もうすぐ春休み。夏休みに比べ休暇期間は短いものの、春休み用の宿題がないという小学校も多く、毎日子どもに何をさせようか悩むご家庭も多いのではないでしょうか。
「親が何も言わなくても、自分から学習に取り組んでくれたら……」
「“学びたい”と思うきっかけを芽生えさせるためにできることはないかな……」
そんなふうに思ったことはありませんか?
今回は、元山口県立公立小学校教諭で「自主学習の仕掛け大全」の著者である福山憲市さんに、家庭内でも取り組める仕掛けを3案ご紹介いただきました。
自主学習を始める前に知っておきたい3つの原則①「全員の原則」
ひとえに“自主学習”といっても、何をどのように始めたらよいのでしょうか。福山先生によると、子どもに自主学習を促す仕掛けには、基盤となる3つの原則があるといいます。
一つは「全員の原則」。子どもたちは全員で取り込むことで、それぞれが出せる限りの力を自主学習に注ぐことができるようになります。自学心は、互いに切磋琢磨し一緒に探究し合える環境下で高まっていくといい、学校ならクラス全員で取り組むことに注力します。
家庭内で取り入れるためには、親やきょうだいも一緒にできるテーマを見つけてみるとよいでしょう。
例えば「家の中で直角三角形を3個見つけて!」という声かけをします。1人ではなく、一緒に探す人がいるだけで対話が生まれ、対話が生まれることでやる気が芽生えます。すると、子どもは「3個よりもっと見つけよう!」と思うようになるはずです。
その結果、出せる限りの力を出して課題に取り組むようになり最終的には学びに対して興味を持つきっかけにもつながるのです。
原則② 繰り返しが大切「リフレインの原則」
自主学習を仕掛けるときには、前述の「全員の原則」のほかに、似たケースの課題に繰り返し取り組ませることで“追求する楽しみ”を身につけさせていくという「リフレインの原則」も必要だといいます。
似たケースの課題に取り組むことで、子どもたちは徐々に追求のコツを掴みます。さらに、コツを掴むことで得る成功体験から、より深く追求してみたいという探究心が芽生えるそうなのです。
原則③ 自主学習の仕掛けに欠かせない「プラスワンの原則」
最後は、「プラスワンの原則」です。人とは異なるオンリーワンを常に目指すように心がけさせるというもの。親やきょうだいと一緒に課題に取り組む中で、ひと工夫させるよう仕掛けるのです。
例えば、先述の「直角三角形を3つ探す」という課題。回答の仕方を指示されていない子どもたちは、各々のアイデア・手法でその回答を提示してきます。
このときに、親が一人ひとりの回答の仕方をほめることが大切。工夫が見られなければ「○○したら分かりやすいかな」など、ヒントを出してあげるのもよいでしょう。
子どもはそれだけで「もっと工夫してみよう」という意欲が芽生え「やりなさい!」と言わなくても自主的に「もう少しプラスワンできることないかな?」と考えるようになるというものです。
自分らしさ、オリジナリティが認められることで自己肯定感が満たされ、知ること、学ぶことへの取り組みが“好き”になっていくことでしょう。
おうちでできる自学の仕掛け3選
では、ここからは先述の3つの原則を活かした自学を育てる仕掛けの中から、おうちでもできる取り組みを紹介していきます。
① 算数・漢字ドリルに楽しく取り組める仕掛け
福山先生が使用するドリルプリントには、算数ドリルであれば計算問題とともに未完成の絵といくつかの数字がかかれています。漢字ドリルの場合も同じで、漢字の問題とともに未完成の絵といくつかの漢字がかかれています。
そのいくつかの数字・漢字は、出題に対する解答として正しいものと、そうでないものが混在しています。正しい答えを出題順に線で結んでいくことで絵が完成するような仕掛けになっているのです。
ヒントという名の“答え”がすでにドリル内に存在しているため、子どもにとって“まったく見当がつかない状態”ではないことと、絵が完成するという楽しみが問題に取り組む意欲をかき立てるのでしょう。
さらに、問題をやり遂げることだけでなく“絵が完成する”という達成感や嫌々ながらの取り組みではないことが「もう1枚やりたい」という気持ちを生み出すのです。
② 子どもの本能⁉︎ 収集力を使って“探究心”を伸ばす仕掛け
どんぐり集めや石集め…子どもって、いろいろな物を集めることに一生懸命になったりしませんか? 実は、集めっぱなしにしないことや、集めるものを選ぶことで子どもの探究心を伸ばすことにつながる仕掛けがあります。
その例として、福山先生は次のものをあげています。
・バーコード
・スーパーのレシート
・新聞のおもしろ記事集め
・新聞などに掲載されている天気図
・切手
もちろん上記以外のものでも構いません。子どもが集めたものは、直接貼れるものは貼り、貼れないものは写真にしたり絵を描いたりして1冊のノートにまとめる作業を行います。これが自学ノートです。
“ノートを完成させたい”という気持ちも手伝い、多くの子どもたちはそこに記せる材料集めを始めます。それを繰り返すうちにワクワクした気持ちが増し、探究心が養われていくのです。
集めたものからわかることは何なのか、どんな見た目なのか、感触や匂いなどを記していったノートは、1P増すだけでも大きな達成感を得られます。「見て! 見て!」という子どもをしっかりほめ、親も興味を示すことで探究の芽は自然と伸びていくことでしょう。
③説明力、アイデア力を伸ばす仕掛け
語彙力の問題だけでなく、子どもの話はよく理解できないことがしばしばあります。ここでは、説明する力を伸ばしながらアイデア力もみがけるといううれしい仕掛けを紹介します。
福山先生は、オリジナルを考える=説明ができる土壌を耕すことになるといいます。この原理を使った取り組みとして「オリジナルTシャツのデザインを考える」という課題を行います。すると、子どもは「花が好きだから花の絵を描きました」など、まずその絵を描いた理由を説明します。
さらに深く聞いていくと、子どもは色や形を伝えるための形容詞を考え、コンセプトを伝えるために“説明する言葉”を意識するようになります。また、視点を変えて繰り返し絵を見るので観察力も身につくようになります。
今回は、家でもできる自学の芽を生む仕掛けを3つ紹介しました。「勉強しなさいと」声かけを続けるよりも、一番大切なことは、計画的に、継続的に自学につながる仕掛けをし続けることです。
子どもが学びたくなるような“自学のタネ”を探し、大人自身もその仕掛け作りを楽しむことで自然と子どもの自学の芽が育っていくでしょう。
この記事の監修・執筆者
1960年山口県下関市生まれ。広島大学卒業。元山口県教員。学び集団「ふくの会」「ミスを活かす子供たちを育てる研究会」主宰。「自主学習の仕掛け大全」のほか「自主学習システム&ノート作成法」(明治図書出版)など多数の著書がある。
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