「いい子症候群」ということばを聞いたことがあるでしょうか。「いい子」とはほめことばのはずなのに「症候群」とはなんなのか、どのような症状なのか、いい子だといけないのかなど、いろいろな疑問が湧いてきます。
そこで本記事では、「いい子症候群」とはなんなのかをはじめ、なぜそうなってしまうのか、保護者としてどのようなことができるのかについて解説していきます。
文/マムズラボ
いい子症候群とは?
「いい子症候群」とは、保護者の期待に応えられる「いい子」でいようとがんばりすぎてしまう子どものことです。
ただ、子どもに対して「こういう子になってほしい」と期待や希望をもつことは、保護者として自然なことですよね。「いい子だね」「いい子になってね」など、口にしたことがあるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
「いい子」であることが悪いのではありません。「いい子」になろうとして、自分の感情や欲求よりも保護者を喜ばせることを優先させることが問題なのです。
「いい子症候群」の子どもは、保護者がいないと自分の望みややるべきことがわからなかったり、自分で責任をもって決めることができなかったりします。自覚がないまま押さえつけられている状態が続くと、感情を溜め込んだ反動でキレる、外での非行に走るなど、極端な形で暴発してしまう恐れもあるのです。
「いい子」と名づけられていますが、幼児や小学生などの「子ども」だけではなく、大学生や社会人になってもこういった特徴がそのまま残ってしまう人がいます。かんたんに解決できるものではないようです。
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うちの子どもはだいじょうぶ? いい子症候群チェックリスト
「いい子症候群」になると、具体的にどのような行動があらわれるのかをご紹介します。子どもの行動に当てはまるものが多いほど、「いい子症候群」に近い状態かもしれません。
□イヤなものにはっきりイヤと言えない
□抑圧に反抗するのが苦手
□常に人の顔色をうかがっている
□常に保護者の指示を待ってから行動する
□やりたいことや自己主張をしない
□自分よりも他人を優先し過ぎてしまう
□感情表現が苦手
□他者に助けを求めるのが苦手
□失敗することを恐れている
□いつも自信がない
□イヤイヤ期や反抗期がなかった
□小さなことで落ち込んでしまう
これらの行動一つひとつが「悪いこと」というわけではありません。「いい子でいようとする」あまり前述のように、自分の感情がわからなくなったり、溜め込んで爆発したり、といったマイナスの影響があるのです。
いい子症候群になってしまう原因は?
では、なぜ「いい子症候群」になってしまうのでしょうか。その原因についてご紹介します。
ルールに厳しすぎる
子どものうちから社会的なルールやマナーをしつけることは重要です。 しかし、厳しすぎるルールを設けたり破ったときの罰が厳しかったりすると、子どもの行動を過度に制限することになります。
子どもは、「ルールを守らなければ」というプレッシャーから自分の思いを表に出せなかったり、ルールに従っていないと不安で自ら行動できなくなったりする「いい子症候群」になってしまう可能性が出てくるのです。
保護者が完璧を求めすぎている
保護者が完璧を求めすぎるあまり、不足があったときに責めたり叱ったり残念がったりしてしまうことも「いい子症候群」の原因のひとつです。失敗は悪いことなのだと感じてしまうため、完璧にできそうにないことには挑戦しない傾向が強くなります。
保護者の叱る頻度が多い
小さなことでもひどく叱られたり、頻繁に叱られすぎたりすると、叱られることに恐怖を覚えてしまいます。「叱られないようにする」ことを自分の行動の基準として考えて「いい子症候群」になってしまい、自分のやりたいことや意志を表現できなくなります。
保護者の価値観を押しつけている
保護者の考えのみが正しいのだと押しつけ、子どもの意見を聞かないでいることも「いい子症候群」になる危険度を高めます。
子どもは、自分の気持ちを伝える機会がなくなってしまい、自分の考えに自信がもてなくなり、自分で決定することにも不安を感じてしまいます。保護者の指示どおりにしか動けず、自分の考えをもてないまま成長してしまう可能性があるのです。
