【医師監修】乳幼児の誤飲事故は防止が第一! もしも誤飲したら“何を・どのくらい” 飲んだかが対処のカギ

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誤飲事故はいつでもどこでも起こり得ます。

乳児は手にしたものを口に入れて確かめる特性があり、幼児もふとした拍子に異物を飲み込んでしまうことがあります。

それが気道や気管につまると命に関わる場合も。子どもの周囲にある誤飲しやすいものや、万が一、誤飲してしまったときの対処方法を知って、備えておきましょう。

監修:宮野 孝一
イラスト:いしかわひろこ

目次

誤飲防止のために知っておこう!

子どもの口に入る大きさは、おおよそトイレットペーパーの芯をくぐり抜けるサイズ

子どもの誤飲を防ぐためには、まずは大人が、子どもの口に入る大きさのものを、手の届くところに置かないことが大前提。

3歳児が口を開けたときの最大口径が約39mm、のどの奥までは約51mmといわれており、これに入る大きさのものは、子どもが誤飲する危険性があります。

確認の目安として、誤飲チェッカー®があります。

◯誤飲チェッカー®︎
 
(中にものをいれたときの様子/子どもの口腔と誤飲チェッカーの側面図)
引用元:日本家族計画協会、特許・意匠登録済み

子どもの口の大きさに合わせて作られています。これにものを入れて、誤飲してしまう大きさかどうかを確認できます。
すっぽり入ってしまうもの、細長い箸など(飲み込めないが口に入って口腔内を傷つけたり刺したりする)、折り曲げれば入るバネやたばこなども危険です。

詳しくはこちら→https://www.jfpa.or.jp/mother_child/prevent/002.html

その他、

◯大人が人差し指で作った丸
◯半分に切ったトイレットペーパーの芯

でもチェックが可能です。

これを通ってしまう小さなものは、床から1メートル以上のところに片付けておきましょう。
また、子どもの目線と同じ高さから、周囲をチェックすることもおすすめです。

誤飲しやすい家庭用品

家庭にあるもので、誤飲事故が多いものを紹介します。

誤飲事故の原因となった家庭用品

(参考:家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告 令和元年)
  • 電池は、特にボタン電池・リチウムイオン電池の誤飲が増えています。
  • ビー玉、おはじき、プラスチックの袋なども誤飲の危険性が高いです。

下記のような点も注意しましょう。

注意点

□ 誤飲しやすいものが入っている棚は、開けられないようにストッパーをつける
□ ゴミ箱は手が届かないところに置くか、ロックがかかる蓋をつける
□ 液体類の蓋はしっかり閉め、手の届かないところに保管する
□ 踏み台になるものを置かない
□ カバンを開けてしまうこともあるので、危険なものを入れない
□ 電池を取り出せないよう、リモコンなどの電池カバーは固定する
□ 子どもの近くでたばこを吸わない、置かない(知人や親戚の集まりの場でも注意を)
□ おもちゃの対象年齢を守る。遊ぶ前後に、部品がなくなっていないか必ず確認する
□ 自動車内も誤飲が起こりやすいので、手の届くところに危険なものを置かない

誤飲しやすい食品

咀嚼(そしゃく)機能が未発達な乳幼児にとって、「よく噛むように教えれば大丈夫」という考えは危険です。

いろいろな食品を経験することも大切ですが、子どもの発達を無視した与え方は避けましょう。

特に注意したい食品

(参考:教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン 平成28年)

※丸いものは直径4.5cm以下、それ以外の場合は直径3.8cm以下の食品が危険とされています。ただ、1cm程度のものでも、奥歯で十分にすりつぶすことができない年齢では危険が大きいため、注意が必要です。

注意点

□ 食事の際は飲み込むまで目を離さない
□ 正しい姿勢で座らせる
□ 遊び食べや動き回って食べさせない
□ 急いで食べさせない
□ 水分は、口の中が空っぽになっていることを確認してから与える

救急車を呼ぶ? 病院受診のポイント

まだ言葉で伝えることができない乳幼児。また、誤飲してしまったらのどがつまって言葉が出ないことも…。

こんな症状が見られたら、誤飲を疑います。

誤飲時に見られる症状

  • 苦しそうな呼吸や咳き込み。吐こうとするような動作や声を出す(ヒューヒュー、ゼーゼー、ゲーゲー など)
  • 意識がない。反応が鈍い、もうろうとしている
  • 目を白黒させている
  • けいれんしている
  • 口から異臭がする。口がただれている
  • 嘔吐、血を吐いた
  • 腹痛、下痢

すぐに救急車を呼ぶべきか、病院を受診するか、判断の目安をご紹介します。

救急車を呼ぶ

  • 意識がない、けいれんしている
  • 揮発性のもの(石油、ガソリン、除光液)を飲んだ
  • 異物を吐かせようとしたが吐き出せず、呼吸困難を起こしている
  • ラップや風船などが詰まって取れない
  • 顔色が真っ青、唇が紫
  • 目を白黒させている。発語できない
  • 激しく吐く。血液を吐く
  • 口から異臭がする、口がただれているなどの中毒症状がある

⇒救急車が来るまではうつ伏せにする(吐き戻しがつまることを避けるため)

病院に連れて行く

  • 窒息をするほど苦しそうではないが、咳き込むなど状態がおかしい、ずっと吐き気をもよおしているときなど

⇒診療時間外でも至急、受診を

  • 飲み込んだものが心配ないもので、量も少ないとわかっている場合

⇒診療時間内に受診を

受診のポイント

まずは口を開けてチェックし、周囲になくなっているものがないかの確認を!

