親子スキンシップでストレスに強くなる! ~ストレスとの上手な向き合い方~

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スキンシップは、ストレスに強くなる“愛情ホルモン”を作る働きがあるといいます。
それは、スキンシップをした側も、された側も、幸せになれる魔法の愛情表現です。
今回は、スキンシップの効果をもっとも高める大切なポイントも紹介しています。
ぜひ、今日から意識してスキンシップを始めてみませんか?

お話/臨床発達心理士 山口創

目次

ストレスがすべて“いけないものではない”

「いいストレス」と「悪いストレス」を見極めて

まず、大前提のお話ですが、ストレスって難しいもので、すべてが絶対にいけないもの、というわけではないのです。つまり、親が子どものことをどこまでも守ってあげて、いつでもストレスフリーにしてあげなくちゃ!ということではありません。

実は、ストレスには子どもの成長にとって必要な「いいストレス」と、心身に悪影響を与える「悪いストレス」があるからです。

●親のもとを離れて外の世界に冒険に出かけること
●チャレンジしてみたけど失敗してしまうこと
●悪いことをしてしまって叱られること
●友だちとけんかすること

これらも言ってみれば「ストレスがかかった状態」ですが、子どもにとっては必要な経験です。それを制限してしまっては、子どもの成長を妨げてしまいかねません。ですから、まずは必要なストレス、必要な刺激かどうかをしっかりと見極めて、子どもにさまざまな経験をさせてあげたいですね。

「悪いストレス」がもたらす影響

問題なのは、ストレスの影響を大きく受け続け、心や体に悪影響が出てしまうこと。個人差は大きくありますが、たとえば、「睡眠」に表れる場合があります。

ストレスを受けると「セロトニン」というハッピーホルモンがへることによって、「メラトニン」という睡眠を促すホルモンが作られなくなってしまうことから、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くて何度も目が覚めたり、朝に起きられなくなったり、といった問題として表れることがよくあります。

そのほかにも、以下のような例が見られる場合もあるでしょう。
●やる気が出ない
●笑顔が出ない
●食欲がなくなる、または、食欲が出すぎる
●下痢、便秘
●おねしょ
●爪かみなどの依存行動
●姿勢が悪くなる

ストレスから守ってくれるのが“愛情ホルモン”

スキンシップは“愛情ホルモン”を作る!

あたたかいスキンシップをすると、脳内で「オキシトシン」というホルモン物質が分泌されます。実は、この「オキシトシン」が“愛情ホルモン”と呼ばれるもので、ストレスホルモンを出にくくする働きを持っているのです。

たとえるならば、副作用のない精神安定剤のようなもので、心が安らぎ、幸福感や愛情も深まり、人との絆も強める物質なのです。

つまり、普段からスキンシップを多くしていれば、愛情ホルモンに満たされ、ストレスホルモンがへっていきますから、ストレスに強くなっていくことが期待されると言えますね。

親子でストレス耐性度をチェック!

では、現在の“愛情ホルモン”の状態はどうなっているでしょうか?
オキシトシンが少ない状態であれば、ストレスの影響を受けやすくなっているかもしれません。夫婦で、親子で、いっしょにチェックしてみましょう!

ママパパでセルフチェックしてみましょう

□ 人にはよく触れるほうだ
□ 夫、妻とのスキンシップは多いほうだ
□ 子どもをよくだっこやおんぶしたり、手をつないだりしている
□ 子どもが寝るときは添い寝をしている
□ 子どもにキスや頬ずりをよくする
□ 気心の知れた仲間で集まるのが好き
□ 初対面の人と仲良くなりやすく、信頼しやすい
□ 困っている人を見ると放っておけない
□ 親友と呼べる友だちがいる
□ あまりストレスがたまらない

『幸せになる脳はだっこで育つ』(廣済堂出版)引用

ママパパが、お子さんのチェックをしてあげましょう

□ よく笑う
□ よく寝る
□ よく食べる
□ 朝から元気がある
□ 普段、情緒が落ち着いている
□ スキンシップが好き
□ くすぐられたとき、よく笑う
□ たいてい友だちと仲良く遊べる
□ 泣いたとき、ママパパに近寄ってくる
□ 泣いても、すぐに泣き止む

当てはまった項目はいくつでしたか? 

