9月の絵本棚第2回は「お月さま」がテーマ。今年の十五夜は9月29日。すてきな夜空を眺めたあとに、こんな絵本を楽しんでみてはいかがでしょうか。セレクトは、絵本専門士で絵本セラピスト®の鳥山由紀先生です。
9月第2回
お月さまがテーマの絵本
◆2~3歳児向け! 『みんなおやすみ』
絵/かきもとこうぞう 文/はせがわさとみ 990円(税込) Gakken
【あらすじ】
暗くなった夜空の上からお月さまが地上を見下ろしています。「みんなにおやすみをいいにいこう」と、どうぶつえんのみんな、ばすさん、おみせやさん、こうえんのみんな、むしさんたち、ぼうやも眠っているかを見回って、みんなにおやすみを言っていきます。「またあした たくさん あそぼうね おやすみなさい」
【オススメポイント】
夜の絵本で暗めの色合いですが、淡い紫の空がとてもきれいです。澄んだ空気の中に光る星がキラキラと瞬いて見えます。私は虫たちのページで、蛾が月あかりに照らされて金色に輝く姿を見て、お月さまがやさしい光で包み込んでくれているように感じました。
ぐーすうぐーすう、ぐうぐうぐう、すうすうすう、といった静かな中に聞こえる寝息の音も楽しいです。
それぞれのページに登場する動物たちに、ページをめくりながらいっしょに「おやすみ」を言って、最後はぼうやのところへ。絵本の中のぼうやの部屋の電気を消したところで、「みんな おやすみ」と、自分たちの部屋の電気を消せば、スーッと気持ちよく眠りにつけそうです。寝る前の絵本にぴったりです。
気持ちよさげに眠る動物や虫たちですが、たまに寝ていない子もいるので、寝ていない子探しをしながら読み進めてみるのもいかがでしょう。
◆3~4歳向け! 『14ひきのおつきみ』
作/いわむらかずお 1,430円(税込) 童心社
【あらすじ】
滑車を使って、はしごを上って。大きな木の上では、木の枝を切り、ひもで結んで、作っているのはお月見台。今夜は満月。14匹のねずみの家族です。日が沈む前から家族みんなで準備をして、おつきさんがのぼるのを待ちます。おつきさんがのぼると、まずはおつきさんに感謝して、お団子を食べておつきさんの光の下でおはなしを楽しみます。
【オススメポイント】
日が沈む前から家族総出でお月見の準備をします。秋の始まりを感じさせる木々、月見台を作っているきょうだいたちが夕焼けのピンクに染まる姿、家族みんなが大きな大きなおつきさんにシルエットで浮かび上がる様子、どのページも詳細に美しく描かれています。もうすぐ、まだかな、とみんなでおつきさんの登場を待っている中、山の後ろに登場したおつきさんが見えたときの喜びは、月見台の上のねずみたちの様子からひしひしと伝わってきます。あらためて、おつきさんてなんて美しいんだろう、と感じます。「やさしいひかりをありがとう」と自然と感謝のことばが出てきそうです。
今度の満月の夜には、ねずみたちのようにお月見だんごを用意して、おつきさんを眺めましょうか。
カバーと本体の表紙・裏表紙が微妙に違うところも注目です。カバーをはずして横において、本文を読みながら、これはだれかな、にっくんいた!などと、答え合わせをしながら読んでいくのも楽しいですよ。
◆4~5歳向け! 『お月さんのシャーベット』
作/ペク・ヒナ 訳/長谷川義史 1,540円(税込) ブロンズ新社
【あらすじ】
暑い暑い夜。「ぽたぽたぽた」何の音かと思ったら、「お月さん、とけてはるがな」
しっかりもののおばあちゃん、おおきなたらいにお月さんのしずくを受けて、シャーベットの型に流して冷凍庫に入れました。
その夜、みんなが電気を使いすぎて停電になってしまいますが、お月さんのシャーベットのおかげで、エアコンも扇風機もない夜を涼しく快適に過ごすことができました。
【オススメポイント】
お月さんのしずくで作ったシャーベットのおかげで、エアコンが使えない夜もみんなは快適に過ごせたようですね。おばあちゃんの機転に感謝です。
今夜は月夜かな、もしや溶けて落ちてこないかな、と空を見上げたくなります。
切り絵とミニチュアの立体の手法が巧みに使われて、その不思議な世界観に、自分自身が本の中に入り込んでしまうようです。絵本を読み終えると、心なしか体感温度が下がっているように思えるのは気のせいでしょうか。
最後はお月さんも、家をなくしたお月さんのうさぎさんも、もとに戻ることができたようでひと安心。でも暑さだけはもとに戻らないのでシャーベット効果が続くといいなぁ。お月さんのシャーベット、いったいどんな味がするんでしょうか。どんな味だろう、とみんなの考えた味を比べてみるのも楽しいかも!
◆大人向け 『きょうはそらにまるいつき』
作・絵/荒井良二 1,540円(税込) 偕成社
【あらすじ】
公園のベビーカーの中から赤ちゃんが、月を見ています。バレエの練習帰りの女の子が、熊が帰り道に、買い物帰りの男の子が、みんなが空を見ています。人間も動物も見上げると「きょうはそらにまるいつき」。誰の上にも同じように「ごほうびのようなおつきさま」が輝いています。
【オススメポイント】
どこにいようと、誰の上にも、満月の夜には、同じように満月が見られます。繰り返し語られる「きょうはそらにまるいつき」がリズミカルでありながら、静かにやさしく語りかけてくれるようです。遠く離れたところにいても、同じようにまるいおつきさまを眺めている、そしてその大きな大きな満月は「ごほうびのよう」。静かに空を見上げると、何かいいことがありそうですよ。
夜の絵本なのに、ピンクや黄色、赤、緑、と鮮やかな色に元気をもらえそうです。
さあ、「きょうはそらにまるいつき」、大人も子どもも動物も、ほんの一瞬空を見上げてみませんか。
1日の終わりにこの絵本を開けば、明日がなんだか楽しみに、待ち遠しい気になり、心穏やかに眠りにつけそうです。
次回の「こそだてまっぷの絵本棚」は10月。「スポーツの秋」をテーマにした絵本を紹介します。お楽しみに!
この記事の監修・執筆者
(プロフィール)
絵本専門士4期生。絵本セラピスト協会認定絵本セラピスト®。大人・子どもを問わずお気に入りの一冊を見つけてもらえることを思い、絵本に関する講演や執筆、絵本講座の開催、読み聞かせなどを行う。また、箏奏者との絵本の読み聞かせユニット「ことえほん」での公演活動、大学での認定絵本士養成講座講師も務める。
(ブログ)
https://ameblo.jp/ehonrahen/
(ことえほんfacebook)
https://www.facebook.com/kotokotoehon/
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