お金がかかる、時間がないなどの理由や、SNSのほうが気軽に年明けのあいさつができるという気楽さもあり、年賀状離れが進んでいます。しかし、日本の年賀状にはほかの国とは異なる特徴があるそうです。和文化研究家の三浦康子さんに年賀状の起源や歴史を教えていただきました。
監修/三浦康子(和文化研究家) イラスト/わたなべふみ
年賀状はほかの国にもあるの?
旧暦の正月に向けて送る国が多い
中国や韓国などのアジア諸国でも年賀の挨拶状を出しますが、はがきよりもグリーティングカードのほうが人気だとか。また、春節という旧暦の正月に向けて送るのが一般的なので、日本のように新暦の正月に送るのはめずらしいです。欧米ではクリスマスカードに年明けを祝うことばを添えたりする文化があります。
年賀状のルーツを知ろう!
平安時代には書かれていた
古来、日本では、新しい年を迎えるにあたり、新春を寿(ことほ)ぎ、目上の人に年始の挨拶をする、いわゆる‟年始回り”の習慣がありました。
遠く離れて訪問できない場合は、書状を使いの者に届けさせたのが年賀状の起源と考えられ、公家社会において、平安時代ごろから行われるようになったようです。平安時代の書簡を集めた『雲州消息』(藤原明衡)に、年賀の書状が見られます。
江戸時代には庶民にも
やがて武家社会で年賀に参上するしきたりができると、飛脚の発達とともに年賀の書状がふえていきました。
江戸時代に商人の間でも年始回りをする習慣ができ、さらに江戸市中を配達する町飛脚などが現れると、武士階級だけでなく庶民も年賀の書状を送り合うようになりました。
寺子屋などで読み書きを習い、世界一といわれる識字率だったことから、手紙が身近になったのです。
はがきの手軽さが人気に
明治時代になり、郵便制度ができて郵便はがきが登場すると、年賀状の習慣が急速に広がっていきました。それまでの書状に比べ、賀詞だけでも成立するはがきの年賀状は大変手軽で、国民の間に定着していったのです。
年賀状があまりの人気で配達が遅れるようになったため、年末に集めて年始に配達する「年賀郵便特別取扱」が明治32年に開始され、昭和24年にお年玉付き郵便はがきも発行されて現在に至っています。
なぜ「あけましておめでとう」と言うの?
賀詞は無事に新年を迎えた喜びを分かち合う
なぜ年始に「あけましておめでとうございます」と挨拶をするのか考えたことはありますか?
古来、日本では、元旦に年神様という新年の神様がやってくると考えてきました。
年神様は五穀豊穣の神様であり、ご先祖様でもあると考えられており、各家庭にやってきて、新年の力を授けてくれるとされました。
人々にとって、無事に年を越し、年神様を迎えられることは大変おめでたいことです。この喜びを分かち合うための挨拶が「あけましておめでとうございます」なのです。
私たちはたくさんの人たちに支えられて生きています。できれば直接会って年始の挨拶をしたいけれど、なかなかそうもいきません。年賀状のやりとりをしながら交流を深めることはとても大事で、結んだ絆を強めることにもつながります。
今は電話やメールなどですぐにやりとりできますが、年賀状の作成には手間がかかり、相手に届くまでにも時間がかかります。だからこそ、受け取った相手の喜びはひとしおで、年賀状を何年も取ってっておく人も多いですね。
子どもにも年賀状作りの体験を
子どもの将来にも役立つ年賀状作り、今年はぜひ親子で楽しんでみませんか?
年賀状の書き方で押さえておくこと
お子さんといっしょに書くときのポイントです。
【表面の書き方】
◆住所や宛名、差出人の書き方のルールを確認しよう
・相手や自分の住む地域の郵便番号を確認する
・相手や自分の家の住所を確認する
・宛名の後に、「さま」「先生」などをつける
差出人部の書き方も教えましょう。子どもには、自分の家の住所を覚えてもらうチャンスです。
【裏面の書き方】
年賀状は、賀詞・本文・日付で構成します。それぞれのポイントを押さえましょう。
◆賀詞を使い分けよう
・「あけましておめでとうございます」はどんな相手にも使える
・「寿」などの1文字や「迎春」などの2文字の賀詞は友だちに使う
・「謹賀新年」などの4文字の賀詞は先生のような目上の人に使う(どんな相手にも使える)
◆本文に何をどう書くかを決めよう
何をどう書きたいか、下記をヒントにいっしょに考えましょう。
・感謝(昨年はたいへんお世話になりました)
・新年のお付き合いを願う文章(今年もよろしくお願いします)
・報告(出来事やがんばりたいことなど)
・相手への思いやり(健康を祈ったり、再会を楽しみにしたりしていることなど)
◆年号や日付を忘れずに
・西暦(2024年)か年号(令和6年)のどちらかを入れる
・「1月1日」と「元旦」をいっしょに使わない
◆年賀状らしい絵などをそえよう
干支とは何かを教え、干支を絵や文字に活かしましょう。
自分で描いたり、シールを貼ったり、スタンプを押したりと自由に表現を。時間がないご家庭は、印刷したものでもOK。絵柄は子どもと選んでみてはいかがでしょう。
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年賀状は、子どもが手紙文化にふれる貴重なチャンス。
ポストに投函するときのドキドキ感やもらったときのワクワク感を、経験させてあげたいですね。
この記事の監修・執筆者
古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとる。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、監修書『季節を愉しむ366日』(朝日新聞出版)ほか多数。
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