小学校で行われる「引き渡し訓練」ってどんなことをやるの?

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小学校で行われる「引き渡し訓練」ってどんなことをやるの?

現在は毎月のように行われているという小学校の避難訓練。
2011年の東日本大震災以降は、昔よりも保護者に対して子どもの『引き渡し訓練』を実施する学校も増えています。
その内容について現役小学校教諭の舟山由美子先生に伺います。

取材・執筆:坂本洋子

目次

保護者も参加して行われる「引き渡し訓練」

災害時に、子どもを保護者に確実に引き渡せるようにとの目的で行われる「引き渡し訓練(引き取り訓練)」。幼稚園や保育園で経験したことのある方もいると思いますが、ここでは、舟山先生がこれまで勤務した小学校で行っていた引き渡し訓練の様子から、具体的な内容をご紹介します。

「訓練当日は給食後、帰り支度を終えた1時半頃に『避難訓練です。地震が起きました。ただいまから引き渡し訓練を行います』と放送が流れます(9月1日の防災の日、始業式後に行う学校であれば、お昼前の11時頃から避難訓練が始まります)。

避難する先は、校庭や教室などいろいろなパターンで行われますが、校庭で行う場合は、子どもたちは並んで校庭に避難します。

保護者の方には、学校から事前に集合場所や時間などが連絡されており、引き取りに来た保護者の方々は、定められた場所に、クラスごとに並んで待つことになります。

校長先生の話を聞いた後、保護者は一人ずつ『□□の母(父)の○○○○です』とフルネームで担任に対して名乗り出ます。 そして担任は『○○○○さんですね。□□ちゃん、お母さん(お父さん)が迎えにきたよ』 と1人ずつ確認しながら子どもたちを引き渡していきます。教室で行う場合は、保護者の方に教室の入り口に並んでもらい、同じように引き渡します」(舟山先生)

学校に兄弟姉妹がいる場合は、学校によって対応が違いますが、先生の経験では多くの場合、上のお子さんから引き取ってもらっていたそう。 というのも、当日は廊下などがとても混雑するため、連れて歩くことを考えると、できるだけ年上のお兄ちゃん、お姉ちゃんのほうがいいからなのだとか。

引き渡し訓練で保護者が来られない場合

仕事のあるお父さんやお母さんの中には、都合がつかないという方もいると思いますが「そのときは、近所の方でも誰でもいいので、他の人に引き取りのお願いをしてください」と舟山先生。

「学校では、あらかじめ『引き取りリスト』を記入してもらっています。 ここに、災害があったときに引き取りに来る方のフルネームを3~4人書いてもらいます。引き取ることができる人は、4月の時点でリストに書かれた人だけですが、当日どうしてもその人たちの都合がつかなければ、近所の人などにお願いしても構いません。 その場合、『母の友人の●●✕✕(フルネーム)さんに引き渡し訓練をお願いしています』 と、伝えておく必要があります。

引き取りをする人は、親戚の方などでも可能です。ただ、勤務先が学校と離れている保護者の方や、遠くに住む親戚の方はすぐに迎えに来られない可能性が高いので、『困ったときはお互い様』で、子どものママ友同士やご近所の皆さん同士で、リストアップしておくとよいでしょう。そうすれば引き取り訓練のときはもちろん、実際に災害が起きた場合も、登録した皆さんにお願いすることもできるからです。

訓練のときに保護者が来られなかった子は、全員の引き渡し訓練が終わるまでその場で待ち、その後、教員が引率して、地域班(登校班)ごとに集団で下校することになります。ただし、実際に地震が発生した場合、保護者や登録した引き取り人がすぐに来られなかったら、児童はずっと学校で引き取りを待つことになります」(同)

仕事があったりしてどうしても参加できないという親御さんがいることを承知しつつも、舟山先生としては、この引き渡し訓練の日には、できるだけ保護者の方には来てほしいと考えているそうです。 日頃から防災訓練日などに参加して地域との結びつきを得ておくことは、最終的にはそれがわが子を守るセーフティーネットになるという側面もあるからです。また、そうした流れもあって、引き取り訓練と地域の防災訓練を抱き合わせで行う学校も増えているのだとか。

また、親が迎えに来たとき、子どもたちはとてもいい顔をするそうです。その顔を見るだけでも参加するかいがあるので、ぜひ都合がつく保護者は参加して欲しいとのこと。

いつ起きるかわからないのが災害。いざというときにわが子を守るためにも、できる限り都合をつけて参加したいですね。

この記事の監修・執筆者

小学校教諭 舟山 由美子

ふなやま ゆみこ/東京都の現役小学校教諭。
長年の小学生の指導経験に基づいた、
教育・子育てアドバイスに定評がある。

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