため、「なんで?」「どうして?」と聞いて確認することで、身の回りのことを整理し、捉え直している真っ最中なのです。
ポイント
「今、子どもの成長過程のひとつを見ているんだ」と、肯定的にとらえましょう
まずは「なんで?」は子どもの成長の証である、と考えてみましょう。
大人が「なんで?」にうまくつき合えれば、子どもは知的好奇心を満たし、「もっともっと」と、色々な物事に興味をもつようになります。
「なんで?」に答える4つのポイント
とはいえ、いつまでも、何にでも、答えるのは難しいし、時間もない…
大人が子どもの「なんで?」とうまくつき合うには、4つのポイントを押さえてみましょう。
1.質問の意図を確認する
子どもの「なんで?」には、大きく分けて2パターンあります。
①子どもなりの考え・疑問をもっている「なんで?」
②相手が反応するのがうれしい「なんで?」
子どもなりの考えや疑問をもって「なんで?」と尋ねてくる場合が多いのですが、どちらのパターンか見極めるためにも、最初は「どうしてかな?」と質問返しをしてみましょう。
子どもに考えがある時は、大人が思ってもいなかった答えが返ってくることもあって、おもしろいですよ。
嬉しそうに質問を繰り返す場合は、「なんで?」と問いかけることで、大人が答えてくれる=自分の投げかけによって会話が成立していることが嬉しいのです。そういう場合は、「いろいろ考えているね」「想像力がいっぱいなんだね」と、認める言葉をかけてみても◎。
2.子どもの身近なことに置き換えて説明する
「なんで朝になると明るくなるの?」
ーそれはね、地球が回っているから、太陽が出てきて朝になって…
こんな風に“事象の説明”をしていませんか? それはまだ、2~3歳ごろの子どもには理解が難しいかもしれませんね。そんな時は、
ーお母さんと○○ちゃんがおはようって、お顔を見て挨拶できるようにかな。
など、子どもにとって身近なことに置き換えて話してみましょう。
正しい答えでなくとも、“何のために”がわかれば、納得する場合もあるのです。
5歳ごろになると、“事象”が知りたくて聞いていることもあるため、そのころには図鑑などで積極的に調べられる環境を用意できると良いですね。
3.わからないことは「わからない」でOK
大人にも知らないことはたくさんあります。
適当に答えるのではなく、時には「わからないなあ」と伝えて「一緒に調べてみようか」と子どもを誘ってみるのもあり。
絵本や図鑑を使ったり、科学館に足を運んだりするなどして、興味の幅が広がるようにサポートすれば、知的好奇心や学習意欲のアップが期待できます。
4.大人も楽しむ!
質問期は、ある日、突然「なんで?」が始まったと思ったら、いつの間にか落ち着いているもの…。一時的なことととらえて、ぜひその時期ならではの関わりを心がけたいものです。
ポイント
発語がさかんになる時期だからこそ、子どものつぶやきを残しておきましょう
オススメなのは、子どものつぶやきをメモすること! 字でも絵でも、好きな方法で◎。
このころの子どもは、発語が盛んになる時期。
覚えたての言葉をたくさん使おうと、たくさん大人に話しかけてきます。子どもの思いに共感し、伝えたいことを理解するつもりで、やりとりを楽しめるといいですね。
ママ友(パパ友)同士で、子どものおもしろい&かわいいつぶやきを共有するのも、楽しいですよ。
やってはいけない「なんで?」のNG対応4つ
うっかり対応で、せっかくの子どもの興味関心、知的好奇心をなくしてしまわないように、気をつけたいですね。NG例を紹介します。
× 1.質問を拒む
ーさっきも言ったでしょ!
ー何度も同じこと言わせないで
大人のこんなセリフを受けた子どもは、「もう、言ったり考えたりするのをやめよう」と、折角もった興味がそがれてしまいます
× 2.質問を否定
ー何言っているの?
ー下らないことをいちいち聞かないで
大人の考えで“当たり前”と思うようなことも、子どもにとっては全てが初めてで新鮮なものです。素直に感じた疑問を、大人目線で軽んじたり見下したりすると、子どもの思考を停止させてしまうかも。
× 3.大人から質問攻め
子どもがふと目をとめたものや、興味をもって欲しいことに対して、先手必勝! とばかりにいちいち問いかける…。
ーどうしてかな?
ーなんでこうなったと思う?
これは、子どもの学びのチャンスを逃さないようにとの親心、とも思えますが、「もういいよ」なんて思われることのないよう、大人発信の一方通行にならない注意を。
子ども自身が気になるタイミングがどこかであるので、そこを見逃さずにキャッチしましょう。
× 4.先回りで説明
何でもかんでも先回りして
ー不思議でしょう? これはね、●●だからだよ
などと説明してあげることも、避けたい対応です。
なぜなら、全て教えてもらえるので「なんでかな?」「どうしてこうなるんだろう?」「知りたい!」と思う気持ちや、自分で考えてみる習慣がつかなくなってしまうためです。
4つのNG対応例に、ドキッとした方もいたのでは?
子どもの知的好奇心をそぐようなことを言わないよう、気をつけていきたいですね。。
必見! 質問攻めをうまくかわすテクニック
「なんで?」には、できる限り、子どもの興味に向き合って応答していくことが大切です。
ただ、そうは言っても、起きてから寝るまで延々と「なんで?」「どうして?」と聞かれると答える大人も疲れてしまいますね。
そんな時に、うまく活用したいテクニックをお聞きしました。
子ども向けの図鑑を用意
子ども向けの図鑑を用意して、自分で見られるようにしましょう。
動物や自然などの他、マークや旗の本、食べ物の本など、今はいろいろな本があります。興味や年齢に合わせて、子どもと一緒に選んでみるのはどうでしょうか。
見たもの、興味をもったものをお絵かき
見たもの、興味をもったものなど、子どもが思い描いている物事を、自由にお絵かきしてもらいます。
そうすることで、子ども自身の理解も深まり、大人も子どもの理解の尺度を知ることができるでしょう。
ポイント
- 必要な画材や用具を準備してあげましょう。子どもが使いたいのは自由帳とクレヨン? それとも、画用紙と絵の具でしょうか? ここでも、子どもが興味をもちそうなものを用意できるとさらに良いですね。
- 「描けたら見せてね」「何を描いたのか教えてね」など、子どもが「やってみたい!」と期待が膨らむ言葉かけもしてみましょう。
「○○ちゃんはいろんなことを考えていてすごいなー!」
「なんで?」の言葉を使うことが楽しい、質問を介してやりとりを楽しみたいという場合は、こんな言葉かけで満足することも。
“大好きな人に認められている”と、思いが満たされます。
今だからこその、この時間。
大人もストレスを溜めないように、子どもの成長を楽しめるといいですね。
この記事の監修・執筆者
日本児童教育専門学校専任講師。東洋大学大学院修了。13年間、保育士を経験したのち2017年より現職。保育者養成とあわせて「子どもの表現活動」について研究している。
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