勉強ができるのも大切ですが、それよりも「人の痛みに寄り添ってあげられるやさしい子」「思いやり深く行動できる子」に育ってほしいと願う保護者も多いことでしょう。子どものそんな気持ちはどうしたら育てられるでしょうか?
この記事では、子どもの共感力を育てる方法についてお伝えします。
文/マムズラボ
共感力とは
まずは、共感力とはどういうものなのかを解説していきます。
共感力=思いやり
共感力とは、自分以外の人の感情や立場に寄り添い、それを理解しようとする心の動きのことです。共感力のある子どもは単なる同情ではなく、相手の状況や感情を自らのものとして感じ取って、思いやりのある行動をとれます。
たとえば、ほかの子が砂場で作ったお城が壊れてしまって悲しそうなとき、いっしょに城を作り直す提案をする、一人でポツンと寂しそうな子がいたら遊びに誘うなどが挙げられます。
得意な子と苦手な子がいる
共感力には個人差があります。たとえば、ほかの子が泣いていることに気づいたとき、すぐに駆け寄ってなぐさめようと声をかける子、気づいてもとくに何もしない子がいるように、周りが働きかけなくても自然に共感力を発揮するのが得意な子もいれば、そうでない子もいます。
どちらがより優れているということではなく、自然とできてしまうかそうでないか、だけの違いです。今は得意でなくても、これから伸ばしていけばよいのです。
共感力はあとから伸ばせるもの
共感力は、人との関わりを通してあとから伸ばしていけるものです。家族や友だちなどと遊んだり、ケンカをしたりなど、さまざまな関わりを経験していくうちにほかの人の気持ちを理解し、思いやりのある行動がとれるようになるのです。
とくに、4歳から6歳ごろが共感力を伸ばす絶好のチャンスです。このころになると、自我が発達して自分と他人の区別がはっきりしてくるため、他人の立場を想像することが自然とふえていきます。
また、ことばを使って複雑な感情を表現できるようになり、友だちとの関わりもいっそう深まってきます。グループ遊びの中で、「みんなで楽しい」という共有の喜びを感じたり、友だちが泣いているのを見て「どうしたの?」と心配して問いかけたりなど、「共感」を少しずつ体感して学んでいくのです。
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子どもの共感力を高めるメリットとは
共感力が高いと、友だちにやさしくし過ぎて本人は損をしてしまうのでは? と心配してしまう保護者もいるかもしれません。しかし、共感力が高いことにはさまざまなメリットがあります。
円滑な人間関係を築ける
共感力が高い子は、相手の立場や感情を理解して、思いやりのある行動が自然ととれるようになります。そのため、関わる人との関係性がより良好になりやすいです。
子ども時代の友だちや先生との関係はもちろん、大人になってからも同僚や上司、取引先などとよい関係でいることは、大きなメリットとなります。
自己肯定感が高まる
共感力が高い子は、周囲の人の感情だけでなく自分の感情も理解し、その感情を否定せずに受け入れられるようになります。
自分は自分でいいのだ、という自己肯定感が高くなり、人生の幸福度がアップするでしょう。
子どもの共感力を育てるポイント
共感力は、日々の会話や接し方で伸ばしていけます。ここでは、共感力を伸ばすために、保護者はどんな風に子どもに接したらよいのかをお伝えします。
保護者が子どもの気持ちに共感する
自分が相手に共感してもらえたという体験が共感力を育てます。子どもが落ち込んでいるとき、あるいは喜んでいるときなど、子どもの気持ちを受け止め、共感していることをことばや態度で示しましょう。
常に子どもの気持ちに合わせる必要はありませんが、気持ちを気にかけているという態度で接することは、愛情を伝える上でも大切です。
ごっこ遊びで想像力を伸ばす
共感力を育てるのにぴったりなのが、自分以外の何かになりきる「ごっこ遊び」です。ただ単に楽しいだけでなく、自分とは違う立場を想像し、その役割を演じて疑似体験することで、自然に共感の練習をしているのです。
先生や保護者など身近な人物になりきっているときはもちろん、テレビの人気キャラクターや動物ごっこで遊ぶとき、また「電車」「自動車」など無生物になりきっているときも、「自分とは違う視点でものを見る」という練習になっています。
ぜひ、たくさん「ごっこ遊び」をさせてあげてください。
気持ちを言語化する練習をする
気持ちを言語化する練習も共感力を育てるのに役立ちます。自分の心の中にあるさまざまな感情に、「悲しい」「うれしい」「怒っている」などのことばで名前をつけることで、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちとの共通点を理解できたりするようになります。
保護者は、「悲しかったんだね」「悔しいね」「うれしいね」など、子どもの感情に合わせた声かけをすることで、「この感情にはこういう名前がついているんだ」と子どもは学べるようになっていくのです。
ネガティブな感情を否定しない
子どもも「怒り」「不安」「悲しみ」などのネガティブな感情を抱くことがあります。ネガティブな感情を抱くのは悪いことではありませんが、保護者はときどき「恐くないよ」「怒るのはいけないよ」など、子どものネガティブな感情を否定してしまうことはないでしょうか。
ネガティブな感情を否定されると、子どもは「素直な感情を表現するのはよくないこと」と思い、その感情を感じないように抑え込んでしまう恐れがあります。感情をなかったことにしてしまうので、感情を理解することもできません。
保護者が子どものネガティブな感情を否定せずに受け止め、「恐いね」「腹が立つよね」「悲しいよね」などの共感的なことばをかけるように心がけましょう。
共感を押しつけない
共感力のある子になってほしいからといって「共感しなさい」と押しつけるのは逆効果です。
たとえば、友だちが落ち込んでいるときに「悲しんでいるからなぐさめなさい」と保護者が指示すれば、子どもは友だちをなぐさめられるかもしれません。しかし、これではただ指示に従っているだけで、友だちがなぜ悲しんでいるのか、どうすれば気持ちが楽になるのかを考え、共感しているわけではありません。
「かわいそうだね、なぐさめてあげよう」などと気持ちを押しつけるのではなく、「どうして泣いているんだろうね?」など、子どもが自分の頭で相手の気持ちを考えるように促す声かけをしていきましょう。
共感力は、共感して育てる
精神的に豊かな人生を送るために欠かせない共感力は、周囲との関わりなしには育ちません。周りの人に「共感してもらうこと」を通じて育まれます。
共感力を育てるために、何よりも大切なのは、保護者などのごく身近にいる大人が子どもに対して共感を示すことです。誰かが困っているとき、寂しそうなときに寄り添ってあげられる子になるとよいですね。
この記事の監修・執筆者
作家/子どもへの言葉かけ、「子育てNGワード」の専門家。「言葉」を扱うコピーライター経験から、子育て中の子どもへの言葉かけに関心を持つ。
三人の娘の子育ての実感(成功も失敗も)を活かした書籍を執筆している。
『お母さん、ガミガミ言わないで!子どもが勉強のやる気をなくす言葉66』
『決定版 ママ、言わないで!子どもが自信を失う言葉66』
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