農林水産省は令和5年、子どもの頃からお茶に親しむ習慣を育むため、学校教育の場でのお茶を活用した食育“茶育”を推進するプロジェクトをスタートしました。
日本茶インストラクターとして、小学校で緑茶のいれ方や健康についての出前授業を行っている森野恵子先生に、子どもにすすめたい緑茶の飲み方や健康効果について伺いました。
緑茶を飲むメリットは?
子どもにうれしい緑茶の健康効果
さっぱりしていておいしい、健康に良い、リラックスできるなど、緑茶には良いイメージがたくさんありますね。緑茶に代表的な成分はカテキン、テアニン、カフェインの3つです。「カテキン」は緑茶の渋味になる成分で、抗菌作用があり、病気の予防に役立ちます。インフルエンザウイルスの体内での増殖を妨ぐ抗ウイルス作用や、虫歯や口臭を予防する作用があります。また、「テアニン」は緑茶のうま味や甘味になる成分で、リラックス効果やストレス軽減効果があります。そして「カフェイン」は緑茶の苦味になる成分で、眠気を覚ましたり、集中力を高めたりする効果があります。
また、緑茶には子どもの成長に役立ち、免疫力が上がるとされるビタミンCも多く含まれています。ビタミンCは熱に弱い性質がありますが、カテキンにビタミンCを守るはたらきがあるため、緑茶はビタミンCも効率的にとることが期待できます。
[子どもに役立つ緑茶の成分]
カテキン…インフルエンザウイルスの体内での増殖を妨ぐ抗ウイルス作用や、虫歯や口臭を予防する作用
テアニン…リラックス効果やストレス軽減効果
カフェイン…眠気を覚ましたり、集中力を高めたりする効果
湯の温度で効果が変わる?
いれるときのお湯の温度で、溶け出す緑茶の成分が変わります。風邪などを予防して、集中力を高めたいときには、カテキンとカフェインが出やすくなる80℃以上のお湯で緑茶をいれましょう。毎朝の習慣にすると、午前中に集中力が高まりおすすめです。そして、イライラしたときやストレスを感じたときには、テアニンが出やすくなる60〜70℃のお湯で緑茶をいれましょう。緑茶のうま味や甘味が楽しめます。また、香ばしい香りがよりリラックス効果を高めるほうじ茶もおすすめです。ほうじ茶はカフェインが少ないので、夜に飲んでもよいでしょう。そして寝る前には、含まれるカフェインが少なく、虫歯を防ぐ効果が期待できるフッ素が多い番茶(成長した茶葉や茎でつくる緑茶)を、80℃以上のお湯でいれてみてください。
緑茶をおいしくいれよう!
急須でおいしくいれるコツ
小学校の出前授業では、急須で緑茶をおいしくいれるポイントを紹介しています。ポイントは、葉の量、湯の量、湯の温度、浸出時間の4つです。慣れると自分の好みに温度や味を調整できるようになります。入れる湯の温度の違いで緑茶の味が変わることに、驚く小学生も多いです。ぜひ家庭でも、急須でいれる緑茶を楽しんでみてくださいね。
[急須での緑茶のいれ方]
①急須に茶葉を入れます。茶葉の量は1人分で3g、ティースプーン1杯分です。
②沸かした湯を、まず湯呑みに入れ、次に湯呑みから急須に入れます。こうすることで、1煎目(1回目にお茶をいれること)にちょうどよいお湯の量が急須に入ります。また、一度湯呑みにお湯を入れると、湯の温度が約10度下がります。さらに急須に入れることで約10度下がるので、約80度のお湯で緑茶が入れられます。湯の温度をもっと下げたい場合は、湯冷ましなどを介することで調整します。
③急須に湯を入れたら、そのまま1分間浸出します。
④湯呑みに緑茶を、最後の1滴まで注ぎます。
⑤急須のふたをずらして急須の中の温度を下げておくと、2煎目(2回目にお茶をいれること)もおいしくいれられます。
夏にぴったりな水出し緑茶
暑い時期には水出し緑茶もおすすめです。ボトルやピッチャーなどに、10gの茶葉を入れて、1Lの水をゆっくりと注ぎます。ふたをして、冷蔵庫で4〜6時間ほど置けばできあがりです。水出し緑茶には、お湯でいれるよりも、テアニンやビタミンCが多く含まれるので、リラックス効果や疲労回復効果が高まります。免疫力を高めるカテキン効果もあるので、暑さに疲れたお子さんの水分補給にぴったりです。軟水を使うと、よりうま味がでて、まろやかな味わいの緑茶ができます。
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緑茶についてもっと知りたい!