子どもに期待しすぎてしまっている
保護者の期待が強すぎると、その期待に応えることが子どもの最大の目的となって「いい子症候群」になってしまいます。もしも保護者の期待に応えられなかった場合には、「ママパパから失望された」と感じ、自信まで失ってしまう恐れがあります。
子どもが「いい子症候群」にならないために保護者ができること
保護者としては、子どもに期待することも、ルールを設けて叱ることも、よくあることです。大人が決めて子どもを従わせるほうがよい場面もあるでしょう。では、子どもが「いい子症候群」にならないために保護者ができることはあるのでしょうか。
子どもの考えや気持ちを受け止め、尊重する
大人から見ると「くだらない」と思うようなことでも、子どもがどのような気持ちでその行動をしようとしたのか、子どもの行動やことばを、受け入れることが大切です。
保護者が共感をもって子どものことばを聞くと、子どもは「受け入れてもらえた」と安心し、また次の機会にも自分の気持ちを伝えてくれるようになります。
子ども自身に考えさせる・決めさせる
たとえ失敗しても、「自分で決めた」という経験を多く積んだ子どもは自信がつき、自己肯定感を高められます。逆に、決めたことを否定されると、自分そのものを否定されたと感じてしまうでしょう。
保護者にとっては小さなことでも、子どもにとっては大きな意味をもっていることもあります。本人や周りの人の身に危険が迫るようなことでなければ、子どもの決めたことを否定せず、受け入れてあげたり実行させてみたりすることが大切です。
ルールを厳しくしすぎない
社会生活を営む上でルールは大切ですが、ルールが多すぎたり厳しすぎたりするのは考えものです。 ルールを破ると叱られる、失望される、と恐れる子どもは、自分の意見を言えず、したいことも我慢するようになってしまいます。
子どもがのびのびと行動できる環境をつくることで、「自分の意思で何をするか決めてもよい」と安心して意思決定や表現ができるようになります。
結果ではなく過程に目を向ける
ほめることで子どもが伸びることも多いですが、目に見える結果を出したときにだけほめていると、「結果を出さないとママパパに認めてもらえない」と評価を気にするようになりがちです。
チャレンジしたことそのものや、失敗も含めたそれまでの過程を認め、ほめることで安心感を与えられます。「自分のことを見てくれている、失敗してもいい」という気持ちがあれば、次のチャレンジにもつながりやすくなるでしょう。
子どもの前で完璧な大人になろうとしない
保護者自身が、完璧な大人になろうとしたり、「周囲の人からいい保護者に見られたい」とがんばりすぎたりしていないでしょうか。保護者が内面に「いい子症候群」を引きずっていると、子どもにも同じように「いい子」を求めてしまいがちです。
肩の力を抜いて、「いい保護者」「完璧な大人」ではない自分自身で子どもと接しましょう。失敗したり、ダメなところがあったりしてもだいじょうぶです。「完璧な人間なんていない」という事実を知ることが「いい子ではない自分でもいいんだ」という子どもの自己肯定感につながります。
「いい子症候群」にならないように、子どもの気持ちを尊重し、自分の意見をもてる環境をつくろう
子育てにおいて、多少のルールや注意、しつけはもちろん必要です。しかし、過度なルールや子どもの意志を無視したしつけは「押しつけ」となり、子どもの可能性や個性を制限してしまいかねません。
子どもを「いい子症候群」にしないためには、保護者が子どもの気持ちを尊重することが大切です。そして、「完璧な保護者でなくてもだいじょうぶ」「いい子でなくてもだいじょうぶ」と、ありのままの自分自身と子どもを受け入れ、毎日を楽しむ姿勢をもちたいですね。
この記事の監修・執筆者
作家/子どもへの言葉かけ、「子育てNGワード」の専門家。「言葉」を扱うコピーライター経験から、子育て中の子どもへの言葉かけに関心を持つ。
三人の娘の子育ての実感(成功も失敗も)を活かした書籍を執筆している。
『お母さん、ガミガミ言わないで!子どもが勉強のやる気をなくす言葉66』
『決定版 ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』
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