【子どものマンション転落事故】保護者ができる対策は?[専門家監修]

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【子どものマンション転落事故】保護者ができる対策は?[専門家監修]

2022年に相次いで起きたマンションからの子どもの転落事故。その特徴や家庭でできる防止対策などを子どもの事故予防に取り組むSafe Kids Japanの大野美喜子理事にうかがいました。

文/こそだてまっぷ編集部 イラスト/湯沢知子

目次

幼児が高い所によじ登るのはなぜ?

2022年11月、千葉県にある高層マンションの25階のベランダから2歳児が転落死、同じ11月に大阪府でもマンションから転落したと見られる2歳児が死亡するなど、ベランダや窓からの転落事故が相次いでいます。東京消防庁管内では、2017年から2021年までの5年間で5歳以下の子ども62人が、住宅等の窓やベランダから落ちて医療機関に救急搬送されたという報告もあります。

幼児の転落事故が多い理由のひとつには、思わぬ場所に登ろうとするなど、大人が想像していない遊び方をすることが多いという要因が考えられます。しかし、子どもの発達段階の過程において「高い所によじ登る」といった探究行動や「外を見てみたい」という好奇心を持つことは大切です。これらの行動自体は発達上欠かせないことで悪いことではありません。ですから、保護者は、子どもがこのような探究行動をとっても危険がないように環境を整える必要があります。

ベランダや窓を開ける春から夏、秋に多発

マンションのベランダや窓からの転落事故は、春から夏、秋に多発しています。冬は防寒のためにベランダや窓を閉め切っていることが多いですが、過ごしやすい初夏や秋は、換気を兼ねてベランダや窓を開けておく時間が長くなり、事故が増える理由のひとつと考えられます。また、ベランダや窓を開ける機会が多い春や秋は鍵をかけ忘れることも増えるため、保護者が見ていないときに、幼児が自分でベランダの掃き出し窓を開け、ベランダに出て転落事故につながる可能性が高いと考えられます。

子どもが一人でベランダに出ない対策が重要

ベランダからの転落事故を防ぐためには、まず、子どもが勝手にベランダに出ることができないようにする対策が重要です。そのためには、ベランダの掃き出し窓に、既存の鍵以外の補助鍵を設置しましょう。補助鍵は、子どもの手の届かない場所に設置します。また、窓が一定の距離しか開かないようにする窓ストッパー(窓ロック、引き戸ストッパー)も有効です。子どもが外に出ることができない幅で窓を開けておけるので、換気もできます。

基本的に、小さな子どもだけを家に残して外出しないことが鉄則です。

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子どもが手すりを乗り越えられないようにする

子どもが一人でベランダに出られない対策をしたうえで、さらに、子どもがベランダに出ても、手すりを乗り越えるリスクを下げる対策を行いましょう。ベランダの手すり付近に子どもの足場になるような物を置かないようにします。
「うちはベランダによけいな物を置いていないから、だいじょうぶ」という方もいますが、子どもは自分で椅子や洗面台にある踏み台などを持ってきてしまうこともあるので、油断は禁物。チェックを怠らないようにしましょう。

エアコンの室外機が柵から60センチ以上離れていない場合は、子どもがよじ登れないように工夫をしましょう(室外機の上に斜めに板を取りつける、高い柵で囲うなどの方法があります)。

↑室外機が柵に近い場合は、室外機の上に斜めに板などを取りつける工夫を。

ベランダの状況をしっかり確認する

最近の高層マンションでは、ベランダの手すりを設置しているベランダ壁の幅が広いタイプをよく見かけます。ベランダ壁の幅が広いと、子どもが腰かけたり、寝転がったりして遊ぶ危険もあるため、その幅を確認しましょう。また、ベランダ壁に明かり取りなどのデザインが施されていると、それが子どもの足場になってしまうこともあります。

以上をふまえて、まずは、ご自宅のベランダの状況をしっかり確認しましょう。手すりなどに劣化がないか定期的にチェックすることも大切です。

↑手すりを設置しているベランダ壁の幅が広過ぎると、子どもが腰かけて遊ぶことも。

ベランダの手すり壁の高さ110㎝という基準は安全?

建築基準法では、ベランダ(バルコニー)の手すり壁、または柵などの高さは110cm以上と決められています。しかし、本当に高さが110cmあれば安全なのでしょうか。

子どもの傷害予防に関するさまざまな活動を行うSafe Kids Japanでは、実際に子どもがどの高さまでの柵を乗り越えられるかという実証実験を行っています。

高さ120~140cmのベランダ柵を使用し、3~5歳児を対象に実験したところ、高さ120cmの柵でも3~4歳児の約7割が乗り越えることができました。さらに5歳児になると高さ約140cmの柵でも7割以上が乗り越えてしまいました。この実験結果から、たとえ手すり壁の高さ110cmという建築基準法に合致したベランダでも子どもが乗り越えてしまう不安はぬぐえません。

幼児は体の大きさに比べて頭が大きく重心の位置が高いため、柵から転落しやすい傾向にあります。

子どもの行動力や身体能力、または「外を見たい」といった好奇心などは保護者の想定を超えてしまうことが考えられます。手すり壁の高さがたとえ110cm以上であっても安全ではないので、やはり、子どもが一人でベランダに出られない補助鍵対策などは必須です。

網戸や窓の下に置いた家具にも要注意

子どもの転落事故については、ベランダ以外にも盲点があります。たとえば、網戸に寄りかかった際に網戸がはずれて窓から転落することもあるので、注意が必要です。また、リビングルームの窓の下にソファなど家具を配置しているご家庭や、寝室の窓の下にベッドを配置しているご家庭は、子どもが家具によじ登って窓から転落する可能性もあります。窓の近くには、できるだけ子どもがよじ登れるような家具や足がかりになる物を置かないようにしましょう。このような窓には、補助鍵やストッパーを子どもの手が届かない位置に設置することをオススメします。

Safe Kids Japanの「ベランダ1000プロジェクト」という調査によると、転落事故について約90%の人が認識しているにもかかわらず、何らかの対策を行っている人は、30%にも満たないという結果でした。子育て世代は多忙のため、子どもの転落事故対策などは「明日にしよう」などと言ってつい後回しにしがちです。しかし、子どもの成長のスピードは速く「昨日できなかったことが今日はできている」と感じる場面もあるのではないでしょうか。子どもの成長を先取りして、ぜひ早めに転落事故対策に取り組んでいきましょう。

この記事の監修・執筆者

Safe Kids Japan理事 大野美喜子

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 人工知能研究センターに所属し、AIを用いた傷害予防教育プログラムの研究などに携わる。子どもの事故予防に取り組むNPO法人「Safe Kids Japan」理事としても活動。2児の子育てママ。

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