  • 9個以上……オキシトシンが非常に多い状態です。
  • 7個〜8個…オキシトシンが平均的です。
  • 5個〜6個…オキシトシンがやや少ない状態です。
  • 4個以下……オキシトシンが少ない状態です。

親子スキンシップで大切な3つのステップ

やみくもに触れれば、愛情ホルモンが作られるというわけではありません。「愛情を伝える」というのが一番の目的。それがもっとも伝わる方法は、

  1. しっかりと目を見る(視覚)
  2. やさしい声をかける(聴覚)
  3. やさしく触れる(触覚)

この3つのステップを意識するだけ。
なぜなら、「視覚」「聴覚」「触覚」で得た情報はすべて、脳内の「視床」というところで統合されて、愛情ホルモンを分泌していくから。3つを同時に刺激すれば、子どもの年齢に関係なく、短時間のスキンシップでも十分に愛情を伝えることができるというわけです。

就学前は特に、まだまだ親に甘えたい時期。だっこしたり、手を握ってあげたり、といったスキンシップは、折に触れてしてあげましょう。

年齢が上がってきたら

年齢が上がってくると、べたべたと触られるのを嫌がる子もふえてきます。そんなときは、コミュニケーションの際に、ピンポイントでスキンシップをしてみましょう。

たとえば、
●寝るとき、学校に行くときにぎゅっとハグする
●がんばったねと肩をポンとたたく
●えらいねと頭や頬をなでる
●家に帰ってきたらよく話を聞いてあげる

といった具合です。最後の項目は、直接肌の触れ合いはしていませんが、話をよく聞いてあげることも、実はスキンシップをしたときと同じように“愛情ホルモン”が分泌されることが証明されています。

園や学校に行くことは、子どもにとっては大冒険。さまざまな不安や挑戦を経験してきますから、家に帰ってくるというのは、やっとホッとできるという場面です。そこで、触れてあげたり、目を合わせて話を聞いてあげたりすることで子どもはさらに安心し、ストレスが解消されていくのです。

夫婦のスキンシップもとても大切

スキンシップは、自然に触れられるのが大事ですが、夫婦どうしであまり触れておらず、子どもにだけ触れようとすると、親自身が緊張して力が入ってしまい、やさしいスキンシップができなくなってしまいます。普段から、夫婦でスキンシップが自然にできていれば、子どもにも自然にすることができるでしょう。

また、山口先生の研究から、「スキンシップが多い夫婦ほど、子どもとの触れ合いも多い」というデータがあるそうです。

夫婦のスキンシップが増えると、夫婦の愛情ホルモンが増え、夫婦関係がよくなります。夫婦仲がよくなると、親子関係も円満になり、子どもともたくさんスキンシップをしたくなる効果が見られたのです。

なかなか子育てに参加してくれないパパでも、まずは夫婦間のスキンシップで愛情ホルモンの分泌が促されれば、自然と子どもとの触れ合いが増える可能性が大きいといえるでしょう。

愛情ホルモンは、子どもの将来にもよい影響を与える

愛情ホルモンを分泌する脳内のシステムや、神経の配列が変わってくるのは、子どもが小さい頃。その時期にたくさんスキンシップをすることで、愛情ホルモンを作りやすい脳にしてあげることは、将来の子どもにとってもとてもよい影響があるといえます。

たとえば、
●人への共感性が高まる
●人の感情に敏感になる
●社交的になる
●人を信頼しやすくなる
●誰とでも仲よくなりやすい
●攻撃性が抑えられて穏やかな性格になる

といった効果があるということが、最近の研究でわかってきています。特に、第二次性徴で性ホルモンが盛んになる思春期くらいから大きく変化が見られるといわれています。ですから、積極的にスキンシップをすることは、子どもの将来にとっても、とてもよいことといえますね。

山口先生からのメッセージ

お子さんがちいさいうちは、当然、自分でストレスに対処できませんから、親がいっしょに対処してあげることが大切です。そういったときこそ、スキンシップをしたり、よく話をきいてあげたりして、ストレスを取り除いてあげてください。

子どもはストレスを抱えていると、自分からスキンシップを求めてきたり、逆に今まで好きだったスキンシップを嫌がることもあります。そういったサインを見逃さず、しっかりとお子さんを受けとめて、気持ちを吐き出させてあげましょう。成長していくにつれて、だんだんと一人でストレスと向き合えるようになっていくはずです。

スキンシップは生後一年以内が鍵だと言いますが、何歳からでも、大人になってからでも効果はあります。ぜひ、今からでも始めてみてくださいね。

この記事の監修・執筆者

臨床発達心理士 山口 創

臨床発達心理士。桜美林大学リベラルアーツ学群教授。親子や夫婦、恋人同士のスキンシップについての研究を行う。著書に、『幸せになる脳はだっこで育つ。』(廣済堂出版)、『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)などがある。

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