【こどものかんしゃく、イライラ、はしゃぎすぎ】困った感情とうまく付き合うために取り入れたい「こどもマインドフルネス」って?

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【こどものかんしゃく、イライラ、はしゃぎすぎ】困った感情とうまく付き合うために取り入れたい「こどもマインドフルネス」って?

ビジネスなど大人向けの「マインドフルネス」はあちこちで耳にしますが、今、国内外で注目を集めているのが「子ども向けのマインドフルネス」です。
複雑な感情が豊かに育ってくる幼児時代は、かんしゃくをおこしたり、はしゃぎすぎたりして、感情のままの行動を起こしてしまいがち。
そんなときにさまざまな感情とうまくつきあう力を育む「こどもマインドフルネス」について、イギリスのマインドフルネスの教育プログラムを日本に導入し、研究している滋賀大学教育学部教授の芦谷道子さんに伺いました。

目次

「マインドフルネス」とはどんなこと? 見込める効果は?

「マインドフルネス」とは、今この瞬間の体験に、価値判断することなく、意図的に注意を向けることです。

先入観や過去の経験にとらわれることなく、あるがままに優しく受け入れることを意識することで、ストレスの軽減や心の安定に繋がる可能性があるとされています。

マインドフルネスの力が身につくと、例えば、このような効果が見込めることが示唆されています。

・集中力やパフォーマンスの向上
・幸福感の向上
・抑うつや不安の低減
・脳機能の改善
・思いやりや慈しみの態度の育み

など


多くの研究から、マインドフルネスの練習や実践を続けると、困難な状況にうまく対応できるようになり、毎日の暮らしが豊かになっていく可能性が示唆されています。

そして、大人だけではなく、子どもたちにも、注意力や社会的スキルの向上、ストレス軽減やリラックスといった効果をもたらすといわれています。

海外諸国の教育プログラムに取り入れられている「マインドフルネス」

近年では欧米を中心に、マインドフルネスの練習や実践を目的とした取り組みが広がっています。幼児、小学生、中高生と、年齢発達ごとに異なる種類の「子ども向けマインドフルネスプログラム」が開発され、学校への導入も進められています。

私は、子ども向けのマインドフルネスについて研究をしており、日本で「子どもマインドフルネスプロジェクト」を立ち上げ、英国Mindfulness Schools Project(MiSP)が開発した「.b」(ドットビー)というプログラムを日本に導入し、日本での講師養成・実践研究を行うプロジェクトを実施しています。

今回、楽しく読んでいるうちにマインドフルネスが実践できる絵本『こどもマインドフルネス こころしずまる まほうの まねっこ』の作と監修を担当しました。

どんな感情とも「友だち」になって、子どもたちが難しい感情ともマインドフルに、うまく向き合えるようになってほしい、子どもたちの心の土台となる生きる力やWell-beingを育みたいという願いを込めた絵本です。

「かんしゃく イライラ はしゃぎすぎ」のときには、叱らずにこんな遊びを

絵本からいくつかおすすめの遊びをご紹介します。

子どもがイライラして乱暴な行動をとったり、かんしゃくを起こしたり、はしゃぎすぎて落ち着かない様子だったり……。外出先の場合は特に困ってしまいますよね。そんなときは、一緒にこんな遊びをしてみてはいかがでしょうか。

少し動き回ってもよい場所なら、「ちょうちょうのまねっこ」がおすすめです。ちょうちょうになりきってパタパタしながら、花から花へ飛び回る動作をします。そして、花の蜜を吸うイメージで、たっぷり息を吸って今度は、息を「ふぅーっ」と吐きます。楽しい動作や呼吸に意識を向けることで、イライラした気持ちと距離を取っていきます。

あまり動き回れないタイミングなら「かいそうのまねっこ」もおすすめです。青くて静かな海の中をイメージし、ゆっくり息をはいたり、吸ったりしながら、その場でゆらゆら体を揺らします。

感情が高ぶったときに、全身を大きく動かす動作や深い呼吸を促してあげることで、動作や呼吸に意識が向き、子どもの気持ちが静まります。冷たくて静かな海のイメージが、子どもたちの心を鎮めてくれるでしょう。

この絵本は、登場人物のお話をたどる中で自分のさまざまな「気持ち」についての気づきを深め、遊びながらマインドフルネスを実践できる構成です。感情のなかでも「怒り・かんしゃく」「イライラ」「はしゃぎ過ぎ・落ち着かない」の3つの感情におすすめの「まねっこ遊び」を掲載しています。

自分の心の揺らぎをそのまま感じ取り、落ち着いた心を取り戻す練習は、幼児のうちから始められます。そしてそれは、自己肯定感や思いやりの心を育むことにもつながります。

おうちのかたが子どもの体験に寄り添うことが、心の安定の素地に

普段からまずは動作や呼吸に集中できるさまざまな遊びに慣れ親しんでおくと、心の揺らぎが起きた時にその遊びを取り入れることができます。

特に出先などでは、子どもが心の揺らぎによって困った行動をとると、周りの目が気になって叱ってしまいがちですよね。しかし、子ども自身も感情に振り回されてどうしたらいいか分からない状態ですから、叱られると余計に気持ちがたかぶってしまうかもしれません。そんな時には、優しさやユーモアを忘れずに、動作や呼吸の遊びを思い出すように促してみましょう。

心が激しく揺らいでいるときは、なかなか遊びに移行できない場合もあるかもしれません。毎日の積み重ねによって、徐々に自分の気持ちを丸ごと認め、自分で気持ちを落ち着けていくことができるようになっていきます。まずは、お子さんが自分を大切に扱い、自分に優しさを向けられるように、サポートしてあげましょう。

マインドフルネスは存在の基礎となる自己肯定感や思いやりの心を育んでくれます。
そして、お子さんとマインドフルな時間を共にすることで、周りの大人の心も安定するとされています。

かけがえのない幼児期、この本を通して、お子さんと一緒にマインドフルな時間を楽しんでいただけると幸いです。

この記事の監修・執筆者

滋賀大学教育学部教授。博士(医学) 芦谷道子

子どもの心身症の心理療法、子どもを対象としたマインドフルネスなどを専門としている。臨床心理士、公認心理師、Global Mindfulness Collavorative(USA)認定MBSR マインドフルネスストレス低減法 指導者、Mindfulness in Schools Project(UK)認定 Teach .b 中高生のためのマインドフルネス指導者養成講師、The Mindfulness Network (UK)認定 Deeper Mindfulness; Frame by Frame 指導者。

主な共著:山崎勝之編著『日本の心理教育プログラム―心の健康を守る学校教育の再生と未来―』福村出版、渡部雅之編著『教職を学ぶ人の 新・教育心理学』教育情報出版

主な訳書:ケビン・ホーキンス著『マインドフルな先生,マインドフルな学校』金剛出版、ハイディ・フランス著『小さな子どもといっしょに楽しむマインドフルネス―すこやかな心を育てる30のアクティビティ』創元社、シャロン・セルビー著『子どものためのおだやかマインドフルネス―感情の波をしずめて心がやすらぐ―』創元社、レア・レイナー他著『こどもすこやかマインドシリーズ全4巻」創元社。

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