ツバキ科の植物「チャノキ」の葉からつくるお茶
お茶はツバキ科の植物チャノキの葉を摘み取ってつくります。日本でよく飲まれている緑茶、中国で昔から伝わるウーロン茶、イギリスの代表的な飲み物である紅茶は、同じチャノキの葉からつくります。日本でチャノキは広範囲で栽培されていて、鹿児島県や静岡県、三重県が主な産地です。チャノキの葉はもともと鮮やかな緑色で、摘み取ると成分が変わり、赤みを帯びていきます。このことを葉の発酵と言いますが、この変化は葉に含まれる酵素によるもので、微生物のはたらきで食材に変化が生じる一般的な発酵とは異なります。しかし、古くからの慣習として葉の発酵と呼ばれています。
チャノキの葉を摘み取ってすぐに熱を加え、発酵させずに乾燥させてつくるのが「緑茶」で、鮮やかな緑色をしています。葉を途中まで発酵させてつくるのが「ウーロン茶」です。「紅茶」は完全に葉を発酵させてつくります。3つのお茶を並べてみると、葉の発酵のちがいで、色や香り、味わいに変化が出ることがよくわかりますね。
日本では緑茶が代表的
日本で代表的なお茶といえば緑茶ですが、緑茶にもさまざまな種類があります。緑茶の中でもよく飲まれているのが「煎茶(せんちゃ)」です。摘み取ったチャノキの葉を蒸して、もんで乾燥させてつくります。もむとは、蒸した葉をねじるようにもみこむことで、しっかりと乾燥させるために行います。煎茶を火にかけて香ばしくしたのが「ほうじ茶」です。そして、摘み取る20日ほど前から、日光を当てないように遮って育てたチャノキの葉でつくるのが「玉露」という高級茶で、うま味が強く、香りがよいのが特徴です。「番茶」は成長して固くなった葉や茎をつかってつくります。お湯に溶かして飲む「抹茶」は、蒸してからもまずに乾燥させたチャノキの葉を、臼などで粉にしたものです。
また、チャノキの葉を使わないものでも◯◯茶と呼ばれる飲み物があり、これを茶外茶と言います。大麦でつくる麦茶やミントの葉でいれるミントティー、ソバの実を使うそば茶、昆布を粉末にして溶く昆布茶など、さまざまな茶外茶があります。
今回は、子どもの健康に役立つ緑茶の効果やおいしいいれ方について紹介しました。小学校の出前授業でお話している豆知識もお伝えしたので、子どもがお茶に興味を持ったら、ぜひ家庭の話題にしてみてくださいね。
この記事の監修・執筆者
「健康」をテーマに、料理とテーブルコーディネートの教室を行う。企業主催の親子クッキングや、住宅展示でのテーブルコーディネート、セミナー講師、TV番組の撮影、飲食店やホテルでのフードコーディネート、メニュープランニング、雑誌・広告での撮影(料理作成・フードスタイリング)、盛りつけ指導など”食”に関わるものをさまざまな角度からコーディネート。
2004年からは、暮らしを楽しみながら食育を推進する団体「食育暮楽部(くらぶ)」を設立し、地域でできる食育に取り組み中。
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