【本当にもらった?】子どもの筆箱に見覚えのない消しゴムがあったら

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こんにちは、現役小学校教員の舟山由美子です。
お子さんが、親御さんに見覚えのない物を持っていたら不安になるのは当然でしょう。
大切なのは、その事実とどう向き合うかです。
今回は子どもの倫理観・道徳観をどう育てるかについて考えたいと思います。

目次

Q.見たことのない消しゴム、娘は「もらった」と言いますが…

1年生の娘の筆箱をのぞいたところ、見たことのない消しゴムが出てきました。「これ、どうしたの?」と聞くと、「もらった」と言います。「誰から?」と聞くと「○○ちゃん」と言うので、「お友だちともらったり、あげたりするのは学校で禁止されているよね。○○ちゃんに返してきなさい」と言うと、「わかった」と返事をし、その翌日に「ちゃんと返してきた?」と聞いたときも「うん」と言っていたので安心していました。

それから2週間くらいたって、子どものランドセルに、返したはずの消しゴムが入っているのを発見しました。「どうして返したってウソを言ったの?」と叱っても、子どもは泣いて「だってもらったんだもん」「○ちゃんも△ちゃんももらっているけど、誰も返してないよ」と言うばかりです。

学校に問い合わせれば、詳しい状況がわかるかもしれないのですが、うちの子は、幼稚園の年中さんのとき、お友だちのハンカチを持ってきてしまったという過去があり、万が一のことを考えると、学校で大騒ぎになったとしたら、と思うと私自身が事実を知る勇気がないというのが正直なところです。

いまだにわが家にその消しゴムはありますが、それ以降は見かけないものが増えるということはありません。わが子の言うことを信じてあげたいとは思うのですが、親としてこういうときはどうしたらいいのかわからず困っています。

(ペンネーム ゆうきんぐ)

A.子どもの「ブレーキ」の良質なオイルは親の道徳心・倫理観です

新生児を見ると、全部のちっちゃい指に爪があって、まつげがあって立派に一人前で驚きます。ヒトは最初からヒトなのだな、と思います。こうして「部品」はそろっていますが、それぞれの完成には時間がかかります。

特に、いけないと分かっていることなどに対しての道徳心・倫理観という「ブレーキ」がとても甘いのが子どもだと思います。だからこそ厳しくしつける、という考えもありますが、子どもによってはあまりよくない結果になることもあると思います。

相談文を拝見して、ご相談者であるお母さんが本当におそれているのは何なのかな、と感じました。消しゴムはもらった、という言葉を信じるのなら、その子のお家にお礼を言いますよね。けれど、そうしていません。学校に問い合わせることで傷がつくのはお子さんではなく、お母さんご自身だと分かっておられるからではないかと思いました。

ずっと担任をしている中で、友だちの物をとってしまった、というお子さんもいました。それは主に低学年です。低学年のうちは、保護者の方が文房具に記名をしてくださいますし、ランドセルの中身を見る機会も多いので、発覚しやすいのです。

ところが、中学年になるとほとんどなくなります。行為そのものがなくなっているわけではないかもしれません。学年が上がったことで、やり方が巧妙になっていたり、保護者がそういう点にはだんだん気にかけなくなる、ということもあるかもしれません。

冒頭で「ブレーキ」が甘い、という話をしました。友だちが持っている物がどうしても欲しくて、たまらなくて、自分の気持ちを優先した結果、とってしまったという子もいました。その一方で、たいして欲しくもないけど、見るととってしまう、という子もいました。

ご相談者は、学校で大騒ぎになることをおそれていますが、大騒ぎになるのは、保護者が感情的になって、指導ではなく、その感情のまま子どもに当たってしまったときです。そうなってしまうと、単に「ブレーキ」が甘くてとってしまった子の、その機能までも壊してしまうことがあります。

そうして、たいして欲しくもない物をとるということをくり返してしまって、大騒ぎになるのではないかと思っています。そうした子は、まるで保護者を試すかのように、ばれるように何度も行います。これは、保護者が子どもに「無関心」の場合も同様です。

具体的にご相談者がなさったほうがよいことを述べます。

①事実を確認する

私の考えでは、まずは担任に相談することをおすすめします。本当にもらった物であれば、相手の子の家に連絡してここで終わりです。

②もし、相手の子に断りなく持ってきていたら、ゆっくりと話をし、言い分をよく聞く

なぜ、ほしかったのか? ということについては、その子が本当にほしい物や事柄の代わりが、消しゴムであった可能性もあるので、冷静に穏やかに聞きます。
子どもは悪いと頭では分かっています。今は「ブレーキ」が甘いだけ、と自分に言い聞かせて対処します。その「ブレーキ」が正常に作動するには、良質なオイルである保護者の道徳心・倫理観がその子に行き渡ることが必要なのです。

怒る、というより、保護者の正直な気持ちを伝えたほうがよいと思います。
例えば「お母さんはそれを知ったとき悲しかったな」「消しゴムがなくなって○○ちゃんは、どう思ったかな……」など。子どもは浅いところしか見ていないこともあるので、保護者が補いながら、丁寧に諭すことです。脅したり、怒ったりしないことです。

もし②になっても、低学年のうちに分かってよかったと思ってください。低学年のうちにどう対処するかで、中学年以降の行動が違ってくることがあります。

保護者がこわがらないこと、ぶれないことが大切です。

この記事の監修・執筆者

小学校教諭 舟山 由美子

ふなやま ゆみこ/東京都の現役小学校教諭。
長年の小学生の指導経験に基づいた、
教育・子育てアドバイスに定評がある。

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