  • 誤飲したものと同じものがあれば持参する(液体などは容器や説明書も)
  • どのくらい飲んだのか、わかる範囲で伝える
  • アルコール類を飲んだ場合は低血糖や低体温になる場合があるので、体を温かくして受診する

吐かせる? 吐かせない? 誤飲したものによって変わる対応

ものによっては無理に吐かせると食道や気道を傷つけいたり、呼吸を止めてしまったりすることもあります。

何を誤飲したかによって、「様子を見る」「その場で吐かせる」「吐かせずそのまま病院へ」など、違った対応が必要です。

わからないときは、口の周囲についているもの、口の中のにおいなどから推測します。

ただし、血を吐いたとき、意識がないとき、けいれんしているとき、何を飲んだかわからない場合は無理に吐かせません。

医薬品など成分によって対応が不明のとき、対処法に迷うときは中毒110番に相談し、指示を受けましょう。

○公益財団法人 日本中毒情報センター 「中毒110番」
大阪:072-727-2499(365日24時間対応)
つくば:029-852-9999(365日9~21時対応)

たばこの誤飲時はこちら。

○公益財団法人 日本中毒情報センター「たばこ誤飲事故専用電話」
072-726-9922(365日24時間対応:自動音声応答による情報提供)

吐かせるもの

吐かせないもの

水や牛乳は、誤飲したものを吐きやすくしたり、のどや食道の粘膜や胃壁を保護したりするために飲ませます。
脂肪に溶けやすいものなどは、吸収を速める危険があるので、牛乳を飲ませてはいけません。何も飲ませてはいけない場合もあります。
処置する前に必ず確認しましょう。

誤飲したのが少量で、症状がなければ心配ないもの

  • 石けん
  • 化粧品
  • クレヨン
  • 水性絵の具
  • 芳香剤
  • 線香
  • マッチ
  • 鉛筆の芯、消しゴム
  • シリカゲル
  • シャボン玉液
  • 墨汁
  • ベビーオイル

※ベビーオイル以外は、水分をとらせてしばらく様子見を(ベビーオイルはしばらく飲ませない)。機嫌がよく、体調に変化がなければ大丈夫。腹痛・下痢があれば受診を。

応急手当~吐かせ方を押さえておこう~

先ほどの表で「吐かせる」に該当するもの、窒息の危険があるときは、ただちに吐き出させることが必要です。適切な手当を知っておくだけでも、いざという時の心がまえになるもの。

方法を覚えておきましょう。

口の中のものをかき出す

残留物がある場合は、横向きに寝かせて指でかき出します。余裕があれば、指にガーゼを巻きます。

※中に押し込まないように注意。
※口が開きにくいときは、人さし指と親指を上下の歯にあて押し開ける。

1歳未満の子に吐かせる場合

  • 大人の太ももの上に、頭を下向きにしてのせます。
  • 肩甲骨の間を平手で叩きます。喉の奥に指を入れ、舌を押し下げると吐かせやすいです。

2歳以上の子に吐かせる場合

  • 後ろから抱えます。
  • 片方のこぶしをみぞおちに当て、もう片方の手で包み、両手で上方向に圧迫して吐かせます。

※1歳未満の子には圧迫が強すぎて危険なので行いません。
※難しいときは、1歳未満の子と同じ方法を。

注意点

○吐かせる時にやってはいけないこと

  • 異物が口の中にあるときに大声をかけると、驚いて飲み込んでしまうことがあるので注意
  • 口の中を傷つけたり、かえって奥に押し込んでしまったりすることがあるので、無理に異物を取ろうとしない
  • 「魚の骨がのどにささったら、ご飯を丸のみさせる」とも言われていますが、骨が食道や胃の粘膜を傷つけてしまうこともあるので×
  • 口の中やのどを傷つけることもあるので、掃除機で吸い取るのは×

【まとめ:もしも事故が起こったら】

  • 何をどのくらい飲んだかを確認する
  • 口の中に残留物があれば取り除く
  • 窒息の危険があれば、ただちに吐き出させる
  • 呼吸困難など危険な場合はためらわず救急車を
  • 対応に迷ったら中毒110番などに問い合わせる

できるだけ落ち着いて、迅速な行動をとれるようにしておきましょう!

この記事の監修・執筆者

みやのこどもクリニック院長 宮野 孝一

みやのこどもクリニック院長。日本小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定専門医であり、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などの診療にも積極的に取り組む。

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